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今日はもうお仕事も終わったから、メイド服ではなくパジャマに着替えた。
ホントはご主人様の所に行って、一言あいさつした方がいいのかもしれないけど……却って目障りかもしれないから、さり気なくやめとこう。
と、思っていたのだが。
「ご、ご主人様!?」
何故かご主人様は、あたしの部屋の前で腕を組みながら立っていたのだ。
え、なんで?
まさか、怒られるとか!
「仕事は、もう済んだのか?」
「あ、は、はいっ」
「他に用事は?」
「いえ、後はもう学校の準備くらいしか……っ」
ちゃんとあいさつしてもないのに、また勝手に寝る支度してって言われるのかな。
気まずい空気にあたしはそれ以上何も言えなくなってしまって、キュッと身を縮ませたままご主人様の返答を待った。
優しい人ではあるんだけど、何の一言で怒らせちゃうかと思ったらドキドキしちゃう。
一度言った言葉は消せないけれど、でもまたかわいがってもらえるような関係には戻りたいよぉ。
「……用事ないんならさ、ちょっとオレの部屋に来い」
「………っ」
「命令してんだけど?」
「は、はいっ
すぐ行きますっ」
組んでいた腕を解きながら自分の部屋に向かうご主人様に、あたしはビクビクしながらついて行った。
パタンと閉まったドアの側で、あたしは立ち止まった。
先に入ったご主人様は、いつものソファにふんぞり返ってあたしを見てる。
「…………」
来いって言われたものの、それからどうしたらいいのかわからない。
だってそれ以上は、まだ命令されていないから……。
「何やってんの。
ペットって、そうやってドアの前で突っ立ってるもの?」
「え、ええっと……っ」
「ふっ
よくそれで、『ご主人様には寂しい思いさせたくないから』なんて言えたな」
「えっ」
「それとも美咲、お前のそのセリフはただのご主人様への機嫌取りか?」
晩ご飯の時に言ったあたしの言葉をちゃんと覚えてくれていたんだ。
それを試す為に、ここにあたしを?
「いえっ
あたしはホントに、ご主人様に寂しい思いをさせたくなくて!」
「じゃあ、抱かせろよ」
「え……っ」
「オレに寂しい思いさせたくないんだろ?
お前はオレのペットなんだから、拒む権利ないんだからな」
「………っ」
確かにあたしはそう言った。
あたしなんかでご主人様を慰めてあげられるならって、そう思ってた。
それで、抱かせろっていうのは、やっぱり……?
ご主人様の目が、ジッとあたしを見つめる。
「ほら、来いよ」
「ぁ、はい」
バクバクと、全身が心臓のように鳴り響いてくる。
「ひゃっ」
ご主人様の前まで歩み寄ると、ご主人様は立ち上がってあたしの手を握った。
長いまつげと、くっきりな二重であたしを見てる……っ
「なに? 嫌なの?」
不愉快そうに言うご主人様に、あたしはフルフルと頭を振って否定した。
嫌じゃない。
ご主人様の事は、好き。
ペットだけど、ペットでもいいの。
大好きなご主人様となら、あたしは愛してもらいたいっ
「ふぅん。
じゃあ行こうか」
どこに!?
って思ったけど、すぐにわかった。
ご主人様の部屋の奥にあるカーテンの先。
キングサイズの大きなベッドのある、ご主人様の寝室だ……!!
ふわり
あたしの身体はその大きなベッドに沈められた。
あたしの使わせてもらってるシングルベッドと違って、もっと柔らかくて気持ちいい。
「ご、ご主人様っ」
ご主人様もベッドに上がり、あたしの側に横たわるとあたしの身体をギュッと胸に抱きしめた。
…ドキン …ドキン
あたしにまで伝わってくる、ご主人様の心臓の音。
腕の中はあったかくて、気持ちいい。
もうずっと、このままでいたいな。
ご主人様の胸に抱かれて、このまま……
「……すぅ……
………すぅ……」
……ん?
抱きしめられてしばらく、寝息が聞こえてきた。
え、寝息?
腕の中でちょっと顔を上げてご主人様の様子を見ると、
「うわ、天使の寝顔」
怒ってる時の顔とは比べ物にならないくらい、安らかな表情で寝ているご主人様。
ご主人様の寝顔は、過去に二回くらい見た事あるけれど。
やっぱり普段の無愛想な顔とは全然違って寝顔はホント、赤ちゃんじゃないけど天使のようだった。
「抱かせろって、抱っこさせろって意味……?」
もちろん間違いじゃないよ!
