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強盗さんの顔色は悪く、荒い息づかいをしている。
多分まだ熱があって具合が悪いのよ。
そんな状態で襲いかかったものだから、南に形勢を逆転されたんだわ。
「…オイオイ、人質は殺ったんじゃなかったのか?
まさかお前、こんな小娘に情が移って逃がしたってんじゃないだろうなぁ。」
南の言葉に、強盗さんは何も答えず黙って私の方を見た。
「あれだけ俺の足を引っ張っておいて、今度は人質を逃がすだ?
どんだけバカなんだお前はっ!
お前みたいな奴は死んだ方がいい。そうだろ?」
南が持っていたナイフを強盗さんの喉元に突き付けた。
強盗さんもキッと南を睨む。
「や やめて!
強盗さんを殺さないで!」
私は、床に転がっている拳銃を見つけた。
多分2人のどちらかのもので、もみ合ってるうちに落としたに違いない。
…これは、一か八かだよね…!
南が強盗さんの方に視線を向けてる時、私は勇気を出して床に落ちている拳銃の側まで走り、急いで拾い上げた。
「!」
そんな私の動きに2人は驚いて私の方を見たが、南はまだナイフを強盗さんの喉元から離さない。
「…何をやってんだ?」
南が私の方を見ながら言った。
拳銃の使い方なんて知らない。
ましてや触った事も見た事も生まれて初めてだ。
洋画や刑事ドラマの見よう見まねで持って、私は南に向かって構える。
拳銃。
それは人を簡単に殺める事が出来る、法律で管理されている凶器。
それを今、私は人に向かって構えているんだ…!
「バカ!
そんな事してねぇで早く逃げろ!」
ナイフを当てられたまま強盗さんは私に言った。
この期に及んで、まだ私の心配をしてくれる。
でも、私だって強盗さんを助けたい!
その為だったらこんな凶悪犯、私の手で…!
「何だお前。
そんな物で俺を殺ろうってのか?」
「いいから!
早く逃げろって言ってんだろうが!!」
2人の強盗犯が私に向かって言い放つ。
確かに、私みたいなのがこんな凶器を持てば言われるのも自分でわかる。
でも、それで強盗さんが死なずに済むなら、私は迷わず手を汚したい…!
ドラマのワンシーンみたいに、拳銃の上側にある物をスライドさせる。
これで弾が中に送り込まれた…ハズ。
それから、引き金に指をかける。
…これを引けば、弾は真っすぐ南に向かって撃たれる。
だけど…
「どうした?
早く撃ってみろよ。俺を殺るんだろ?」
ニヤニヤと南は余裕の表情で私を見下ろす。
私は…足と手がガクガクと震えだし、照準が定まらない。
間違って撃って、もし強盗さんにでも当たったら…!
「早く逃げろって!!
そいつはよく出来たレプリカなんだ!
撃てやしねぇんだ、いいから早く逃げろ!!」
聴覚まで朦朧としてきた中、私は耳を疑うようなそんな強盗さんの声までもが聞こえた。
…え、レプリカ……?
じゃあこの拳銃は…偽物って事!?
じゃあ一昨日強盗に入った時、偽物の拳銃だったって事なの?
私は、撃てない拳銃を突き付けられて怯えていたんだ…!
クラクラとめまいがし、私は拳銃を構えたままその場にへたり込んだ。
「…だから、さっさと逃げろって言ったじゃないか…っ!」
「ははっ!残念だったなぁ!
つーか、何だお前ら。
まさかデキてんのか?
それともハナからグルだったか」
南は私をバカにしたような顔で言った。
ううん、バカよ。
何も出来ないクセして飛び込んできて…。
私は強盗さんを助けてあげる事も出来なければ、せっかく逃がしてくれたのにそれも出来なくなった。
私は…何も出来ないまま南に殺されちゃうんだわ!
ポロポロと、涙がこぼれてきた…。
「2人も殺るのは気がすすまねぇが、お前らがそんな関係なら仕方ねぇよな」
どうしよう… どうしよう…
どうしたらいいの?
凶器を突きつけられてちゃどうしようもない。
南が殺さないでくれる方法って、何かないの?
「南…、俺がケータイを落としたのも顔を見られたのも、それは俺が悪かったと思っている」
未だナイフを突き付けられている強盗さんは南に話し始めた。
「だから…これからそのケータイを見つからないよう取りに行くし、この人質の女も俺が殺る。
…それで許してくれないか?」
耳を疑った。
強盗さんは、私を………
「はっ
自分のケツは自分で拭くって言うのか。
それもいいだろ」
「そうか。
だったら、俺を離してくれ。
女を殺ってケータイも取りに行く。
金は戻った時に、少し分けてくれたらいい」
私は…強盗さんに殺されちゃうんだ。
ま…いっか。
南に殺されるよりは断然マシ。
私だって強盗さんに色々迷惑かけちゃったもん。
強盗さんにだったら、殺されても…いっかぁ。
多分まだ熱があって具合が悪いのよ。
そんな状態で襲いかかったものだから、南に形勢を逆転されたんだわ。
「…オイオイ、人質は殺ったんじゃなかったのか?
