3億円の強盗犯と人質の私⁉(ラブサスペンス)

むらさ樹

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強盗犯は私に銃口を向けたまま、立ち上がった。


んもぉ!
いちいち拳銃なんか突きつけなくても、目の前で逃げたりしないのにっ。



強盗犯は小屋の中にある箱の中から何やらビニール袋をガサガサさせる音をたてながら何かを取り出した。


ランプの灯り1つじゃあ手元がよく見えなくて、何を持っているのかはわからない。


まさか…スタンガンみたいなものじゃないよね…?



得体のわからないものを持つ強盗犯に、今一度恐怖感が襲ってきた。


変な器具とか武器だったらどうしよう…。

私…今から何されるの…?





「ほらよ」



強盗犯は持っていた得体のわからない何かを、ポンと私に投げた。



「わっ」



丸っこい、ビニール袋のような物に入ったそれは座っている私のスカートの上に着地する。


まさか、変な薬…?
…ううん、違う。


「これ…」


スカートの上を見ると、そこに投げ込まれたのはコンビニに売っているようなパンだった。

丸い形のパンで、まん中にゴマが乗ってる…あんパンだ!



強盗犯が…人質の私にあんパンなんか…。



あんパンから強盗犯の方に視線を移すと、強盗犯は別のパンを早くも口に入れていた。



「何だよ。
食わねぇのか」



「あ…えっと…。
手が…」



私の腕は、強盗犯にロープで身体ごとグルグル巻きにされているから自分じゃあパンを開けて食べるって事が出来ない。


自分で縛っておいて忘れていたらしい強盗犯は、ようやく気付いたようで照れ隠しにか小さく舌打ちをした。



「しょうがねぇな…っ」



強盗犯は食べかけのパンを口に挟むと、私の身体に巻いたロープを外し始めた。

ロープだからなかなか外れないもんだけど、私があんまり抵抗しなかったからそんなに締まってなかったみたい。




え、て言うか人質にパンを与えた上に、その為に縛ってたロープまで外しちゃうの?



ギュッと縛られていたロープを外されると、巻き付いていた部分の血が圧迫から解放されて一気に流れたような感覚になった。


やっぱりロープの痕は食い込んでいたから多少は痛い。


だけど、外してくれただけもちろんありがたいってものよね。





ようやく自由を取り戻した私はさっそくあんパンに手をかけようとした。

すると、



「ちょっと待て。まだ終わってない。
足出せ」



スカートに隠れた足を引っ張り出されると、今度は両足首をさっきのロープでグルグルに縛られた。



あ。
タダじゃ解放してくれないのね。

ま、当たり前かぁ。



「つまんねぇ事は考えるなよ。
さっさと食え」



口にくわえたパンを手に持ち替えると、強盗犯は私から離れてまた向かいに座った。



「あ ありがと…」



あんパンの袋を持つと、つい強盗犯にお礼を言ってしまった。


何言ってんのよ私ったら。
こんな犯罪者にお礼言うなんて!


だけど…めちゃめちゃ悪い人って感じがしない。
むしろ…何か優しい?


この人…本当に今日、銀行強盗をしたの?って感じ。

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