でもほんのちょっとだけ違う想像をしてたあたしってば、恥ずかしいぃっ
「あわわっ
おやすみなさい、ご主人様」
腕に抱かれながら、あたしも目を閉じた。
でもご主人様の抱っこ、好きかも_____……
ホントはご主人様の所に行って、一言あいさつした方がいいのかもしれないけど……却って目障りかもしれないから、さり気なくやめとこう。
と、思っていたのだが。
「ご、ご主人様!?」
何故かご主人様は、あたしの部屋の前で腕を組みながら立っていたのだ。
え、なんで?
まさか、怒られるとか!
「仕事は、もう済んだのか?」
「あ、は、はいっ」
「他に用事は?」
「いえ、後はもう学校の準備くらいしか……っ」
ちゃんとあいさつしてもないのに、また勝手に寝る支度してって言われるのかな。
気まずい空気にあたしはそれ以上何も言えなくなってしまって、キュッと身を縮ませたままご主人様の返答を待った。
優しい人ではあるんだけど、何の一言で怒らせちゃうかと思ったらドキドキしちゃう。
一度言った言葉は消せないけれど、でもまたかわいがってもらえるような関係には戻りたいよぉ。
「……用事ないんならさ、ちょっとオレの部屋に来い」
「………っ」
「命令してんだけど?」
「は、はいっ
すぐ行きますっ」
組んでいた腕を解きながら自分の部屋に向かうご主人様に、あたしはビクビクしながらついて行った。
パタンと閉まったドアの側で、あたしは立ち止まった。
先に入ったご主人様は、いつものソファにふんぞり返ってあたしを見てる。
「…………」
来いって言われたものの、それからどうしたらいいのかわからない。
だってそれ以上は、まだ命令されていないから……。
「何やってんの。
ペットって、そうやってドアの前で突っ立ってるもの?」
「え、ええっと……っ」
「ふっ
よくそれで、『ご主人様には寂しい思いさせたくないから』なんて言えたな」
「えっ」
「それとも美咲、お前のそのセリフはただのご主人様への機嫌取りか?」
晩ご飯の時に言ったあたしの言葉をちゃんと覚えてくれていたんだ。
それを試す為に、ここにあたしを?
「いえっ
あたしはホントに、ご主人様に寂しい思いをさせたくなくて!」
「じゃあ、抱かせろよ」
「え……っ」
「オレに寂しい思いさせたくないんだろ?
お前はオレのペットなんだから、拒む権利ないんだからな」
「………っ」
確かにあたしはそう言った。
あたしなんかでご主人様を慰めてあげられるならって、そう思ってた。
それで、抱かせろっていうのは、やっぱり……?
ご主人様の目が、ジッとあたしを見つめる。
「ほら、来いよ」
「ぁ、はい」
バクバクと、全身が心臓のように鳴り響いてくる。
「ひゃっ」
ご主人様の前まで歩み寄ると、ご主人様は立ち上がってあたしの手を握った。
長いまつげと、くっきりな二重であたしを見てる……っ
「なに? 嫌なの?」
不愉快そうに言うご主人様に、あたしはフルフルと頭を振って否定した。
嫌じゃない。
ご主人様の事は、好き。
ペットだけど、ペットでもいいの。
大好きなご主人様となら、あたしは愛してもらいたいっ
「ふぅん。
じゃあ行こうか」
どこに!?
って思ったけど、すぐにわかった。
ご主人様の部屋の奥にあるカーテンの先。
キングサイズの大きなベッドのある、ご主人様の寝室だ……!!
ふわり
あたしの身体はその大きなベッドに沈められた。
あたしの使わせてもらってるシングルベッドと違って、もっと柔らかくて気持ちいい。
「ご、ご主人様っ」
ご主人様もベッドに上がり、あたしの側に横たわるとあたしの身体をギュッと胸に抱きしめた。
…ドキン …ドキン
あたしにまで伝わってくる、ご主人様の心臓の音。
腕の中はあったかくて、気持ちいい。
もうずっと、このままでいたいな。
ご主人様の胸に抱かれて、このまま……
「……すぅ……
………すぅ……」
……ん?
抱きしめられてしばらく、寝息が聞こえてきた。
え、寝息?
腕の中でちょっと顔を上げてご主人様の様子を見ると、
「うわ、天使の寝顔」
怒ってる時の顔とは比べ物にならないくらい、安らかな表情で寝ているご主人様。
ご主人様の寝顔は、過去に二回くらい見た事あるけれど。
やっぱり普段の無愛想な顔とは全然違って寝顔はホント、赤ちゃんじゃないけど天使のようだった。
「抱かせろって、抱っこさせろって意味……?」
もちろん間違いじゃないよ!
でもほんのちょっとだけ違う想像をしてたあたしってば、恥ずかしいぃっ
「あわわっ
おやすみなさい、ご主人様」
腕に抱かれながら、あたしも目を閉じた。
でもご主人様の抱っこ、好きかも_____……
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