デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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別れるまでは帰って来るな!…なんて母さんには言われてたんだけど。

今のところ何も突っ込んでこないな。



昼ご飯の後はみんなで居間に戻り、父さんは静かに新聞なんか読んでるし、母さんも昼ご飯の片付けを済ませるとお茶を入れてテレビを見ながら飲み始めた。



…それはまるで、めっちゃ平和な休日の昼間。


今年の正月に帰った時と、まったく同じスタイルだよ。



多分このままだったら、何も起こらないまま1日が過ぎていく。





「あー…あのさぁ…」



オレの言葉が聞こえなかったわけでもないだろうに、なのに新聞から目を離さない父さん。

母さんもお茶を口に運びながらテレビの方を見ている。



「ちょっと…話があるんだけどさぁ」




外はまだ大雨で、ザーザーという音が静かな部屋の中にまで響いてくる。



オレはゴクリと喉を鳴らすと、早速本題へと入ろうとした。


「あ あのさ、今オレ…付き合ってる子がいるんだよね…」



ここまで言っても、まだ2人とも無反応。


何がそんなにおもしろいんだってぐらい父さんは新聞から目を離さないし、日曜日の昼間なんてロクな番組やってないのにテレビの方を見てる母さん。


雨の音はうるさくても、でもオレの声は聞こえてるハズなんだ。




「ソイツ…スゴいイイ子でさ、今後も付き合っていこうと思ってんだけどさ…」


「別れたんでしょ?」



「…………………!」



案の定オレの声は聞こえていたわけで。

まだ話してる途中ではあったんだけど、オレは母さんに口を挟まれてしまったのだ。



「別れ…」


「別れたから、帰ってきたんでしょ?
別れるまで帰って来るなって、前に電話で言ったじゃない?」



テレビから目を離さないまま話す母さんに対して、この時ようやくチラリと父さんがこっちを見た。


「…………………っ!」



電話で母さんと少し話した時にも言われたけど。

“別れるまで帰って来るな!”って…まだ覚えてたんだ。


で、ホントにオレが別れてきたから、実家に帰って来たって思ってたのか?



「別れたり…しないよ」



「あっそう。
まだ若いんだものね。
今のうちに遊んどきたいって気持ちは、陸にもあるでしょうけど」



「遊びなんかじゃないよっ!」



…ウソだ。
完全に遊び感覚だった。


気持ちだけはもちろん本物だったけど、でも一生を共にしていくとか、守ってやる養ってやるみたいな感覚はなかった。


ただ今を一緒に過ごす事が、オレにとって快感だっただけ。


ただ、まさかこんな事になるとは思わなかったから…それで「遊びなんかじゃない」なんて言ってるだけなんだ…!

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