デ キ ちゃ っ た !?

むらさ樹

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何か悪い夢だと思ってんだけど…っ①

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「…陸っ
おい、陸!」

「…はっ!
え、えっと?」


あれから。
どうやらバイト仲間の木原に肘でどつかれたようで、オレはようやくハッとした。

そうだ、今バイト中だっけ!


まだ昼のピークになる前の11時。

早い昼ご飯なのか遅い間食なのか知らないが、客が来たのにオレは案内もしないでボーっと突っ立っていたようだ。




「い、いらっしゃいませ。
お客様2名様、禁煙席ですか?喫煙席ですか?」


慌てて接客に走ると、とりあえず客を席に案内しお冷やを置いて一旦厨房の方にと戻った。



「………………ふぅ」

「ふぅ、じゃないよ。
なに物思いにふけってたんだ、陸?」


木原にダメ出しされ、オレは返事に詰まった。


いつもバイトでは元気ハツラツなオレだから、木原も心配してくるわけだ。


「いやぁ…いろいろありまして…ね」


実は彼女をはらませてしまって、人生最大のピンチなんです!…なんてまさか言えるわけもない。



結局あの後、バイトを理由に由香には早めに帰ってもらった。

いつもならバイトに行くギリギリまでイチャイチャしてるハズだったんだけど、さすがにもうそんな空気にはなれない。


ましてや一緒に病院に行く約束までしちゃったわけだし、ちょっと1人になって冷静に考えたかったってのもあったわけだ。


…なんて言いつつ、由香に帰ってもらった後は1人になれたものの。

あまりにも受け入れがたい現実に頭がついて行かず、時間ばかりが経ってしまっていたのは言うまでもなかった。



何にしても、まず言える事は…

…もっと気を付けとけばよかった。
オレのバカ!!

て事だ。


本当なら今日はバイトなんてしたくない。
今後の事をリアルに考えていたい。

まだ病院でちゃんとした診断をされたわけじゃないけど、でも由香の話を聞く限りは恐らくは間違いないだろう。


だが問題はその後だ。



…と言っても、オレの中じゃあ答えは決まってる。


絶対、ムリだから。


だって、まずオレたちは学生だろ?
卒業までに後1年はある。

それに、今のオレには金銭的にだって全く余裕はない。

自分の生活だって上手くやりくりしてやってるってのに、他人の事にかけてやる金とかあるわけがない。



…って。
他人なんて言い方、由香が聞いたら怒るんだろうなぁ。


とにかく。
由香には悪いけど、今回はオレが悪かったって事で諦めてもらうしかないさ。



――『…おろしちゃったよ。
 親にも言わないまま、秘密でね』



ドキリ


今朝、由香の言ってた言葉を思い出した。


…オレ、由香におろしてくれって言えるのかな…っ
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