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それから午前中の授業が終わり、昼休みになった。
と言っても、今日は午後の授業がない。
バイトも夕方からだから、ちょっと時間もあるんだけど…。
「………………!」
次々と教室を出て行く生徒たちの中に、ハッと目が合った女子がいた。
高倉麻衣だ。
いつもなら気にも止めない、ただのクラスメイトなんだけど。
ただ由香の話を聞いてからは印象が変わってしまった。
友だちである由香以外には、親にも相談しないで彼氏に捨てられ中絶したっていう…。
その時の様子とか細かく訊いてみたいもんだけど、由香には内緒だって口封じされてるし。
まぁ、今まで通り普通にしてたらいいよな。
…と、思ってた。
だけど
「相川君」
意外にも、高倉麻衣の方からオレに声がかかってきたのだ。
「は…」
由香の友だちではある高倉麻衣だけど、別にオレとは仲がいいとか特別話すような関係ではない。
そもそも他県から来たわけだから、秀明みたいな教室で話すぐらいな友だちしかオレにはいないわけだし。
だいたい学校から出たら、アパートかバイト先にしかいないわけなんだから。
「相川君、ちょっと…いいかな」
「え…と…。
由香も一緒?」
「由香は今日用事があるからって、先に帰ったみたい。
相川君は、今ちょっと話す事ってできる?」
…高倉麻衣がオレに話?
てゆーか、ホントはオレの方が聞きたい事があるくらいだ。
相手の男にはどんな風に言われたのかとか。
中絶にどんくらい費用がかかったのか……って、さすがにそんな事は訊けないけどな。
「…いいよ。
話って、どこで?」
「ん、できれば静かなとこがいいかも」
「…わかったよ」
教室を出ると、オレは高倉麻衣について歩いた。
いくつかの専攻科がある学校なので、オレたちは午前上がりでも他の生徒たちがどこかしらいて、なかなか静かって言える場所がない。
だもんで、結局高倉麻衣とはオレがバイトで行ってるファミレスで話す事になった。
「いらっしゃいませ!
お客様2名……って陸かよ!」
入り口のドアを開けて入った瞬間、出迎えてきた木原にツッコまれた。
「珍しいな、陸がファミレスで飯なんて。
な、由香ちゃ………」
当然木原は、オレと一緒に来ていたのは由香だと思っただろう。
ひょこっとオレの背後に顔を覗かせた木原の言葉は、驚いて途切れたようだ。
だいたいオレは、由香以外の女子と歩く事すらなかったからな。
「別にただのクラスメイトだよ。
勝手に空いてる席座るから、水運んで来いよな」
「あ、あぁ…」
そんなにビビるほどの事じゃないだろ。
オレは戸惑う木原をムシして、適当に禁煙席の方へと歩いて行った。
平日だけど昼真っ只中なのもあって、それなりに客もいる店内。
中には、オレたちみたいな午前中で学校が終わってそのままランチにって学生もいたりする。
オレは空いてるテーブルを見つけると、先にイスを引いて座った。
「…相川君、ここにはよく来てるの?」
オレより少し遅れて、高倉麻衣は向かいのイスに座った。
「来てるってゆーか、ここオレのバイト先だもん」
「そうなんだ…」
さっきよりも、急にしおらしくなったような高倉麻衣。
何なんだ?
「いらっしゃいませ、相川様。
ご注文お決まりになりましたら、こちらのボタンを押してお呼び下さい。
なんてねっ」
その時、ウエイトレスが盆に乗せて来た水をテーブルに置いた。
てゆーか、てっきり木原が来たのかと思ったら、別のバイトの子だったんだけど。
「はいはい。
お疲れさーん」
昼時だし、木原だってヒマじゃないもんな。
と言っても、今日は午後の授業がない。
バイトも夕方からだから、ちょっと時間もあるんだけど…。
「………………!」
次々と教室を出て行く生徒たちの中に、ハッと目が合った女子がいた。
高倉麻衣だ。
いつもなら気にも止めない、ただのクラスメイトなんだけど。
ただ由香の話を聞いてからは印象が変わってしまった。
友だちである由香以外には、親にも相談しないで彼氏に捨てられ中絶したっていう…。
その時の様子とか細かく訊いてみたいもんだけど、由香には内緒だって口封じされてるし。
まぁ、今まで通り普通にしてたらいいよな。
…と、思ってた。
だけど
「相川君」
意外にも、高倉麻衣の方からオレに声がかかってきたのだ。
「は…」
由香の友だちではある高倉麻衣だけど、別にオレとは仲がいいとか特別話すような関係ではない。
そもそも他県から来たわけだから、秀明みたいな教室で話すぐらいな友だちしかオレにはいないわけだし。
だいたい学校から出たら、アパートかバイト先にしかいないわけなんだから。
「相川君、ちょっと…いいかな」
「え…と…。
由香も一緒?」
「由香は今日用事があるからって、先に帰ったみたい。
相川君は、今ちょっと話す事ってできる?」
…高倉麻衣がオレに話?
てゆーか、ホントはオレの方が聞きたい事があるくらいだ。
相手の男にはどんな風に言われたのかとか。
中絶にどんくらい費用がかかったのか……って、さすがにそんな事は訊けないけどな。
「…いいよ。
話って、どこで?」
「ん、できれば静かなとこがいいかも」
「…わかったよ」
教室を出ると、オレは高倉麻衣について歩いた。
いくつかの専攻科がある学校なので、オレたちは午前上がりでも他の生徒たちがどこかしらいて、なかなか静かって言える場所がない。
だもんで、結局高倉麻衣とはオレがバイトで行ってるファミレスで話す事になった。
「いらっしゃいませ!
お客様2名……って陸かよ!」
入り口のドアを開けて入った瞬間、出迎えてきた木原にツッコまれた。
「珍しいな、陸がファミレスで飯なんて。
な、由香ちゃ………」
当然木原は、オレと一緒に来ていたのは由香だと思っただろう。
ひょこっとオレの背後に顔を覗かせた木原の言葉は、驚いて途切れたようだ。
だいたいオレは、由香以外の女子と歩く事すらなかったからな。
「別にただのクラスメイトだよ。
勝手に空いてる席座るから、水運んで来いよな」
「あ、あぁ…」
そんなにビビるほどの事じゃないだろ。
オレは戸惑う木原をムシして、適当に禁煙席の方へと歩いて行った。
平日だけど昼真っ只中なのもあって、それなりに客もいる店内。
中には、オレたちみたいな午前中で学校が終わってそのままランチにって学生もいたりする。
オレは空いてるテーブルを見つけると、先にイスを引いて座った。
「…相川君、ここにはよく来てるの?」
オレより少し遅れて、高倉麻衣は向かいのイスに座った。
「来てるってゆーか、ここオレのバイト先だもん」
「そうなんだ…」
さっきよりも、急にしおらしくなったような高倉麻衣。
何なんだ?
「いらっしゃいませ、相川様。
ご注文お決まりになりましたら、こちらのボタンを押してお呼び下さい。
なんてねっ」
その時、ウエイトレスが盆に乗せて来た水をテーブルに置いた。
てゆーか、てっきり木原が来たのかと思ったら、別のバイトの子だったんだけど。
「はいはい。
お疲れさーん」
昼時だし、木原だってヒマじゃないもんな。
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