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8(ヒロキサイド)
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4月になり、短い春休みももうすぐ終わる。
新学期になれば、オレと同じ高校に通う事になったひとみとは、毎朝一緒に登校できるんだ。
──このままずっと、一緒にいたい。
そんなオレの願いがずっと叶っていけてるみたいで、スゴく嬉しかった。
だけど、この気持ちをひとみに告白していいのか、オレはずっと悩んでいた。
もしオレの気持ちに応えてくれて、付き合うようになったとしても……
…オレとひとみは父親同士が兄弟の、いとこ関係なんだ。
普通の恋愛と違って躊躇を覚えても、仕方ないと思っている。
──だけど。
遊園地に2人で行った時、オレは正直に言おうと決めたんだ。
“オレが、一生ひとみを守っていく。
だから、ずっと一緒にいような”
入学式の日には約束を入れる事ができなかったけど、遊園地はまた今度にすればいい。
大丈夫。
どこにいてもひとみは、必ずオレのもとに帰って来てくるんだから。
そう、思っていたんだ。
…だけどそれが、大きな間違いだったんだ。
入学式も無事に終わり、新入生が帰った後のオレたちは、午後からも普通に授業がある。
だからひとみはオレよりも先に学校を出て、家族たちと旅行に行っただろう。
──それが、ひとみから大切なものをたくさん奪った、原因になったんだ。
『ひとみたちが…事故!?』
電話を終えたばかりの母さんの言葉に、オレはまだ頭が理解に追い付かなかった。
だって、今日はひとみの入学式だった。
体育館の前方に座って式を受けていた姿を、オレは後ろの席から見た。
初めて見るうちの高校の制服姿に、ドキッと胸が鳴ったのを今でも覚えているってのに……っ!
『詳しくは今から聞きに行くんだけど、飲酒運転のトラックに衝突されたらしいのっ。
ひとみちゃんとまなちゃんは、何とか助かったんだけれど………』
それを聞いて、ゾワゾワと全身が震えだした。
飲酒運転のトラックに衝突だって……!?
もう夜も遅い時間になっていた。
オレは父さんと母さんの3人で、ひとみたちが運ばれた総合病院へと駆け付けた。
さっき母さんは「ひとみちゃんとまなちゃんは何とか助かったけれど」って言った。
という事は、一緒だった伯父さんや伯母さんは!?
何とかって、ひとみやまな姉ちゃんは……っ
『……………………』
案内された集中治療室の中では、4人がそれぞれベッドに横たわっていた。
…だけどそのうち2人は、既に顔に白い布が覆われている。
『ウソ…だろ……?』
残りの2人は点滴や酸素マスクがあてられているが、そのうちの1人がひとみだと気付いて、オレはすぐに駆け寄った。
『ひとみっ!!』
ベッドで眠るひとみの顔に、何かに打ち付けたような痕があった。
だけどゆっくり上下する胸の動きに、確かに生きて呼吸しているのがわかってホッと安心した。
『親族の方ですか?』
オレたちの姿を確認した白衣の先生が、父さんと母さんの方へ歩み出た。
ひとみの父さんはオレの伯父さんでもあるから、父さんからすれば伯父さんは実の弟だ。
『娘さん2人の命は何とか無事でした。特に妹さんの方は、殆ど無傷です。
しかし……』
父さんは白衣の先生の方へと向き直ると、その後の言葉を黙って聞いていた。
あまりにも唐突な受け入れがたい現実を聞き入れるのに、実際はきっと相当な時間がかかっていただろう。
『…前部座席にいたご夫婦の方は、ほぼ即死でした』
それから、伯父さん夫婦の通夜は自宅で行われ、翌日には身内だけで密葬した。
あまりに唐突な出来事だったので、葬儀が終わった後もオレは未だに夢なのか現実なのかわからなくなっていた。
だけど無事に生き残ってくれた2人を見ると、それが現実なんだとようやく理解できたんだ。
集中治療室に入っていた2人のうち、ひとみの方が先に目を覚ました。
初めは意識がハッキリしなく、しばらくボーっと窓の外を見てる事が多い。
だがまな姉ちゃんの方は、葬儀が終わって1週間が過ぎても目を覚ます事はなかった。
