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「待て。
女を連れて逃げるってんじゃないか?
お前らの仲は今更隠せると思うなよ。
そんなに言うのなら、まず先に女をここで殺ってみろ」
南は強盗さんの言葉を疑ったようだった。
私を連れて逃げる?
まさか、強盗さんはそんな事考えてはないだろう。
仮にそうだったとしても、私も南の思う通り、強盗さんの言葉を疑うだろうな。
でももし強盗さんが本気で言ったなら、今から私はここで殺されるわけだ…。
「待てよ。
ケータイを取り戻しに行って俺がそのまま逃げる可能性だってあるよな?
俺がこの女とグルだってんなら、むしろ女は生かしたまま置いていく。
それこそ、人質としてだ」
「ほぉ…」
「俺が無事にケータイを持って帰ったら、その時は女を殺すなり何なりすればいい。
…どうだ?」
…強盗さん…。
息を切らしながら本気の顔で言う強盗さんに、私はもう言葉も出なかった。
それから私は手を後ろにまわされ、ロープで胴を腕ごとグルグル巻きにされた。
「痛ぁ…ぃっ」
胴まわりだけじゃない、両膝も合わせられると同じようにロープで縛られる。
「逃げないように、しっかりしとかねぇとな」
ギュッとロープを縛りながら南が言った。
「お前も裏切って逃げかねんからな」
南は強盗さんにもイヤミっぽく言った。
「フン。
俺だって金は惜しいからな。
さっさとケータイを取り戻したら、金を貰いに来るさ」
強盗さんは自分の落としたケータイを取りに行き、またここまで戻ってくる。
そうすれば強盗で得た3億円は南と山分けになるみたい。
もちろん、その間に強盗さんが警察に捕まったらそこでおしまい。
だけど、無事に強盗さんが戻って来ようと、その前に警察に捕まろうとも、私の運命は変わらないんだ…。
「じゃ、これが車の鍵、そしてこっちがワゴン車の方のスペアキーだ」
南は強盗さんに2つの車の鍵を渡した。
「ここを真っすぐ下りた辺りに俺の車が置いてある」
鍵を受け取り、黙ったまま強盗さんは小屋のドアを開けて外に出た。
外はすっかりオレンジ色に染まっていた。
時間はわからないけど、恐らく17時は過ぎているだろう。
「明日の昼までに戻らなければ、お前は逃げたものと判断させてもらうからな」
「…勝手にしろ」
強盗さんは小屋から離れ、1人山をおりて行った。
足取りは何だかおぼつかない。
そうよ、まだ体調が悪い筈だもの。
なのに南の奴ったら!
強盗さんの姿はどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
強盗さんは…南から失った信用と、強盗した大金を得る為に行ってしまった。
…私は強盗さんの人質だったのに、更に南の人質にもなってしまったんだ…。
女を連れて逃げるってんじゃないか?
お前らの仲は今更隠せると思うなよ。
そんなに言うのなら、まず先に女をここで殺ってみろ」
南は強盗さんの言葉を疑ったようだった。
私を連れて逃げる?
まさか、強盗さんはそんな事考えてはないだろう。
仮にそうだったとしても、私も南の思う通り、強盗さんの言葉を疑うだろうな。
でももし強盗さんが本気で言ったなら、今から私はここで殺されるわけだ…。
「待てよ。
ケータイを取り戻しに行って俺がそのまま逃げる可能性だってあるよな?
俺がこの女とグルだってんなら、むしろ女は生かしたまま置いていく。
それこそ、人質としてだ」
「ほぉ…」
「俺が無事にケータイを持って帰ったら、その時は女を殺すなり何なりすればいい。
…どうだ?」
…強盗さん…。
息を切らしながら本気の顔で言う強盗さんに、私はもう言葉も出なかった。
それから私は手を後ろにまわされ、ロープで胴を腕ごとグルグル巻きにされた。
「痛ぁ…ぃっ」
胴まわりだけじゃない、両膝も合わせられると同じようにロープで縛られる。
「逃げないように、しっかりしとかねぇとな」
ギュッとロープを縛りながら南が言った。
「お前も裏切って逃げかねんからな」
南は強盗さんにもイヤミっぽく言った。
「フン。
俺だって金は惜しいからな。
さっさとケータイを取り戻したら、金を貰いに来るさ」
強盗さんは自分の落としたケータイを取りに行き、またここまで戻ってくる。
そうすれば強盗で得た3億円は南と山分けになるみたい。
もちろん、その間に強盗さんが警察に捕まったらそこでおしまい。
だけど、無事に強盗さんが戻って来ようと、その前に警察に捕まろうとも、私の運命は変わらないんだ…。
「じゃ、これが車の鍵、そしてこっちがワゴン車の方のスペアキーだ」
南は強盗さんに2つの車の鍵を渡した。
「ここを真っすぐ下りた辺りに俺の車が置いてある」
鍵を受け取り、黙ったまま強盗さんは小屋のドアを開けて外に出た。
外はすっかりオレンジ色に染まっていた。
時間はわからないけど、恐らく17時は過ぎているだろう。
「明日の昼までに戻らなければ、お前は逃げたものと判断させてもらうからな」
「…勝手にしろ」
強盗さんは小屋から離れ、1人山をおりて行った。
足取りは何だかおぼつかない。
そうよ、まだ体調が悪い筈だもの。
なのに南の奴ったら!
強盗さんの姿はどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
強盗さんは…南から失った信用と、強盗した大金を得る為に行ってしまった。
…私は強盗さんの人質だったのに、更に南の人質にもなってしまったんだ…。
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