上 下
16 / 34

しおりを挟む

「美咲、それ野菜の大きさバラバラすぎるだろ」


う゛っ!


「魚ってのは先に霜降りした方がいいんだよ」


し、霜降り?



「こんな煮えやすい野菜を先に入れちゃダメだろ!」



え、そうなんだぁ!



「美咲、鍋煮えたぎってるぞ。
いいのか?」



ひゃあぁ!!

ご主人様とキッキンにならんで楽しくお料理と思っていたけど、さっきから指摘されまくってるよー!!




「なかなか良いんじゃないか?」



「はい。
よく煮えてますよねっ」



ドタバタしながら何とか出来上がったお鍋料理。


野菜切って煮たらいいだけかと思ったら、結構大変だったよー。




「ちょっとまだ早いけど、せっかくできたんだし、食べるか」



「はい! ご主人様!」












「あつーい!
でも、おいしー!!」


よく煮えたお魚にお野菜を小皿に入れてふぅふぅと冷ましながら口に運んでみたんだけど、味がよく染みていて美味しくできている。


お豆腐がちょっと崩れて小さくなっちゃったんだけど、でも一口大になって食べやすいから怪我の功名だねー。



「おいおい、そんなにがっつかなくても取りゃしないよ」



「そ、そういう意味じゃなくて、美味しすぎて箸が止まらないんですーっ」



自分で頑張って作ったものだから、それから一緒につついて食べるから美味しいって事だよ。

ホントはご主人様に味わってもらおうと思ってたのに、何だかむしろあたしが味わされたって感じだぁ。



「でもま、確かに楽しく食べると、美味しく感じるよな」



「えっ」



ご主人様、今、なんて?



「ご、ご主人様っ
それって、美味しいって事ですか!?」



楽しく食べると美味しい。

食事ってのは、味だけが良ければいいってわけじゃない。

見た目はもちろんだけど、大事なのは環境。

おんなじお料理でもひとりで食べるのとふたりで食べるのとじゃ、全然違うもん!


味だけなら、まだまだご主人様の理想には遠いだろうけど。

でも今日は………!




「……何だ?
そのキラキラした目」


「だって!
あたし、ご主人様に美味しいって言ってもらいたいから、もしかしたら言ってもらえるのかなってっ」



「そんなに言ってほしいのかよ」



「もちろんです!
だから、どうだったのか教えて下さいっ
今日のご飯、美味しかったですか!?」





美味しいって言ってもらいたい!

100点って数字がほしいわけじゃないの。

ただ単純に、その一言が……っ




「……ははっ
そんな目で見られちゃ、言わないわけにいかないだろ。
美味しいよ。これでいいんだろ?」


「ご主人様ぁ!」



やった!
嬉しいぃーーっ!!

ずっと言ってもらえなかった言葉だったから、やっぱり嬉しい!!


あたしは嬉しさの余り、思わず立ち上がってご主人様に抱きついていた。



「お、おいっ、美咲っ」



「だってスゴく嬉しいんだもん~っ」



ご主人様がクラスメイトである事なんて、すっかり頭から消えていた。


今あたしはご主人様に喜んでもらって幸せいっぱいのペット、そのものなんだ!




「美咲……」



「はい、ご主人様」



ご主人様の身体に抱きついたまま、顔だけ上げてあたしは見た。


あたしを見下ろすご主人様の顔は優しくて、学校の時のポーカーフェイスとは全然違う。

多分これが、クラスメイトの誰も知らないご主人様の本当の素顔。



「……ご褒美、やらなきゃな」



「え?」



ご褒美?
ご褒美って何だろう。

今のあたしには、このご主人様の素顔が一番のご褒美なのに。



「目、開けたままにする?」



あたしのほっぺたに手を添えたご主人様が、ゆっくりと顔を寄せてきた。

そして――――




「ん………」



ふわっと柔らかく重なった唇。
前にペットにキスって言って、してくれた時以来だ。





「よく頑張ったな。
えらいえらい」


頭も優しく撫でられると、もう一度唇を重ねてくれた。





ご主人様は、すごく優しかった――――――。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...