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●あたし、やっぱりやめられません!
しおりを挟む「まどかー、一緒に帰ろー」
__月曜日の放課後
部活に入っていないあたしは、同じく帰宅部の琴乃に誘われた。
家は同じ方向だし、帰り道に商店街でフライドポテトなんかを食べ歩いたりする事もあったり。
だけど今日は、ちょっと予定があるの。
「ごめーん、琴乃。
今からバイトなの」
「まどか、バイト始めたんだ!
わぁ、頑張ってね!」
「うん、ありがとう」
先に教室を出て帰路に着いた琴乃を見送ると、あたしもゆっくりと教室を出る。
それから校門を出て、家とは反対方向の道をまっすぐに進んでいく。
そして曲がり角を曲がって、ちょっと細い道に入った所で……。
「まどかさん」
「わっ、サイさん!
もう来てたんだぁ」
あたしは車を停めて待つサイさんの側まで走った。
「待たせちゃってごめんね。
ってサイさん、サングラスなしだぁ!」
いつもかけてる、目線が全く見えないくらいの真っ黒なサングラス。
それが、今日はかけていなかったのだ。
一見怖そうに見える黒いスーツ姿に黒いサングラス。
だけどスーツは黒くても、サングラスもない素顔のサイさんには怖さなんて微塵もなかったのだ。
「旦那様と理央様が、もうかけなくていいと仰ってくれたんです。
どうですか?」
「うんうん!
サイさんはやっぱり素顔がステキだよー!」
長いまつげにくっきり二重まぶた。
男の人なのに、羨ましいぞ!
「ありがとうございます。
さぁ、乗って下さい。
理央様がお待ちですよ」
サイさんに後部座席のドアを開けてもらい、あたしは車に乗り込んだ。
……うん、大丈夫。
今なら誰も生徒たちに見られてないよ。
てっきり温厚な人柄に、温厚な安全運転をする人かと思っていたサイさん。
「しっかりシートベルトしてて下さいねっ
法定速度スレスレでかっ飛ばしますよ!」
「ひゃあぁっ
サイさん、カーブは安全運転ーっ」
いつからこんなぶっ飛んだ人になってしまったのか知らないけど。
でもサイさんの表情、前よりずっといい顔してる!
サングラスを外したせい?
それとも………
「よかったね、サイさん」
「え? まどかさん、何か仰いましたか?
すみません。エンジンの音がうるさくて、こちらには聞こえづらかったもので」
「ううん大丈夫。
てゆーか、前見て運転して下さいねーっ」
何でも器用にやりこなすサイさん。
そうだ、今度またお料理教えてもらおっと。
「美咲、待ってたぞ。
って、どうしたんだ。
何か冷や汗かいてるようだけど?」
「あ、うん、大丈夫……っ」
サイさんのステキな運転で、何とか無事に理央クンの家に到着した。
なかなかなスリルを味わわせて頂きましたー。
「ふぅん、まぁいいか。
じゃ、早く着替えて仕事な」
「はぁい。
おじゃましまーす」
あたしは理央クンの家に上がると、いつもの部屋にと向かって中に入った。
シングルベッドはなくなってるけど、テーブルやクローゼットは以前のようにそのままある。
あたしは制服を脱ぐと、クローゼットからいつものコスチュームに着替えた。
「相変わらずの短いメイドさんスカート。
だけど、やっぱりあたしにはこれが馴染んでる!」
「美咲! ここゴミ落ちてる」
「はぁい、すぐ片付けます!」
「美咲、喉渇いた」
「はぁい、今お茶入れます!」
「美咲、肩凝った」
「はぁい、肩もみしまーす」
「美咲!」
「はぁい!
って、一度にできませーん!!」
新しく始めたバイト。
それは、理央クン家のメイドさん。
お掃除から、理央クンの身の回りのお世話まで。
ちょっと大変だけど、でもあたしには最高のバイトなの。
「美咲、ちょっと休憩」
「わぁ、サイさんの入れてくれた紅茶とケーキだ。
やったぁ!」
お給料はいいし、バイト中にお茶は出るし。
何より……
「よく頑張ってくれるからな。
ほら、ご褒美……」
「ん…………」
ケーキよりも甘い甘いご主人様のキスは、何よりも一番のご褒美。
だけどこのバイト、あたししか知らない秘密のお仕事なんだぁ。
「自分の家はどうだ?
やっぱ、ここよりは居心地いいんだろうな」
ケーキを口に運びながら、ご主人様はあたしに訊いた。
「そりゃあ自分の家だもん、楽ですよぉ?」
「で?
家の方は上手くいってるわけ?」
「はい、お母さんはパート生活を続けるみたいだし、お父さんもまじめに働いてます。
てゆーか、あたしの事よりも、ご主人様のお父さんの方は……?」
お仕事熱心な忙しい毎日を送ってるらしい、ご主人様のお父さん。
なかなか家には帰らないって聞いてたけど……
「ん、すぐにはペース崩せないみたいだけどな。
でも日曜日は必ず休むって、昨日も一日家にいたよ」
「わぁ、よかったですね!」
冷たかった理央クンの家が、少しずつあったかい家庭を取り戻してる。
と同時に、優しくてあったかい笑みも見せてくれるようになったご主人様は、まだまだ学校じゃあポーカーフェイスだ。
でもいいの。
あたしの前では、ステキな素顔を見せてくれるから。
「ね、理央クン」
「は? タメ口?
美咲、後でお仕置きだからな」
「あわわわっ
ごめんなさいぃっ、ご主人様ぁっ」
なんてね。
でも理央クンは、あたしだけのヒミツのご主人様なんだよ☆
お し ま い (*^^*)
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