33 / 119
4
しおりを挟む
「っ」
目が合うや否や、案の定私に何か言おうとおっさんの口が動いたのと同時に、もう私は目を反らして思い切り早歩きで通り過ぎた。
ヤバい!
ヤバい!ヤバい!ヤバい!
早く行かなきゃ!
絶対に声をかけられるー!!
顔を伏せながら私は、全速力で早歩きを…ううん、もう駆け出していた。
早く家に帰ってしまおう。
帰ってしまえば…
や、待てよ?
それで私の家まで後をつけられたら、家がバレちゃうじゃん!
わわわっ
どうしよう!
だけど足を止めるわけにもいかない私は、そのまま顔を伏せてまっすぐに突き進んだ。
とにかく、今は早くこの場を離れなきゃ───っ
「ぅわっと!」
「ひゃあっ!」
暗い夜道を顔を伏せながら駆けっている私は当然前なんか見てもなく。
そんな不注意から、私はドンっと思い切り誰かとぶつかってしまった。
「す すみませんっ
よく見てなくって…っ」
結構な勢いだったけど突き飛ばしてしまったわけではなく、どちらかと言うと相手の懐に私が飛び込んでしまった感じだった。
がっしりした体型だったから女の人ではないな。
私はすぐに懐から離れて、相手の顔を見上げながら謝った。
「いえ、僕は大丈夫ですが………あれ?」
「すみませんでした、ホントに………あっ」
一歩ほど距離を空け、お互いの顔を見合わせた時、それが知らない相手同士ではない事に気が付いた。
「あの、おかず屋さんの…」
「お客さま!?」
相手の男性が私の顔を知ってる通り、ぶつかったその人はうちの“デリカ popo”の常連さんだったのだ。
毎晩残業上がりで「ここで惣菜選んでる時がホッとする」って言ってくれた人なんだけど、最近はずっと顔を見せなかったなぁ。
うちの惣菜に飽きて他の店に行ってるんじゃないかとか、過労死したんじゃないかとか。
ついさっき厨房で噂したかと思ったら、まさかこんな所で会えちゃうなんてね。
て言うか、ちゃんと普通に生きてますよ、小山さん!!
勝手にお客さんを殺さないで下さーいっ
「今仕事の帰り?
いつも遅くまで頑張るね」
そう言うお客さんもスーツ姿に、仕事カバンを持っている。
1日仕事で疲れているだろう、スーツだけじゃない、顔だってくたびれているようだ。
「あ、いえっ
でもお客さまも、今お帰りってとこですかね」
「あぁ。
ちょっと前からプロジェクトに参加してて、帰りがまた遅くなってるんだよ。
もうお腹と背中が、くっつきそうだ」
あぁ、なるほど。
今が仕事の帰りなら、もう既に閉店しちゃってるうちの店では買い物なんてできないわけだ。
予想が外れたね、小山さん。
「だけど、じゃあ今から晩ご飯ですか?
うちのお店は9時で閉まっちゃうから、どこかコンビニに行かれるとか?」
「いやいや。
それなら、最近は子どもに買いに行ってもらってるので、今夜もそちらのおかずを戴きますよ」
「…あぁ、そうなんですか!
それは何よりですね」
子ども!?
このお客さん、子どもがいるんだ!!
目が合うや否や、案の定私に何か言おうとおっさんの口が動いたのと同時に、もう私は目を反らして思い切り早歩きで通り過ぎた。
ヤバい!
ヤバい!ヤバい!ヤバい!
早く行かなきゃ!
絶対に声をかけられるー!!
顔を伏せながら私は、全速力で早歩きを…ううん、もう駆け出していた。
早く家に帰ってしまおう。
帰ってしまえば…
や、待てよ?
それで私の家まで後をつけられたら、家がバレちゃうじゃん!
わわわっ
どうしよう!
だけど足を止めるわけにもいかない私は、そのまま顔を伏せてまっすぐに突き進んだ。
とにかく、今は早くこの場を離れなきゃ───っ
「ぅわっと!」
「ひゃあっ!」
暗い夜道を顔を伏せながら駆けっている私は当然前なんか見てもなく。
そんな不注意から、私はドンっと思い切り誰かとぶつかってしまった。
「す すみませんっ
よく見てなくって…っ」
結構な勢いだったけど突き飛ばしてしまったわけではなく、どちらかと言うと相手の懐に私が飛び込んでしまった感じだった。
がっしりした体型だったから女の人ではないな。
私はすぐに懐から離れて、相手の顔を見上げながら謝った。
「いえ、僕は大丈夫ですが………あれ?」
「すみませんでした、ホントに………あっ」
一歩ほど距離を空け、お互いの顔を見合わせた時、それが知らない相手同士ではない事に気が付いた。
「あの、おかず屋さんの…」
「お客さま!?」
相手の男性が私の顔を知ってる通り、ぶつかったその人はうちの“デリカ popo”の常連さんだったのだ。
毎晩残業上がりで「ここで惣菜選んでる時がホッとする」って言ってくれた人なんだけど、最近はずっと顔を見せなかったなぁ。
うちの惣菜に飽きて他の店に行ってるんじゃないかとか、過労死したんじゃないかとか。
ついさっき厨房で噂したかと思ったら、まさかこんな所で会えちゃうなんてね。
て言うか、ちゃんと普通に生きてますよ、小山さん!!
勝手にお客さんを殺さないで下さーいっ
「今仕事の帰り?
いつも遅くまで頑張るね」
そう言うお客さんもスーツ姿に、仕事カバンを持っている。
1日仕事で疲れているだろう、スーツだけじゃない、顔だってくたびれているようだ。
「あ、いえっ
でもお客さまも、今お帰りってとこですかね」
「あぁ。
ちょっと前からプロジェクトに参加してて、帰りがまた遅くなってるんだよ。
もうお腹と背中が、くっつきそうだ」
あぁ、なるほど。
今が仕事の帰りなら、もう既に閉店しちゃってるうちの店では買い物なんてできないわけだ。
予想が外れたね、小山さん。
「だけど、じゃあ今から晩ご飯ですか?
うちのお店は9時で閉まっちゃうから、どこかコンビニに行かれるとか?」
「いやいや。
それなら、最近は子どもに買いに行ってもらってるので、今夜もそちらのおかずを戴きますよ」
「…あぁ、そうなんですか!
それは何よりですね」
子ども!?
このお客さん、子どもがいるんだ!!
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】あなただけが特別ではない
仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。
目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。
王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる