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「そりゃそうと、知ってるか?
俺な、世間に顔が割れちまったんだ」
ドキン とした。
監視カメラの映像から素顔がバレちゃったのは夕方のニュースで見たから私は知っていた。
今話している最中も、テレビはついていて深夜番組をやっている。
私より先に起きていた強盗さんなら、その間にニュースを見たのかもしれない。
強盗さんには知ってほしくなかった。
ますます捕まっちゃう可能性が高くなっちゃったんだもんね。
それでなくても、ここのアパートはあの銀行から割と近い位置にある。
かくまってられるのにも限界があるかもしれない…。
「強盗さん…出て行っちゃうの?」
「さぁな」
「絶対いや!
捕まっちゃうのもいやだけど、私の前からいなくなっちゃうのはもっといやだよ!」
くるまった毛布の中で、私は強盗さんの身体にギュッと抱きついた。
ずっと一緒に居られると思ってたのに。
やっと結ばれたばかりなのに。
私は…強盗さんと別れたくないよぉ!
私と強盗さんの出会いは間違いなく事件の中であり、尚且つ事故である。
本来なら好きになる筈もなかった環境と状況。
だけど、私たちは出会っちゃったし好きになっちゃった。
今更別れなきゃならないなんて、そんなの辛すぎるよ…。
「心配すんなよ。
俺はお前の所にずっといるさ。
…たとえ離れたとしても、必ず戻って来る」
じっと私を見つめる強盗さん。
私も涙で歪んだ強盗さんを見つめる。
そっと目を閉じると溜まった涙がポロとこぼれ落ち、同時に2人の唇が合わさった。
愛してる。
たとえ犯罪者でも、私は強盗さんを心から愛してる。
くるまった毛布の中で、強盗さんが私の胸に優しく触れた。
「…もう一回、していいか?」
「ん…
まだちょっと痛いんだけど…」
「そっか。じゃ今はいいや。
…あー、何か喉が渇いたな」
「あ。じゃあ私、お茶入れるね」
私は毛布から出ると、ベッドの下に落ちた服を着てお茶の支度をした。
一緒に居るって言ってくれたんだ。
だから私は…安心していた。
ピピピピピピピ…♪
ベッドサイドの時計のアラームが鳴ったので、すぐに止めて起きた。
「ふぁ……」
あくびをしながらベッドから下りると、強盗さんも目を覚ました。
「おはよ」
「あぁ…」
夜中に目を覚まして一緒にお茶を飲んだ後は、すぐにまた一緒にベッドに入った。
ぽかぽか身体があったまった中で強盗さんの腕枕が気持ちよくって、案外すぐに寝ちゃったな。
「6時か…」
時計を見た強盗さんは、頭を掻きながらまだベッドの上で目をつむっている。
「もうちょっと寝てていいよ。
朝ご飯、作るから」
「いや、寝過ぎてダルいから起きるわ…」
もそもそとベッドから起き上がる強盗さん。
夜中に目は覚めちゃっても、早くから寝たんだから睡眠は足りすぎちゃってるかな?
そういえば、体調はもう良いみたいだね。
ヒドくならなくて本当によかったよぉ。
「…で。
これが朝メシか?」
ロクな食材が揃わないうちのキッチンで作った朝ご飯ってのが、ホットケーキ…だった。
しかも卵も牛乳もまだ買ってなかったから、粉を水で溶いただけ。
ホットケーキの甘い香りが部屋の中を充満した。
「だってここに越して、まだまともな買い物行ってないんだもん」
「野菜はあるのにな」
「…お肉とかより野菜の方が好きだし…」
「それで野菜の次がケーキミックスなんだな」
あれは非常食として実家から持ってきたもの。
少々置いといても腐らないし、食べたい時にパッと作れてホントお手軽だもんね。
「…ごめんなさい。
こんなんじゃご飯にならない…よね…」
男の人なら、朝からでももっとガッツリ食べたいって感じなのかも。
私はそんなに朝から食べないから、こんなんでも全然いいんだけどなぁ。
「…フッ。
いいよ、お前が作ったんなら何でも食うから」
…わ。
なんか…初めてまともに笑ったとこ見たかも。
何の文句も言わないで、水だけで作ったホットケーキとコーヒーの朝ご飯を食べてくれた強盗さん。
私も一緒に食べてコーヒーで、もうお腹いっぱいになっちゃう。
適当に片付けた後、私は服を着替えて昨日干した強盗さんの服を取り込む。
「うん、まぁまぁ乾いてるよね」
「そうだな。
いい加減何か着ないと、ずっと毛布じゃな」
この強盗さんの服は、犯行当時のものと同じ。
南は1人で勝手に着替えたりしたみたいだけど、いくら家から出ないだろうったって、犯行当時の服をずっと着させるわけにはいかないわ。
「私、今日から仕事行くね。
もう初日からずっと休んでるわけだから…さすがにこれ以上はクビになっちゃう」
「仕事って、何やってるんだったっけ?」
「本屋さんの店員だよ。
やってるって言うか、今からやるって感じなんだけど」
…本当なら、その隣の銀行に勤める筈だったんだよって事は、強盗さんには黙っとこ。
俺な、世間に顔が割れちまったんだ」
ドキン とした。
監視カメラの映像から素顔がバレちゃったのは夕方のニュースで見たから私は知っていた。
今話している最中も、テレビはついていて深夜番組をやっている。
私より先に起きていた強盗さんなら、その間にニュースを見たのかもしれない。
強盗さんには知ってほしくなかった。
ますます捕まっちゃう可能性が高くなっちゃったんだもんね。
それでなくても、ここのアパートはあの銀行から割と近い位置にある。
かくまってられるのにも限界があるかもしれない…。
「強盗さん…出て行っちゃうの?」
「さぁな」
「絶対いや!
