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●あたし、家族バラバラです!?①
しおりを挟むあれから数日後
以前ご主人様が言ってくれた週に一度のお休みを、また今日いただいた。
朝ご飯を食べてる時に聞いたので、とりあえず学校に行って今日一日が終わるまでがお休みだ。
「なんなら家に帰って来るか?」
「えっ!?
あたし、人質なのに!?」
「たまには自分の家で食事とかしたいだろ?
でも夜までにはちゃんと帰れよ」
「ご主人様ぁっ
ありがとうございます~っ!!」
週に一度のお休みだぁ!
久しぶりに、お母さんに会えるよぉ!!
登校はいつも通りで、今日もあたしは始業ギリギリに教室に入った。
「おはよー」
「おはよ、琴乃」
今日は家に帰れるかと思ったらウキウキしちゃう。
お母さん、元気にしてるかなぁ。
うちはお父さんとお母さんとあたしの3人家族。
だからあたしがご主人様の所に行ってお父さんが家を出ちゃってたら、お母さんひとりって事だよね。
「何か機嫌いいね、まどか」
「うん。
久しぶりに、家に帰るんだぁ」
そうだ、今日はあたしが晩ご飯を作ろう。
まだまだヘタだけど、それでも少しは出来るようになったってとこ、見てほしいもん。
「じゃあ、家出やめるんだ」
あ、そうだった。
琴乃には、今プチ家出してるって言ってたんだ。
「ねぇ、何で家出してたの?
そろそろ理由きいてもいい?」
琴乃はあたしが家出したって言って、スゴく心配してくれてたんだよね。
ホントはご主人様との関係を隠す為のウソだったのに、信じてくれて。
今更ウソだなんて言えないよ。
「じ、実はね、お父さんったら家族に内緒で借金してたの。
なのにあたしには、お小遣いムダに使うなとか言うのよ?」
「え~っ、借金?
いくらしたの?」
「500万だって!」
「ウソーっ
そりゃ家出したくもなるよ」
でもあたしが家を出て行った先はね……。
「よかったら放課後、家まで一緒に行こうか?」
「えっ、でもっ」
「家の前まで来たら、すぐに帰るから。
まどかの事、心配だもん」
家の前までなら、別に大丈夫よね。
お母さんと直接話す時には、琴乃も帰ってるだろうし。
「うん。
じゃあ今日は、一緒に帰ろ」
あたしの家はご主人様の家と違って、学校からは近い。
商店街を通って、その先を少し行けばあたしの家。
放課後、その商店街をあたしは琴乃とふたりで歩いて帰る。
「もしかして初めて?
こうやって琴乃と一緒に帰るの」
「そうだよ!
入学して初めて会って1ヵ月、ようやく一緒に下校だね」
そっかぁ。
あたしの高校ライフも、もう1ヵ月になるんだぁ。
でもまさか、こんな生活をするハメになるなんて思いもしなかったけどなぁ。
「お父さんと仲直り、できたらいいね」
「仲直りって言うかね」
「えーと、……とにかく上手くいったらいいねって事」
「うん、そだね。
――――ぁっ!」
「ん、どうしたの?」
大きなパチンコ店の前に差し掛かった時、あたしの足が止まった。
ヨレヨレのジャンパーを着た中年の男が、そのパチンコ店から出て来たのだ。
「お父……さんっ!?」
「えっ、まどかのお父さん!?
どこどこ!?」
お父さんはパチンコ屋さんを出た後、商店街をフラフラと歩き、宝くじ売り場へと行って立ち止まった。
お父さんったら、勝手に借金していなくなっちゃったクセに。
ちゃんと働きもしないでパチンコに宝くじ?
「信っじらんない!!」
カーッと頭に血が上ってしまったあたしは、隣に立つ琴乃の事など忘れてズカズカとお父さんの方へと向かった。
シワシワになった千円札を出しながら、宝くじのチケットを受け取ったお父さん。
お父さんのせいでお母さんはパートに出なきゃならなくなったし、あたしも家にいられなくなった。
そんな事も知らないで、何こんな所で宝くじなんて買ってんのよ!
「お父さん!!」
あたしが大声で叫ぶと、お父さんは驚いた顔であたしの方を見た。
「まどかっ」
「まどかじゃないわよ!
仕事もしないでパチンコに宝くじなんて!
誰のせいで家族がバラバラになったと思ってんの!?」
あたしの大声に、近くにいた通行人も何事かとチラチラ見てくる。
恥ずかしいけど、でも言わずにはいられない!
「わかってる!
わかってるよ、まどか!
父さんだって必死なんだっ
だから……許してくれよっ」
「あっ、お父さん!」
お父さんはまるであたしから逃げるように、その場を走って行ってしまった。
そして、人通りの多い夕方の商店街に、お父さんの姿はあっと言う間に紛れて見えなくなってしまった。
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