25 / 119
2
しおりを挟む「……………遅い…」
待ち合わせの本屋さんの前に立って、既に11時を20分も経過している。
もしかして中で立ち読みしてるのかなと、何度も店の中をグルグルと回ってみたけどアイツの姿はなかった。
約束の時間も場所も間違いはないハズだし、まさかアイツに何かあったとか…………?
「ごめーん、ひなっ
寝坊しちゃった」
「…………!」
…なんて心配も取り越し苦労だったようで。
アイツは悪びれた様子もなけりゃ、堂々と寝坊とか言って私の前にやって来たわけだ。
「…何時に起きたんですか?」
「ん?
ついさっきだよ」
「………………」
最近の高校生は学校が休みなだけで、11時過ぎまで寝ちゃうもんなのかしら。
だけど言ってる通り、まるで起きてそのまま来たかのような乱れた茶髪に、着替えはしたの?って思うくらいのユルいTシャツに膝までの短パン。
今時のファッションだってよく知らない私だけど、最近の若い子はみんなこんなラフな感じなのかなぁ。
ま、全然オシャレなんてできてない私の事を考えれば、逆にちょうどいいのかもしれないけどね。
「腹へったー!
ひな、ハンバーガー食べに行こ!」
「えっ、あ…っ」
別に期待してなんかはいなかったけどさ。
でも私の好きなもの何でも奢るなんて言っておきながら、いきなり行き先を勝手に決めてしまったコイツには驚いてしまう。
だけど今はそれ以上に…
「……………っ」
「行こ」なんて言いながらいきなり私の手を握って歩き始めた彼に、私は口から心臓が飛び出そうになるほどドキンとした。
ふ、普通そんな簡単に手とか握っちゃう!?
失礼だとか、遠慮しようとか考えないの??
「アッチィね。
俺シェイク2つくらいイっちゃうよ」
「……………っ//」
夏の太陽の暑さや眩しさもあるんだけど、握った手と手からジワッと汗ばんでいくのがわかる。
いっぺんに2つも飲んだら、お腹壊しちゃいますよ!
って言えなかったのは、緊張しすぎちゃってるからなんだ。
夏のファーストフード店はエアコンがよくきいていて、汗ばんだ身体もサッと引くくらい涼しくて気持ちいい。
「…本当に2つも飲むんですね。
しかもジュースだってLサイズがあるのに」
陽の熱さの勢いで2つって言ったのかと思いきや、彼はこんなエアコンのきいた店内でさえも注文口に着いた途端、ハンバーガーのセットにバニラシェイクを2つもオーダーした。
「ここのシェイクちょー美味いんだって!
それよりひなは、何にするの?」
「えっ、あ、そっか」
つい呆気に取られて見ていたけれど、自分の注文の事なんてすっかり忘れていた。
というか、まさかランチにファーストフードだとは思わなくて何も考えてなかったのだ。
「えっと…」
メニュー表を見ながら、自分が食べるものを考える。
「んー…」
そもそもファーストフードなんて高校の時に友だちと行ったぐらいで、最近は全然利用してないな。
高校を卒業してからは進路も分かれたし、メールはしても友だちと会って遊ぶって事もないもんね。
それに私の友だちはみんな私と違って、自分の家庭を……
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
【完結】あなただけが特別ではない
仲村 嘉高
恋愛
お飾りの王妃が自室の窓から飛び降りた。
目覚めたら、死を選んだ原因の王子と初めて会ったお茶会の日だった。
王子との婚約を回避しようと頑張るが、なぜか周りの様子が前回と違い……?
あなたの嫉妬なんて知らない
abang
恋愛
「あなたが尻軽だとは知らなかったな」
「あ、そう。誰を信じるかは自由よ。じゃあ、終わりって事でいいのね」
「は……終わりだなんて、」
「こんな所にいらしたのね!お二人とも……皆探していましたよ……
"今日の主役が二人も抜けては"」
婚約パーティーの夜だった。
愛おしい恋人に「尻軽」だと身に覚えのない事で罵られたのは。
長年の恋人の言葉よりもあざとい秘書官の言葉を信頼する近頃の彼にどれほど傷ついただろう。
「はー、もういいわ」
皇帝という立場の恋人は、仕事仲間である優秀な秘書官を信頼していた。
彼女の言葉を信じて私に婚約パーティーの日に「尻軽」だと言った彼。
「公女様は、退屈な方ですね」そういって耳元で嘲笑った秘書官。
だから私は悪女になった。
「しつこいわね、見て分かんないの?貴方とは終わったの」
洗練された公女の所作に、恵まれた女性の魅力に、高貴な家門の名に、男女問わず皆が魅了される。
「貴女は、俺の婚約者だろう!」
「これを見ても?貴方の言ったとおり"尻軽"に振る舞ったのだけど、思いの他皆にモテているの。感謝するわ」
「ダリア!いい加減に……」
嫉妬に燃える皇帝はダリアの新しい恋を次々と邪魔して……?
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる