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私はようやくもらったあんパンを手に取って見た。
さて、こんな薄汚い小屋にあったパン。
…賞味期限とか大丈夫かなぁ。
強盗犯だって、一瞬だって私から目を離さないわけじゃない。
ほんの少しでも視線から外れた隙に、袋を開ける振りをしながら裏の賞味期限欄をチェックしてみた。
ええっと、賞味期限は4月3日。
あれ?今日は3月の31日だ。
まさか1年前のパン?
なんてそんなわけない。
だとすると…これって買ったばかりじゃない?
今日車から降りてここまで来るのに、強盗犯は手ぶらだった。
なのにこの小屋にこんな新しいパンが置いてあるなんて…。
もしかして、この人ここに住んでるのかな。
こんなお風呂もトイレもないような所に…?
「何だよ!人の顔ジロジロ見て!
いらねぇんならいらねぇって言えばいいだろ!!」
私の視線を勘違いした強盗犯は、怒鳴って立ち上がった。
…立ち上がって何をするのかと思えば、壁の端に立って腕を組んだだけ。
逆ギレして撃たれるかも…とも思ったけど、でも何でだろう、この人はそんな事しないって何となく感じた。
で、案の定そうだったんだけど。
私はあんパンの包みを開けて、パクッとかぶりついた。
「……………美味しい」
強盗犯はフンと私の方から視線をそらすと、黙ってよそを見ている。
2口、3口と口に運び、お腹が空いていたのもあって、私はあっという間に完食してしまった。
そして包みの袋を縦に細く折って、それをクルッと紐のように括って床に置いた。
「あの…ごちそうさま…」
一応頂いちゃったわけだから、食べ終わった後もごちそうさまを言った。
すると強盗犯は更にフンッと鼻を鳴らした。
何だか…変な感じ。
あんまり悪い人じゃないみたいだから、恐い気持ちが薄れていくみたいだ。
あんパンを食べ終わると、また小屋の中では沈黙が始まった。
聞こえてくるのは、つけっぱなしのラジオのニュースだけ。
銀行強盗のニュースはあれ1回切りで、その後は他の小さな事件やら地域の微笑ましいニュースばかりだった。
多分、この銀行強盗の事件で新しい展開はまだないんだろう。
それもそうだろう。
犯人の1人と人質の私は、ずっとこの山小屋の中に居るんだから。
そういえば…もう1人の強盗犯はどうなったんだろうか。
「…遅いな。
まさか捕まったとか…」
茶髪の強盗犯は、小屋のドアを時折開けては外の様子を見ている。
その様子を見るからに、恐らくもう1人の強盗犯を心配しているんだと思う。
車から降りる際、
撒いたら行く。
先に行って待ってる。
そんなやりとりをしていたような気がした。
うん、確かそう。
だからもう1人の強盗犯は、この山小屋に来る筈なんだ。
もしあの後もう1人の強盗犯が警察に捕まっていたら、当然ここには来れないのが当たり前。
でももしそうなら、ラジオのニュースから速報が流れてもいい筈だ。
撒くつもりで走らせたが、かえってここに来れない事情が出来た場合だってあるだろう。
どんな事情があるにせよ、私にはあんまり関係ない。
むしろニュースで速報やってくれる事を祈ろう…。
…待てよ。
もし、もう1人の強盗犯が捕まったとニュースで聞いたら…この茶髪の強盗犯はどうするんだろう。
私は、いつまでこうしていなければならないのかな。
もう1人の強盗犯が捕まれば、当然ここの場所を言うだろう。
そうすると、警察がここにやって来る。
そうなったら…今度はここに立てこもって持久戦になる。
そして時間と共に追い詰められた茶髪の強盗犯は人質の私を………
いやぁ!
そんな事になるくらいなら、もう1人の強盗犯なんか見つからなきゃいい。
あでも、そうするとここの場所が警察にわからない…。
あぁんもう!
どうなったらいいのか自分でもわからないよぉぉ!!
さて、こんな薄汚い小屋にあったパン。
…賞味期限とか大丈夫かなぁ。
強盗犯だって、一瞬だって私から目を離さないわけじゃない。
ほんの少しでも視線から外れた隙に、袋を開ける振りをしながら裏の賞味期限欄をチェックしてみた。
ええっと、賞味期限は4月3日。
あれ?今日は3月の31日だ。
まさか1年前のパン?
なんてそんなわけない。
だとすると…これって買ったばかりじゃない?
今日車から降りてここまで来るのに、強盗犯は手ぶらだった。
なのにこの小屋にこんな新しいパンが置いてあるなんて…。
もしかして、この人ここに住んでるのかな。
こんなお風呂もトイレもないような所に…?
「何だよ!人の顔ジロジロ見て!
いらねぇんならいらねぇって言えばいいだろ!!」
私の視線を勘違いした強盗犯は、怒鳴って立ち上がった。
…立ち上がって何をするのかと思えば、壁の端に立って腕を組んだだけ。
逆ギレして撃たれるかも…とも思ったけど、でも何でだろう、この人はそんな事しないって何となく感じた。
で、案の定そうだったんだけど。
私はあんパンの包みを開けて、パクッとかぶりついた。
「……………美味しい」
強盗犯はフンと私の方から視線をそらすと、黙ってよそを見ている。
2口、3口と口に運び、お腹が空いていたのもあって、私はあっという間に完食してしまった。
そして包みの袋を縦に細く折って、それをクルッと紐のように括って床に置いた。
「あの…ごちそうさま…」
一応頂いちゃったわけだから、食べ終わった後もごちそうさまを言った。
すると強盗犯は更にフンッと鼻を鳴らした。
何だか…変な感じ。
あんまり悪い人じゃないみたいだから、恐い気持ちが薄れていくみたいだ。
あんパンを食べ終わると、また小屋の中では沈黙が始まった。
聞こえてくるのは、つけっぱなしのラジオのニュースだけ。
銀行強盗のニュースはあれ1回切りで、その後は他の小さな事件やら地域の微笑ましいニュースばかりだった。
多分、この銀行強盗の事件で新しい展開はまだないんだろう。
それもそうだろう。
犯人の1人と人質の私は、ずっとこの山小屋の中に居るんだから。
そういえば…もう1人の強盗犯はどうなったんだろうか。
「…遅いな。
まさか捕まったとか…」
茶髪の強盗犯は、小屋のドアを時折開けては外の様子を見ている。
その様子を見るからに、恐らくもう1人の強盗犯を心配しているんだと思う。
車から降りる際、
撒いたら行く。
先に行って待ってる。
そんなやりとりをしていたような気がした。
うん、確かそう。
だからもう1人の強盗犯は、この山小屋に来る筈なんだ。
もしあの後もう1人の強盗犯が警察に捕まっていたら、当然ここには来れないのが当たり前。
でももしそうなら、ラジオのニュースから速報が流れてもいい筈だ。
撒くつもりで走らせたが、かえってここに来れない事情が出来た場合だってあるだろう。
どんな事情があるにせよ、私にはあんまり関係ない。
むしろニュースで速報やってくれる事を祈ろう…。
…待てよ。
もし、もう1人の強盗犯が捕まったとニュースで聞いたら…この茶髪の強盗犯はどうするんだろう。
私は、いつまでこうしていなければならないのかな。
もう1人の強盗犯が捕まれば、当然ここの場所を言うだろう。
そうすると、警察がここにやって来る。
そうなったら…今度はここに立てこもって持久戦になる。
そして時間と共に追い詰められた茶髪の強盗犯は人質の私を………
いやぁ!
そんな事になるくらいなら、もう1人の強盗犯なんか見つからなきゃいい。
あでも、そうするとここの場所が警察にわからない…。
あぁんもう!
どうなったらいいのか自分でもわからないよぉぉ!!
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