顔にあった傷は徐々に治っていっても、その瞳はずっと開く事がなかったんだ。
新学期になれば、オレと同じ高校に通う事になったひとみとは、毎朝一緒に登校できるんだ。
──このままずっと、一緒にいたい。
そんなオレの願いがずっと叶っていけてるみたいで、スゴく嬉しかった。
だけど、この気持ちをひとみに告白していいのか、オレはずっと悩んでいた。
もしオレの気持ちに応えてくれて、付き合うようになったとしても……
…オレとひとみは父親同士が兄弟の、いとこ関係なんだ。
普通の恋愛と違って躊躇を覚えても、仕方ないと思っている。
──だけど。
遊園地に2人で行った時、オレは正直に言おうと決めたんだ。
“オレが、一生ひとみを守っていく。
だから、ずっと一緒にいような”
入学式の日には約束を入れる事ができなかったけど、遊園地はまた今度にすればいい。
大丈夫。
どこにいてもひとみは、必ずオレのもとに帰って来てくるんだから。
そう、思っていたんだ。
…だけどそれが、大きな間違いだったんだ。
入学式も無事に終わり、新入生が帰った後のオレたちは、午後からも普通に授業がある。
だからひとみはオレよりも先に学校を出て、家族たちと旅行に行っただろう。
──それが、ひとみから大切なものをたくさん奪った、原因になったんだ。
『ひとみたちが…事故!?』
電話を終えたばかりの母さんの言葉に、オレはまだ頭が理解に追い付かなかった。
だって、今日はひとみの入学式だった。
体育館の前方に座って式を受けていた姿を、オレは後ろの席から見た。
初めて見るうちの高校の制服姿に、ドキッと胸が鳴ったのを今でも覚えているってのに……っ!
『詳しくは今から聞きに行くんだけど、飲酒運転のトラックに衝突されたらしいのっ。
ひとみちゃんとまなちゃんは、何とか助かったんだけれど………』
それを聞いて、ゾワゾワと全身が震えだした。
飲酒運転のトラックに衝突だって……!?
もう夜も遅い時間になっていた。
オレは父さんと母さんの3人で、ひとみたちが運ばれた総合病院へと駆け付けた。
さっき母さんは「ひとみちゃんとまなちゃんは何とか助かったけれど」って言った。
という事は、一緒だった伯父さんや伯母さんは!?
何とかって、ひとみやまな姉ちゃんは……っ
『……………………』
案内された集中治療室の中では、4人がそれぞれベッドに横たわっていた。
…だけどそのうち2人は、既に顔に白い布が覆われている。
『ウソ…だろ……?』
残りの2人は点滴や酸素マスクがあてられているが、そのうちの1人がひとみだと気付いて、オレはすぐに駆け寄った。
『ひとみっ!!』
ベッドで眠るひとみの顔に、何かに打ち付けたような痕があった。
だけどゆっくり上下する胸の動きに、確かに生きて呼吸しているのがわかってホッと安心した。
『親族の方ですか?』
オレたちの姿を確認した白衣の先生が、父さんと母さんの方へ歩み出た。
ひとみの父さんはオレの伯父さんでもあるから、父さんからすれば伯父さんは実の弟だ。
『娘さん2人の命は何とか無事でした。特に妹さんの方は、殆ど無傷です。
しかし……』
父さんは白衣の先生の方へと向き直ると、その後の言葉を黙って聞いていた。
あまりにも唐突な受け入れがたい現実を聞き入れるのに、実際はきっと相当な時間がかかっていただろう。
『…前部座席にいたご夫婦の方は、ほぼ即死でした』
それから、伯父さん夫婦の通夜は自宅で行われ、翌日には身内だけで密葬した。
あまりに唐突な出来事だったので、葬儀が終わった後もオレは未だに夢なのか現実なのかわからなくなっていた。
だけど無事に生き残ってくれた2人を見ると、それが現実なんだとようやく理解できたんだ。
集中治療室に入っていた2人のうち、ひとみの方が先に目を覚ました。
初めは意識がハッキリしなく、しばらくボーっと窓の外を見てる事が多い。
だがまな姉ちゃんの方は、葬儀が終わって1週間が過ぎても目を覚ます事はなかった。
顔にあった傷は徐々に治っていっても、その瞳はずっと開く事がなかったんだ。
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