デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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居間のテーブルに手をついて「はぁ…」とため息をついた母さん。

その背中に、オレはそっと声をかけた。



「あの…ただいま…」



「ぅわっ
陸、あんたいつの間に……って何なの!その格好はっ!!」



振り向き様に母さんが怒鳴りだしたのも頷ける。

ようやく帰ってきた息子が、大雨に打たれてずぶ濡れになってんだからな。



「こっちで雨降ってるなんて思わなかったの。
風呂、借りるから」



「天気予報くらい見ておきなさいよ!
だいたい、今日帰るなら帰るって電話くらいしたら…」



まだ何か言っている母さんをムシして、とりあえず風呂に向かう。

話もいいけど、早く着替えないと風邪引いちまうだろ。


てゆーか…

今からの話の方が、きっと長くかかるんだろうからな。









「…………ふぃ~っ」



脱いだ服を脱衣場の洗濯機に放り込み、熱いシャワーを頭から浴びた。



持ってきていた着替えは雨でカバンが濡れたから、ちょっとジメっとしていた。

だから仕方なく実家に置いていた予備の服を着ると、濡れたままの髪を適当にタオルで拭きながらニオイにつられて台所に行った。



時間も昼時だし、母さんが昼ご飯を作ってるようだった。



「おっ
みそ汁とか久々」



「まったく!
陸も優もなかなか帰って来ないかと思ったら、今度は急に帰って来るんだからっ
うちにもうちの都合ってものがあるってのに!」



何やらブツブツと文句言いながら、みそ汁の火を消した母さん。



「えっ
姉貴も今日帰って来んの?」



「知らないわよ!
ほんっと、みんな自分勝手なんだからっ」



…なぁんか機嫌悪いなぁ。


この日は日曜日で、会社も休みな父さんも一緒に3人で昼ご飯を食べた。



「………………………」



「やぁねぇ、いつまでも雨が降って。
洗濯物は乾かないし増えるしで、ほんっと困っちゃうんだから」



「ん………」



「後で夕飯のお買い物行かなきゃなのに、早くあがらないかしらぁ」



「………………………」



黙々と食べる父さんに対して、1人ペチャクチャとしゃべりながら食べる母さん。


まぁ母さんはこういうタイプなんだけど。

でも父さんは母さんとまるで正反対で、基本無口。


オレがアパート借りて今の学校に行くって言った時はちょっと反対されたけど、普段口を開く事はあんまりない。


母さんが口を酸っぱくしてオレの事を「相川家の長男」たら「後継ぎ」たら言ってるけど、この話をする時にはさすがに何か言われるかもしれないなぁ。



「あー、みそ汁うま…」



嵐の前の静けさにならなきゃいいけど。

ま…ムリだろうけどな。

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