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気持ち、通じ合えたよ!だけど…?①
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春休みも終わって、4月の新学期。
福祉科福祉コースのオレも、2年目を迎えた。
自転車を駐輪場に置いて昇降口に入ろうとした時、秀明の姿を見つけて駆け寄った。
「よっ、はよ!」
「陸!
おはよ、久しぶりだな」
別にクラスの誰とも仲は悪くないけど、秀明だけは一番よく話す。
「そうだ、陸。
実習先、押さえといたからな」
「サンキュー!」
「そん代わり、他の奴らに先越されて近場は取れなかったから、ちょっと遠くなるけどいいか?」
「どうせ秀明の車で送ってくれるんだろ?
大丈夫大丈夫!」
1年目の時の施設実習だって、秀明の車に乗せてもらったんだ。
せっかく免許持ってんのに、助手席がオレだなんて。
コイツも早く彼女の1人でも作ればいいのにな。
「家の仕事用の車だから、軽トラだけどな」
「農家の息子だもんね。
ごくろーさん」
2週間振りに入る教室に、懐かしい顔触れが映る。
福祉コースは1クラスだけなので、クラス替えみたいなものはない。
席は自由だけど、1年目の時に既にマイテリトリーの如く決まっていったので、2年目も同じ位置に着いた。
「おはよー」
「おはよっ」
適当にすれ違うクラスメイトあいさつをしながら、自分の席に荷物を置こうとした時、ちょうど視線の先にいた高倉麻衣と目があった。
「………………おはよ」
「おはよう…」
あの日、木原に言付けを頼まれてからは、とりあえずあのファミレスには来なくなった様子の高倉麻衣。
もちろんそれに対して木原が返した言葉は、言わないけどさ。
あれからネットで調べたんだけど、中絶費用は7万からするらしい。
バイトもしてなくて親にも言わなかったって事は、自分の貯金から出したりしたんだよな。
だけど。
大金出費も痛かったろうけど、何よりもその心の傷は例えようもない痛みだったんだろうな…。
席に着いてしばらくすると、由香が教室に入ってきた。
「由香!!」
思わず立ち上がって、隣の席まで歩いて来る由香を待った。
「おはよ、由香」
「陸、おはよう。
…よかったぁ。
朝教室来て陸がいなかったら、どうしようかと思ったぁ…」
「いるに決まってんじゃんよっ」
気まずいまま春休みを迎えてそれっきりだったんだけど、新学期の今はそんなわだかまりはなくなってるみたいだった。
あの時はイラッとしてしまったけど。
時間が経ってしまうとそんな気持ちも薄れてしまい、久しぶりに会えた今となっては愛しい以外にない。
今すぐ抱きしめてキスしたいとこだけど、さすがに教室だからガマン………
「陸…っ」
と思っていたのに、席に荷物を置くよりも早く、由香の方がオレに抱きついてきたんだ。
「ぉ…おい、由香…っ」
思わず戸惑うオレに、気付いたクラスの男子共が冷やかしてくる。
「ヒューヒュー!」
「お熱いね、ご両人!」
「う、うるせーな//
…って由香、嬉しいけどそれはまた帰ってから…」
そう言って、オレはギュッと抱きつく由香に向き直る。
だけど由香のその表情は、浮かれてるとか照れてるとかそんなんじゃなく…
「よかったぁ…陸…」
ホントに、もう会えないとでも思ってたんだろうか。
必死になってしがみつくように、由香はしばらくオレから離れようとしなかった。
「………………………」
だけどそんな由香に、オレはあの残酷な言葉を言おうとしてんだな…。
福祉科福祉コースのオレも、2年目を迎えた。
自転車を駐輪場に置いて昇降口に入ろうとした時、秀明の姿を見つけて駆け寄った。
「よっ、はよ!」
「陸!
おはよ、久しぶりだな」
別にクラスの誰とも仲は悪くないけど、秀明だけは一番よく話す。
「そうだ、陸。
実習先、押さえといたからな」
「サンキュー!」
「そん代わり、他の奴らに先越されて近場は取れなかったから、ちょっと遠くなるけどいいか?」
「どうせ秀明の車で送ってくれるんだろ?
大丈夫大丈夫!」
1年目の時の施設実習だって、秀明の車に乗せてもらったんだ。
せっかく免許持ってんのに、助手席がオレだなんて。
コイツも早く彼女の1人でも作ればいいのにな。
「家の仕事用の車だから、軽トラだけどな」
「農家の息子だもんね。
ごくろーさん」
2週間振りに入る教室に、懐かしい顔触れが映る。
福祉コースは1クラスだけなので、クラス替えみたいなものはない。
席は自由だけど、1年目の時に既にマイテリトリーの如く決まっていったので、2年目も同じ位置に着いた。
「おはよー」
「おはよっ」
適当にすれ違うクラスメイトあいさつをしながら、自分の席に荷物を置こうとした時、ちょうど視線の先にいた高倉麻衣と目があった。
「………………おはよ」
「おはよう…」
あの日、木原に言付けを頼まれてからは、とりあえずあのファミレスには来なくなった様子の高倉麻衣。
もちろんそれに対して木原が返した言葉は、言わないけどさ。
あれからネットで調べたんだけど、中絶費用は7万からするらしい。
バイトもしてなくて親にも言わなかったって事は、自分の貯金から出したりしたんだよな。
だけど。
大金出費も痛かったろうけど、何よりもその心の傷は例えようもない痛みだったんだろうな…。
席に着いてしばらくすると、由香が教室に入ってきた。
「由香!!」
思わず立ち上がって、隣の席まで歩いて来る由香を待った。
「おはよ、由香」
「陸、おはよう。
…よかったぁ。
朝教室来て陸がいなかったら、どうしようかと思ったぁ…」
「いるに決まってんじゃんよっ」
気まずいまま春休みを迎えてそれっきりだったんだけど、新学期の今はそんなわだかまりはなくなってるみたいだった。
あの時はイラッとしてしまったけど。
時間が経ってしまうとそんな気持ちも薄れてしまい、久しぶりに会えた今となっては愛しい以外にない。
今すぐ抱きしめてキスしたいとこだけど、さすがに教室だからガマン………
「陸…っ」
と思っていたのに、席に荷物を置くよりも早く、由香の方がオレに抱きついてきたんだ。
「ぉ…おい、由香…っ」
思わず戸惑うオレに、気付いたクラスの男子共が冷やかしてくる。
「ヒューヒュー!」
「お熱いね、ご両人!」
「う、うるせーな//
…って由香、嬉しいけどそれはまた帰ってから…」
そう言って、オレはギュッと抱きつく由香に向き直る。
だけど由香のその表情は、浮かれてるとか照れてるとかそんなんじゃなく…
「よかったぁ…陸…」
ホントに、もう会えないとでも思ってたんだろうか。
必死になってしがみつくように、由香はしばらくオレから離れようとしなかった。
「………………………」
だけどそんな由香に、オレはあの残酷な言葉を言おうとしてんだな…。
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