まさかお前、こんな小娘に情が移って逃がしたってんじゃないだろうなぁ。」
南の言葉に、強盗さんは何も答えず黙って私の方を見た。
「あれだけ俺の足を引っ張っておいて、今度は人質を逃がすだ?
どんだけバカなんだお前はっ!
お前みたいな奴は死んだ方がいい。そうだろ?」
南が持っていたナイフを強盗さんの喉元に突き付けた。
強盗さんもキッと南を睨む。
「や やめて!
強盗さんを殺さないで!」
私は、床に転がっている拳銃を見つけた。
多分2人のどちらかのもので、もみ合ってるうちに落としたに違いない。
…これは、一か八かだよね…!
南が強盗さんの方に視線を向けてる時、私は勇気を出して床に落ちている拳銃の側まで走り、急いで拾い上げた。
「!」
そんな私の動きに2人は驚いて私の方を見たが、南はまだナイフを強盗さんの喉元から離さない。
「…何をやってんだ?」
南が私の方を見ながら言った。
拳銃の使い方なんて知らない。
ましてや触った事も見た事も生まれて初めてだ。
洋画や刑事ドラマの見よう見まねで持って、私は南に向かって構える。
拳銃。
それは人を簡単に殺める事が出来る、法律で管理されている凶器。
それを今、私は人に向かって構えているんだ…!
「バカ!
そんな事してねぇで早く逃げろ!」
ナイフを当てられたまま強盗さんは私に言った。
この期に及んで、まだ私の心配をしてくれる。
でも、私だって強盗さんを助けたい!
その為だったらこんな凶悪犯、私の手で…!
「何だお前。
そんな物で俺を殺ろうってのか?」
「いいから!
早く逃げろって言ってんだろうが!!」
2人の強盗犯が私に向かって言い放つ。
確かに、私みたいなのがこんな凶器を持てば言われるのも自分でわかる。
でも、それで強盗さんが死なずに済むなら、私は迷わず手を汚したい…!
ドラマのワンシーンみたいに、拳銃の上側にある物をスライドさせる。
これで弾が中に送り込まれた…ハズ。
それから、引き金に指をかける。
…これを引けば、弾は真っすぐ南に向かって撃たれる。
だけど…
「どうした?
早く撃ってみろよ。俺を殺るんだろ?」
ニヤニヤと南は余裕の表情で私を見下ろす。
私は…足と手がガクガクと震えだし、照準が定まらない。
間違って撃って、もし強盗さんにでも当たったら…!
「早く逃げろって!!
そいつはよく出来たレプリカなんだ!
撃てやしねぇんだ、いいから早く逃げろ!!」
聴覚まで朦朧としてきた中、私は耳を疑うようなそんな強盗さんの声までもが聞こえた。
…え、レプリカ……?
じゃあこの拳銃は…偽物って事!?
じゃあ一昨日強盗に入った時、偽物の拳銃だったって事なの?
私は、撃てない拳銃を突き付けられて怯えていたんだ…!
クラクラとめまいがし、私は拳銃を構えたままその場にへたり込んだ。
「…だから、さっさと逃げろって言ったじゃないか…っ!」
「ははっ!残念だったなぁ!
つーか、何だお前ら。
まさかデキてんのか?
それともハナからグルだったか」
南は私をバカにしたような顔で言った。
ううん、バカよ。
何も出来ないクセして飛び込んできて…。
私は強盗さんを助けてあげる事も出来なければ、せっかく逃がしてくれたのにそれも出来なくなった。
私は…何も出来ないまま南に殺されちゃうんだわ!
ポロポロと、涙がこぼれてきた…。
「2人も殺るのは気がすすまねぇが、お前らがそんな関係なら仕方ねぇよな」
どうしよう… どうしよう…
どうしたらいいの?
凶器を突きつけられてちゃどうしようもない。
南が殺さないでくれる方法って、何かないの?
「南…、俺がケータイを落としたのも顔を見られたのも、それは俺が悪かったと思っている」
未だナイフを突き付けられている強盗さんは南に話し始めた。
「だから…これからそのケータイを見つからないよう取りに行くし、この人質の女も俺が殺る。
…それで許してくれないか?」
耳を疑った。
強盗さんは、私を………
「はっ
自分のケツは自分で拭くって言うのか。
それもいいだろ」
「そうか。
だったら、俺を離してくれ。
女を殺ってケータイも取りに行く。
金は戻った時に、少し分けてくれたらいい」
私は…強盗さんに殺されちゃうんだ。
ま…いっか。
南に殺されるよりは断然マシ。
私だって強盗さんに色々迷惑かけちゃったもん。
強盗さんにだったら、殺されても…いっかぁ。
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