デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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女の気持ちは、女にしかわからないんだろうな①

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あれだけ降っていた大雨がいつの間にかやんでいて、晴れ間さえ見せていた。

そんな日差しの差し込む部屋でオレは、目を閉じた。



「なぁ、由香。
大事な話があるんだけどさ…」

泊まりOKの日の夜に由香をアパートに呼んで、居間に座らせる。


「オレ…これから先もずっと由香の側にいる。
卒業して働いてちゃんと由香を養えるようになったら…そしたら、すぐに結婚しよ」


頬を紅潮させて目も感涙溢れそうな由香の手をギュッと握るんだ。

それから…


「…だからさ、オレたちの子どもはさ、その時までさ、まだ必要ないだろうからさ、…えぇと…」


由香が傷つかないような適当な言葉…

なら仕方ないねって納得できるような都合のイイようなセリフは…


『陸は…っ、陸の赤ちゃん、殺したいの…?』


……っ!!


「…だああっ
あんな事言われたら、やっぱりムリだよなぁぁっ」


目をつむってイメージしてみたものの。

やっぱり上手い言葉ってもんはなかなか出て来ず、オレは実家の自分の部屋で大の字になって畳に転がった。



「トントン。
陸、入るよ」


その時、スーッと襖を開けて入ってきたのは、姉貴だった。

隣には、あのでっかい男はいない。
多分、向こうで母さんもたちと話してるんだろうな。


「どうしたんだよ」

「さっき私たちがお母さんとこに来た時、何か空気悪かったじゃない?
どうしたのかなぁと思って」

「あぁ…」

タイミング悪い時に来たなと思ったけど、姉貴も姉貴で感じてたんだな。


「陸、一人っ子の彼女と付き合ってるんでしょ?
もしかして、その事で相談に来てたの?」

「はっ?
何で姉貴がそんな事知ってんだよ!」

「え、この間からお母さんがブツブツ言ってたから…」


別居してんのに聞いたって事は、電話でオレのグチを話してたってのか?
女ってのは、いちいちおしゃべりなんだからっ。



「…そんな簡単な話じゃないんだよ…」

別れたくもないし、傷付けたくもない。
ただ今回だけは諦めてほしい。

…言ってみれば、それだけなんだけどなぁ。


「…まだ何かあるの?」


この事は、母さんにも誰にも言っていない。

言った所で、どうせオレが咎められるだけで何も変わらないんだからな。


「…てゆーかさ…
姉貴、妊娠してんだよな…?」

ふと思い出した、姉貴の妊娠。

もしかしたら、今のオレの相談相手には姉貴が一番イイんじゃないか?


「ねぇ、そのお腹の子って、もちろん相手はあのでっかい男なんだよねぇ?」

「あ、当たり前じゃない!
って!その呼び方やめてよねっ」


ここまではオレと由香と条件は同じだ。
問題は、この後なんだ。



「もしさ、もし…その彼氏がおろしてくれって言ってきたら、姉貴どう思う?」

「…っ
陸!!」

ちょっとストレートすぎたかな。
もうちょっとオブラートに包んで言わなきゃ、姉貴にまで怒鳴られるぞ。


「もしって言ってんだろ!
ほら、まだ結婚してないのに子供ができるって事は、簡単な問題じゃないだろ?」

「…まぁ…」

「もしだよ?
もし彼氏がさ、子どもまだ欲しくないとか言ったらさ、姉貴どうした?」

「……………………」


…悩んでるな。

せっかく結婚したくてうちに挨拶に来たってのに、ヒドい事訊いてるとは思うよ。
だけど、今はそんな女の生の声って奴が聞きたいんだ。



「別に、別れるとかじゃなくてだよ。
ただ今回は諦めて、みたいな…」

「…産みたいよ。
たとえ勇さんに、要らないって言われたとしてもね」

「何でだよっ
子どもなんて、作ろうと思ったらいつでも作れるじゃんか!」


ただ今回だけ諦めてくれって話なんだ。
そんなに産みたきゃ、環境が整った後でも十分イイと思うのに。



「…でも、今お腹にいる赤ちゃんも、愛する人との子には違わないわ。
それをおろすなんて、私には考えられない…」

「……………………っ」

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