デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

文字の大きさ
上 下
35 / 58

しおりを挟む
別れるまでは帰って来るな!…なんて母さんには言われてたんだけど。

今のところ何も突っ込んでこないな。



昼ご飯の後はみんなで居間に戻り、父さんは静かに新聞なんか読んでるし、母さんも昼ご飯の片付けを済ませるとお茶を入れてテレビを見ながら飲み始めた。



…それはまるで、めっちゃ平和な休日の昼間。


今年の正月に帰った時と、まったく同じスタイルだよ。



多分このままだったら、何も起こらないまま1日が過ぎていく。





「あー…あのさぁ…」



オレの言葉が聞こえなかったわけでもないだろうに、なのに新聞から目を離さない父さん。

母さんもお茶を口に運びながらテレビの方を見ている。



「ちょっと…話があるんだけどさぁ」




外はまだ大雨で、ザーザーという音が静かな部屋の中にまで響いてくる。



オレはゴクリと喉を鳴らすと、早速本題へと入ろうとした。


「あ あのさ、今オレ…付き合ってる子がいるんだよね…」



ここまで言っても、まだ2人とも無反応。


何がそんなにおもしろいんだってぐらい父さんは新聞から目を離さないし、日曜日の昼間なんてロクな番組やってないのにテレビの方を見てる母さん。


雨の音はうるさくても、でもオレの声は聞こえてるハズなんだ。




「ソイツ…スゴいイイ子でさ、今後も付き合っていこうと思ってんだけどさ…」


「別れたんでしょ?」



「…………………!」



案の定オレの声は聞こえていたわけで。

まだ話してる途中ではあったんだけど、オレは母さんに口を挟まれてしまったのだ。



「別れ…」


「別れたから、帰ってきたんでしょ?
別れるまで帰って来るなって、前に電話で言ったじゃない?」



テレビから目を離さないまま話す母さんに対して、この時ようやくチラリと父さんがこっちを見た。


「…………………っ!」



電話で母さんと少し話した時にも言われたけど。

“別れるまで帰って来るな!”って…まだ覚えてたんだ。


で、ホントにオレが別れてきたから、実家に帰って来たって思ってたのか?



「別れたり…しないよ」



「あっそう。
まだ若いんだものね。
今のうちに遊んどきたいって気持ちは、陸にもあるでしょうけど」



「遊びなんかじゃないよっ!」



…ウソだ。
完全に遊び感覚だった。


気持ちだけはもちろん本物だったけど、でも一生を共にしていくとか、守ってやる養ってやるみたいな感覚はなかった。


ただ今を一緒に過ごす事が、オレにとって快感だっただけ。


ただ、まさかこんな事になるとは思わなかったから…それで「遊びなんかじゃない」なんて言ってるだけなんだ…!

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

【完結】ぽっちゃり好きの望まない青春

mazecco
青春
◆◆◆第6回ライト文芸大賞 奨励賞受賞作◆◆◆ 人ってさ、テンプレから外れた人を仕分けるのが好きだよね。 イケメンとか、金持ちとか、デブとか、なんとかかんとか。 そんなものに俺はもう振り回されたくないから、友だちなんかいらないって思ってる。 俺じゃなくて俺の顔と財布ばっかり見て喋るヤツらと話してると虚しくなってくるんだもん。 誰もほんとの俺のことなんか見てないんだから。 どうせみんな、俺がぽっちゃり好きの陰キャだって知ったら離れていくに決まってる。 そう思ってたのに…… どうしてみんな俺を放っておいてくれないんだよ! ※ラブコメ風ですがこの小説は友情物語です※

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説

宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。 美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!! 【2022/6/11完結】  その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。  そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。 「制覇、今日は五時からだから。来てね」  隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。  担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。 ◇ こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく…… ――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

君と僕の時間が止まれば

s
青春
親友が死んでしまい学校でも親友の事を笑われ 喧嘩になってしまうそして北海道に転校!?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

処理中です...