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「り く……?」
眉を寄せ、不安げな表情でオレを見上げる由香。
それだよ。
その目がオレをイラっとさせる。
まだ高倉麻衣みたいに「サイテー」って罵られた方がサッパリしててイイ。
どんなに指差されても、事実は変わらないんだ。
こっちは一生懸命どうにかしようとしてんのに、そんな顔して黙って見られてると気分悪くなるんだよ!
「陸…あたしの事、やっぱり嫌いになっちゃったの…?」
「はぁ?
そんな事は一言も言ってないだろ!?」
「っ」
思わず張り上げてしまった声に、由香の身体がビクッと震えた。
「…………………っ」
と同時に、黙って涙を流し始めた由香。
…何なんだよっ。
オレにどうしろって言うんだよ!
唇をギュッと噛みながら、声を殺して泣き続ける由香。
なんで何も言わねぇんだよ!
どうせオレはサイテーな奴なんだよ!
何なら、ビンタの1発や2発くれたっていいんだ。
そうすりゃオレだって、本気で由香の為にどんな償いだってしてやるってのに…っ!
「…麻衣と、付き合う事になったの?」
「……………は?」
由香の二言目には、耳を疑った。
オレが…高倉麻衣と付き合う?
「この前、午前中授業だった時に…陸がバイトに行ってるファミレスに麻衣と入ってるとこ、あたし見た…」
「……………………っ」
高倉麻衣に話があるって一緒に行った時の事だ。
あの日は確か、由香は用があって先に帰ったって高倉麻衣が言ってたな。
なのにあのファミレス付近に、由香はいたってのか?
「…あのな、由香。
あれは高倉が話があるからってたまたま…」
「あたしとは…一緒にファミレスなんて行った事ないのに…」
「それは…っ」
痛いとこを突かれて、言葉が途切れた。
確かに、そもそもここに来て誰かとファミレス自体高倉麻衣が初めてだったりする。
「麻衣と一緒に…お昼ご飯食べたんだ」
チラリと、さっき流しに持って行った丼を見ながら由香が言った。
他の女には一緒に外食して、彼女には家でインスタントで済ませてる。
…そう思ってるんだ。
「由香、それ誤解だ。
だいたいあの時は、何も注文しないで話だけして…っ」
「何の話、してたの?」
__『由香を泣かしたら、相川君の事を一生軽蔑するから』
「……………………っ」
もう、泣かせてるよ。
軽蔑でも何でも、すればいいじゃないか。
どうせオレは、サイテーな奴なんだよ!!
「あたし…本当はもっと陸とカレカノっぽい事もしたいの、ちょっと我慢してる。
お揃いのものとか欲しいけど、陸そういうの興味なさそうだし…」
「我慢なんてしなきゃいいだろっ
それに、別にオレ興味ないとか_」
「ごめん、あたし帰るね」
「由香っ」
その日の夜は、由香はバイト先に顔は出さなかった。
あれから誤解したまま帰っていった由香。
高倉麻衣の事だって、静かな所で話したいからって言うから、たまたまあのファミレスに来ただけなのに。
だいたいお前ら、友だち同士のクセにそこら辺の事は話したりしないのかよ。
そして日をまたぎ、今日から春休みを迎えた。
学校はない。
バイトも休みをもらっているから行かない。
実家に帰るのはオレの都合だから、いつ帰ってもいい。
「……………………」
ボーっとしたまま、静かなアパートの居間。
オレは1人で布団の上に転がっていた。
このまま連絡を取らなければ、由香とは新学期まで会う事もないんだろうな。
…なんて、考えてた。
眉を寄せ、不安げな表情でオレを見上げる由香。
それだよ。
その目がオレをイラっとさせる。
まだ高倉麻衣みたいに「サイテー」って罵られた方がサッパリしててイイ。
どんなに指差されても、事実は変わらないんだ。
こっちは一生懸命どうにかしようとしてんのに、そんな顔して黙って見られてると気分悪くなるんだよ!
「陸…あたしの事、やっぱり嫌いになっちゃったの…?」
「はぁ?
そんな事は一言も言ってないだろ!?」
「っ」
思わず張り上げてしまった声に、由香の身体がビクッと震えた。
「…………………っ」
と同時に、黙って涙を流し始めた由香。
…何なんだよっ。
オレにどうしろって言うんだよ!
唇をギュッと噛みながら、声を殺して泣き続ける由香。
なんで何も言わねぇんだよ!
どうせオレはサイテーな奴なんだよ!
何なら、ビンタの1発や2発くれたっていいんだ。
そうすりゃオレだって、本気で由香の為にどんな償いだってしてやるってのに…っ!
「…麻衣と、付き合う事になったの?」
「……………は?」
由香の二言目には、耳を疑った。
オレが…高倉麻衣と付き合う?
「この前、午前中授業だった時に…陸がバイトに行ってるファミレスに麻衣と入ってるとこ、あたし見た…」
「……………………っ」
高倉麻衣に話があるって一緒に行った時の事だ。
あの日は確か、由香は用があって先に帰ったって高倉麻衣が言ってたな。
なのにあのファミレス付近に、由香はいたってのか?
「…あのな、由香。
あれは高倉が話があるからってたまたま…」
「あたしとは…一緒にファミレスなんて行った事ないのに…」
「それは…っ」
痛いとこを突かれて、言葉が途切れた。
確かに、そもそもここに来て誰かとファミレス自体高倉麻衣が初めてだったりする。
「麻衣と一緒に…お昼ご飯食べたんだ」
チラリと、さっき流しに持って行った丼を見ながら由香が言った。
他の女には一緒に外食して、彼女には家でインスタントで済ませてる。
…そう思ってるんだ。
「由香、それ誤解だ。
だいたいあの時は、何も注文しないで話だけして…っ」
「何の話、してたの?」
__『由香を泣かしたら、相川君の事を一生軽蔑するから』
「……………………っ」
もう、泣かせてるよ。
軽蔑でも何でも、すればいいじゃないか。
どうせオレは、サイテーな奴なんだよ!!
「あたし…本当はもっと陸とカレカノっぽい事もしたいの、ちょっと我慢してる。
お揃いのものとか欲しいけど、陸そういうの興味なさそうだし…」
「我慢なんてしなきゃいいだろっ
それに、別にオレ興味ないとか_」
「ごめん、あたし帰るね」
「由香っ」
その日の夜は、由香はバイト先に顔は出さなかった。
あれから誤解したまま帰っていった由香。
高倉麻衣の事だって、静かな所で話したいからって言うから、たまたまあのファミレスに来ただけなのに。
だいたいお前ら、友だち同士のクセにそこら辺の事は話したりしないのかよ。
そして日をまたぎ、今日から春休みを迎えた。
学校はない。
バイトも休みをもらっているから行かない。
実家に帰るのはオレの都合だから、いつ帰ってもいい。
「……………………」
ボーっとしたまま、静かなアパートの居間。
オレは1人で布団の上に転がっていた。
このまま連絡を取らなければ、由香とは新学期まで会う事もないんだろうな。
…なんて、考えてた。
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