デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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付き合うのに、そんな条件が必要なのか?①

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風呂からあがると、適当にテレビをつけっぱなしにしながら、狭い布団の中で身を寄せ合うように由香と転がっていた。


普段ならこのタイミングでも、もう1回シてるとこだけど。
むしろあの現実を早く由香に納得してもらわなくちゃと、今もいつ切り出そうかソワソワしてる所だ。


んだけど…


『だって…もう赤ちゃんデキてるんだもん」』

『あたしと陸の赤ちゃん殺したいの!?』

『陸…大好き…』


あんな風に言ってた由香に、今更どうやって「諦めてくれ」って言えるか?
明らかに苦労するってわかってるのに、それでも産みたい なんて言ってたもんなぁ。


「…今日さぁ…」

そうだ。
子どもってのが如何に大変なものかを由香は知らないんだよ。
それさえ教えてやれば、由香だって諦めるさ!

「ん?」

「バイト先に、ちっこい子ども連れてる主婦とかいたんだけどさ」

「うん」

「子どもってアレだな。ウルサいし走り回るし、すぐ物壊すし。
スタッフ呼び出しのボタンとかイタズラしてホントマジ勘弁だったよ」


あんま意識して見なかった事なんだけどな。
こうして改めて子どもとか見ると、その怪獣振りにはマジビビるから。

由香だってまだ遊びたい年だろうし、何も急いで人生を怪獣に捧げたくもないだろ?


「やだぁ、陸ったら。
そんなの当たり前じゃない!」

「…へ?」

「まだ小さい子なら、それぐらい普通だよ?
それに、あたしや陸だって小さい頃はきっとそんなだったんだから」


…ビビるどころか、全く動じてない由香。

当たり前って!
そりゃそうかもしれないけど、でもそれが他人ごとじゃなくなるんだぞ?


「だけどさっ
オレたちみたいな若さじゃ、キツそうじゃない?
あんな怪獣、身体いくつあっても足りないって言うか…」

「え?若いから体力あっていいんじゃない?
ほら、昔は15でお嫁に行ってた時代もあったんでしょ」

「…………っ………っ」


由香の方が一枚上手じゃないか!
てゆーか、なんでちっともビビらないんだ。

子どもが子ども産んで育てようとしてんだぞ?


「…あ……。
オレたちみたいな若さじゃって、お金の心配だった?」

「…そう!それ!
結構…いろいろかかるんじゃないの?
ほら、えぇと…オムツ代とか…ミルク代?」


オレがホントに心配してんのは、この若さで既に子どもがいる人生という不安。
だけど由香はそんな事よりも、金銭的な方面を気にしたようだった。

いやもちろん、そういう心配も必要なんだけど。


「あたし…まだお母さんには言ってないんだけどね。
でもこんな事になっちゃって、絶対お母さんの助けは必要になると思うの」


まだ由香のおばさんは知らないんだ!

よかったぁ。
できれば誰にも知られないままで、上手く終わらせたい問題だもんな。


「じゃあ尚更ムリじゃないか!
おばさんに迷惑かけられないだろ?」

「ん…だけどね。うち、兄弟とかいなくて、あたし一人っ子なの。
だから、あたし女だけど家の名前とか継がなくちゃならなくて。
有富家の後継者をって、冗談混じりだけどよくお母さん言ってるのよ」

「は……」


後継者だなんて。
由香が一人っ子なのは知ってたけど。
まるでうちの母さんみたいな事を、まさか由香の口から聞くとは思わなかったな。

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