あたし、今日からご主人さまの人質メイドです!

むらさ樹

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●あたし、知っちゃいました!?①

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__翌日の日曜日


昨日に続いて今日も午前中はブランチにして、晩ご飯は少し早めに用意した。



「へぇ。
焼き魚に味噌汁にサラダね。
ずいぶん所帯染みたものを作るようになったじゃん」



琴乃にアイデアをもらったので、それが早速役に立ったぞ。

いつも一品料理だったけど、こうしていくつかのおかずを用意すると、それっぽくなるんだね。



「どうぞ、召し上がって下さーい!」



今日はどうかな?
昨日みたいに美味しいって言ってもらえるかなぁ?

単純なお料理だし、そんなに失敗はないと思うんだけど………。



「魚ちょっと生焼けぽい。
味噌汁はダシ薄い。
サラダ、もうちょっと野菜の切り方を揃える」



あわわ。
やっぱりそう上手くいかないよねぇ。



「……でも、スゴく家庭的な食事だから、20点」



えっ

それってさりげなく、上がってる?

100点なんて程遠い数字だ。
でも今までずっと10点だったのが20点なんて言われると、もちろん嬉しい。


ん、でもさっき“所帯染みた”って言ってたけど……。



「あっ」



あたしったら、何も考えないでお料理してた。でもよく考えてみたら、ご主人様はお金持ちのお坊ちゃま。

晩ご飯に焼き魚とか、ありえないー!?



「ごめんなさい!
ホントはステーキみたいな、もっと高級感溢れるご飯が良かったですよねっ」


さっき言われたのも“家庭的な食事”

それってつまり、貧乏臭い!?



「あのな。
そういう堅苦しいの嫌だから、うちには専属のコックとかいないんだよ」



「じゃあ?」



「オレは、こういうの好きだから。
美咲はこのまま、このペースでやってくれたらいいんだよ」



好き!?
あたしのお料理、好き!?


20点だけど、やっぱりそういう言葉がもらえるのって嬉しいよぉ!!



お母さんがお父さんの借金を返す為に、お金を稼いでくれてる間の辛抱だった。

でも今はご主人様の笑顔が見れる事が、楽しみになってきているあたし。


ご主人様の事、もっと知りたい。

だってあたし、そんなご主人様の事が好きだから……!



「ご主人様、明日はどんなご飯がいいですか?」



「ん?
別に何でもいいよ。
ちゃんと食べてるだろ」



「でもあたし、なかなか100点もらえません」



食べてもらう以上は、美味しく作りたいもん。

でも元々苦手だったのもあって、上手くいかないんだよねぇ。



「……そのくらいの方が、昔を思い出さなくて済むからいいんだよ」



「…………」



昔は100点のお料理を毎日食べていたんだ。

100点なお料理って、サイさん?

それとも、ご主人様のお母さんかなぁ。






__さらに翌日の月曜日


今日からはもう、普通に途中から徒歩で学校に行ってる。


だから当然、あたしが教室に着いた時には、ご主人様はとっくに席に着いているわけだ。



「おはよ、まどか」



「おはよう、琴乃」



前の席に座る琴乃はあたしが机に着くと、クルリと身体をこちらに向けてあいさつをしてきた。



「相変わらず始業ギリギリ?」



「あはは……。
朝って忙しいもんね」



ご主人様の家って、学校からちょっと遠い。
だからどうしても、このくらいになっちゃうんだもん。



「琴乃はいつも早いよね。この前たまたまあたしが早かった時、琴乃がいたからビックリしたよ」



「あ……うん。
まぁね」



「どうかした?」



「あー……あのさ、まどか」



急に声を潜め、顔を寄せてきた琴乃。

……これは、女子ならではの内緒話スタイルだ。

あたしも耳を寄せて、琴乃の言葉を待った。



「……まどかはさ、櫻井理央をどう思う?」



「へ?」



まさかそんな事を訊いてくるとは思わなかった。

何で琴乃がご主人様を?



「ほら、この前櫻井理央の家に行ったんでしょ?
どんな感じだったんだっけ?」



「え、どんなって……。
琴乃、何でそんな事を?」



そうあたしが訊くと、琴乃はまわりをキョロキョロと見渡した後、更に声を潜めて続けたの。



「実は……ちょっと気になってるの。
櫻井君の事」



「えぇっ!?」



気になってるって!
それって、それってっ


「ちょっ!
まどか、声大きい!!」



赤くなって慌てた琴乃に、あたしは口を手で覆った。

だって、まさか琴乃がそんな事言うなんて思わなかったから。



「てゆーか琴乃、それって好きって事だよね」



「う、うん」



うわぁ。
琴乃がご主人様をそんな目で見てたなんて、思わなかった。



「櫻井君ってさ、いつも朝早くに登校して来るんだけどね。
それでわたしも、早く来るようにしてるの」



そういえばあたしが早く教室に来た日の朝、琴乃がやけにキョロキョロしてると思ったんだ。

あれご主人様を探してたんだ。



「櫻井君、いつも教室でひとりじゃない?
気になっていつも目で追ってたら、好きになってたみたいで……」



それはあたしも同じだった。

お金持ち独特の空気に誰も近寄らなくて、その孤独感溢れる姿が気になって、つい見てたんだよね。


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