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「…総合 病院…?」



佐伯先生が入って行った建物は、この辺りでは一番大きい総合病院だった。


平日の午後だし、総合病院なら診察時間は終わっている。

個人病院なら午後からも診察はあるだろうけど、でも今の時間からして佐伯先生もお昼休みじゃないかと思う。



そんな時間に総合病院だなんて、佐伯先生は何をしに行くんだろう?



「………………………」



お兄ちゃんが帰って来るまで、まだ時間はある。

身体の調子も、全然悪くない。


別に今からする用事も予定もなにもないし。



「…それに、わたしまだ佐伯先生にお礼言ってなかったからなぁ」



人の後をついて歩くのは不躾かもしれないど。

でも偶然見つけたからって、あいさつするくらいはいいよね。






見失わないように、急いで道路を渡って佐伯先生を追いかけた。


もちろん白衣は着ていないけれど、歩く後ろ姿や背の高さなんかは間違いなく佐伯先生だった。



案の定、病院の中は診察時間も終わっていて、ロビーも薄暗くガランとしている。

だけど佐伯先生はそのロビーを通り過ぎ、エレベーターに乗って上の階へと上がってしまった。



「上の階?
…って事は、入院病棟に向かってるんだ。
佐伯先生、誰かのお見舞いに行くのかなぁ」



すぐ横にある階段を急いで駆け上がり、見失わないように1フロアずつ降りては、行った後を確認した。


人のお見舞い相手を覗くなんて失礼なのかもしれないけど。
でも今の佐伯先生を見て、何だか気になって仕方なかったの。


だって誰かのお見舞いに来た割には、佐伯先生は手ぶらだったから…。




4階で降りた佐伯先生を見つけると、わたしは懸命にその背中を追いかけた。


そして病棟の一番奥にある個室の部屋に入ったのを確認すると、わたしはその部屋の前で膝に手を付いて立ち止まる。



(はぁ…はぁ……っ)



背も高く歩幅も大きい佐伯先生を追いかけるのはなかなか骨で、4階までを階段で駆け上がったのも手伝って息が切れちゃった。



(はぁ………ふぅ…)



だけどしばらく全身で呼吸を整えていると、それもようやく落ち着いてきた。



心臓のドキドキもおさまってきたし、わたしは改めて佐伯先生の入って行った病室の方に向き直った。



佐伯先生のお見舞い相手。

ご家族の方なのかなぁ。
お友だちとかだったら、尚更お見舞いに何か持って行きそうな気がするんだけど。



どちらにせよ、わたしが入って行って邪魔するわけにはいかないし。佐伯先生が出て来るのを待っていよう。

そんな思いで何気なく病室前に掲げられている患者さんのネームプレートを、わたしは顔を上げて見た。

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