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童顔は男に縁もありません! 1

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「はぁい、80円のお返しでーす」


レジ袋に包んだ惣菜をお客さんに渡すと、私は笑顔でお客さんを見送った。



「ありがとうございます。またお越し下さいませ~」







「んまぁ、ひなちゃん。相変わらず接客が上手ねぇ」


そんな私の背後から声をかけたのは、このデパ地下にある惣菜屋さん“デリカpopo”に勤めるパート主任の小山さんだ。


午後からの出勤で来ているこの惣菜屋さんは、惣菜を作る所から陳列、接客販売まで全部がお仕事。


私だって奥で揚げ物や炒め物をする事はあるけれど、その殆どは接客販売の担当になる事の方が多い。



「ひなちゃんが来てから、お客さん増えてるのよ?もぉ看板娘ね」


「またそんなぁ//」



勤めている他の従業員はみんな中年のおばちゃんばかり。

そんなわけもあって、若い人が前に出た方がいいと私がレジをする事が多いわけだ。


そしてやっぱり私の童顔のせいで、すっかりおばちゃんには「ひなちゃん」なんて呼ばれて完全に子ども扱い。


普通28才の社会人に、名前にちゃん付けでなんて呼ばないもんね。


「ひな坊っ!
お客さん引いたら中に入って手伝えよー」


「あ、はぁい」



私と小山さんが話している所にそう言って厨房から顔を出したのは、このpopoの店長の久保さんだ。


久保店長はこのおばちゃんばかりの職場で、唯一の男性スタッフ。

まぁ店長なんだから男性でも頷けるんだけど、なのに調理の腕も立つんだから正直にスゴいと思う。


年は40代半ばなのに結婚はしてなくて、親と同居しているらしいのはおばちゃんたちの会話から聞こえた情報。



そしてそんな久保店長にさえも、私は「ひな坊」呼ばわりなんだから笑うしかないって感じだ。




「また久保店長は!ホント若い子には優しい言い方ね。
あたしらにはヤレ!ってヒドく言う癖にっ」


「ババァはすぐひがむな。
はいはい、小山も手伝ってね~」



そんな小山さんと久保店長のやりとりに、私は「あはは…」と苦笑いした。



小山さんがババァなら確かに私は若い子だろうけど、でも一応私はアラサーなんですよー。


まぁ頭じゃわかっていても、きっとみんなそんな風に思ってなんかいないんだろうな。

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