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「……………遅い…」




待ち合わせの本屋さんの前に立って、既に11時を20分も経過している。



もしかして中で立ち読みしてるのかなと、何度も店の中をグルグルと回ってみたけどアイツの姿はなかった。



約束の時間も場所も間違いはないハズだし、まさかアイツに何かあったとか…………?








「ごめーん、ひなっ
寝坊しちゃった」



「…………!」



…なんて心配も取り越し苦労だったようで。

アイツは悪びれた様子もなけりゃ、堂々と寝坊とか言って私の前にやって来たわけだ。



「…何時に起きたんですか?」


「ん?
ついさっきだよ」


「………………」



最近の高校生は学校が休みなだけで、11時過ぎまで寝ちゃうもんなのかしら。


だけど言ってる通り、まるで起きてそのまま来たかのような乱れた茶髪に、着替えはしたの?って思うくらいのユルいTシャツに膝までの短パン。



今時のファッションだってよく知らない私だけど、最近の若い子はみんなこんなラフな感じなのかなぁ。



ま、全然オシャレなんてできてない私の事を考えれば、逆にちょうどいいのかもしれないけどね。


「腹へったー!
ひな、ハンバーガー食べに行こ!」


「えっ、あ…っ」



別に期待してなんかはいなかったけどさ。

でも私の好きなもの何でも奢るなんて言っておきながら、いきなり行き先を勝手に決めてしまったコイツには驚いてしまう。



だけど今はそれ以上に…



「……………っ」



「行こ」なんて言いながらいきなり私の手を握って歩き始めた彼に、私は口から心臓が飛び出そうになるほどドキンとした。



ふ、普通そんな簡単に手とか握っちゃう!?

失礼だとか、遠慮しようとか考えないの??



「アッチィね。
俺シェイク2つくらいイっちゃうよ」


「……………っ//」



夏の太陽の暑さや眩しさもあるんだけど、握った手と手からジワッと汗ばんでいくのがわかる。



いっぺんに2つも飲んだら、お腹壊しちゃいますよ!

って言えなかったのは、緊張しすぎちゃってるからなんだ。







夏のファーストフード店はエアコンがよくきいていて、汗ばんだ身体もサッと引くくらい涼しくて気持ちいい。




「…本当に2つも飲むんですね。
しかもジュースだってLサイズがあるのに」



陽の熱さの勢いで2つって言ったのかと思いきや、彼はこんなエアコンのきいた店内でさえも注文口に着いた途端、ハンバーガーのセットにバニラシェイクを2つもオーダーした。



「ここのシェイクちょー美味いんだって!
それよりひなは、何にするの?」



「えっ、あ、そっか」



つい呆気に取られて見ていたけれど、自分の注文の事なんてすっかり忘れていた。

というか、まさかランチにファーストフードだとは思わなくて何も考えてなかったのだ。



「えっと…」



メニュー表を見ながら、自分が食べるものを考える。



「んー…」



そもそもファーストフードなんて高校の時に友だちと行ったぐらいで、最近は全然利用してないな。


高校を卒業してからは進路も分かれたし、メールはしても友だちと会って遊ぶって事もないもんね。

それに私の友だちはみんな私と違って、自分の家庭を……

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