捕まっちゃうのもいやだけど、私の前からいなくなっちゃうのはもっといやだよ!」
くるまった毛布の中で、私は強盗さんの身体にギュッと抱きついた。
ずっと一緒に居られると思ってたのに。
やっと結ばれたばかりなのに。
私は…強盗さんと別れたくないよぉ!
私と強盗さんの出会いは間違いなく事件の中であり、尚且つ事故である。
本来なら好きになる筈もなかった環境と状況。
だけど、私たちは出会っちゃったし好きになっちゃった。
今更別れなきゃならないなんて、そんなの辛すぎるよ…。
「心配すんなよ。
俺はお前の所にずっといるさ。
…たとえ離れたとしても、必ず戻って来る」
じっと私を見つめる強盗さん。
私も涙で歪んだ強盗さんを見つめる。
そっと目を閉じると溜まった涙がポロとこぼれ落ち、同時に2人の唇が合わさった。
愛してる。
たとえ犯罪者でも、私は強盗さんを心から愛してる。
くるまった毛布の中で、強盗さんが私の胸に優しく触れた。
「…もう一回、していいか?」
「ん…
まだちょっと痛いんだけど…」
「そっか。じゃ今はいいや。
…あー、何か喉が渇いたな」
「あ。じゃあ私、お茶入れるね」
私は毛布から出ると、ベッドの下に落ちた服を着てお茶の支度をした。
一緒に居るって言ってくれたんだ。
だから私は…安心していた。
ピピピピピピピ…♪
ベッドサイドの時計のアラームが鳴ったので、すぐに止めて起きた。
「ふぁ……」
あくびをしながらベッドから下りると、強盗さんも目を覚ました。
「おはよ」
「あぁ…」
夜中に目を覚まして一緒にお茶を飲んだ後は、すぐにまた一緒にベッドに入った。
ぽかぽか身体があったまった中で強盗さんの腕枕が気持ちよくって、案外すぐに寝ちゃったな。
「6時か…」
時計を見た強盗さんは、頭を掻きながらまだベッドの上で目をつむっている。
「もうちょっと寝てていいよ。
朝ご飯、作るから」
「いや、寝過ぎてダルいから起きるわ…」
もそもそとベッドから起き上がる強盗さん。
夜中に目は覚めちゃっても、早くから寝たんだから睡眠は足りすぎちゃってるかな?
そういえば、体調はもう良いみたいだね。
ヒドくならなくて本当によかったよぉ。
「…で。
これが朝メシか?」
ロクな食材が揃わないうちのキッチンで作った朝ご飯ってのが、ホットケーキ…だった。
しかも卵も牛乳もまだ買ってなかったから、粉を水で溶いただけ。
ホットケーキの甘い香りが部屋の中を充満した。
「だってここに越して、まだまともな買い物行ってないんだもん」
「野菜はあるのにな」
「…お肉とかより野菜の方が好きだし…」
「それで野菜の次がケーキミックスなんだな」
あれは非常食として実家から持ってきたもの。
少々置いといても腐らないし、食べたい時にパッと作れてホントお手軽だもんね。
「…ごめんなさい。
こんなんじゃご飯にならない…よね…」
男の人なら、朝からでももっとガッツリ食べたいって感じなのかも。
私はそんなに朝から食べないから、こんなんでも全然いいんだけどなぁ。
「…フッ。
いいよ、お前が作ったんなら何でも食うから」
…わ。
なんか…初めてまともに笑ったとこ見たかも。
何の文句も言わないで、水だけで作ったホットケーキとコーヒーの朝ご飯を食べてくれた強盗さん。
私も一緒に食べてコーヒーで、もうお腹いっぱいになっちゃう。
適当に片付けた後、私は服を着替えて昨日干した強盗さんの服を取り込む。
「うん、まぁまぁ乾いてるよね」
「そうだな。
いい加減何か着ないと、ずっと毛布じゃな」
この強盗さんの服は、犯行当時のものと同じ。
南は1人で勝手に着替えたりしたみたいだけど、いくら家から出ないだろうったって、犯行当時の服をずっと着させるわけにはいかないわ。
「私、今日から仕事行くね。
もう初日からずっと休んでるわけだから…さすがにこれ以上はクビになっちゃう」
「仕事って、何やってるんだったっけ?」
「本屋さんの店員だよ。
やってるって言うか、今からやるって感じなんだけど」
…本当なら、その隣の銀行に勤める筈だったんだよって事は、強盗さんには黙っとこ。
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