あたし、今日からご主人さまの人質メイドです!

むらさ樹

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朝の登校は車で送ってもらっちゃったんだけど、身体の調子もすっかり良くなったので帰りはいつも通り途中まで歩いた。


ホントは別に全部歩いて帰ってもいいんだけど、それはサイさんが親切で乗せてくれるので、あたしは甘えちゃってる。




「お待たせしました。
さぁどうぞ、まどかさん」



「いつもありがとう、サイさん」



「……ふふっ
“サイさん”ですか。
ようやく慣れてきましたよ」



いつも突っ込まれなかったから気にしないで呼んでいたけど、ずっと違和感感じてたんだ!


だけど。
サイさんが笑ったぁ!

サングラスしたままだけど、白い歯を覗かせた口元がサイさんに笑顔を見せた。



「ごめんなさい。
サイバラさんって、ちゃんと呼んだ方がいいですよね」



「わたしは構いませんよ。何とでも呼んで下さい」



口元に笑みを残したまま、サイさんは車を発進させた。


サイさんの笑顔。
サングラスを外した顔、見てみたいなぁ。

きっと隠されたその下には、優しい笑顔を持ってるんだと思うよ。





しばらく走らせた車が広い庭も通り抜け、ようやく家の前まで到着した。



「お疲れ様でした。
ではわたしは、車を片付けたら失礼しますので」



あたしを降ろした後、車庫に戻そうと運転席にまた乗り込もうとしたので、あたしは慌ててサイさんの腕を引っ張って引き止めた。



「まどかさん?」


「待って、サイさん。
そのサングラス取って見せてよ」



ご主人様の命令で、顔を見たくないからって強制的にかけさせられてるサングラス。

さすがに今はもう怖くないし、そのサングラスの下の顔を見たいもんね。



「ですが……」


「わかってるよ。
でもご主人様もここにいないわけだし、今なら大丈夫でしょ?」



ご主人様は先に家に帰ってるから、まだ中に入ってない玄関先なら見えっこないもんね。


サイさんにサングラス取ってもらうチャンスと言えば、今なんだよ!



「…………っ」



「もしかして、サイさん自身もサングラスを取りたくないような理由があるの?」



「いえ、わたしは別に。
これは単に理央様に……」



「だったら!
ね、お願い。サングラス取った顔、あたしに見せて?」



無表情だとわからなかったけど、あの口元の笑みを見たらホントは優しそうな顔してるって思うの。

こうして毎日会ってる仲なんだから、素顔くらい見たいじゃない?

サイさんの素顔、絶対ステキだよ。




「……では少しだけ、失礼して」



少し悩んだようだったけど、あたしの懇願する姿に負けたのかサイさんはサングラスに手をかけた。



「わぁ! 早く早く!」



サイさんはサングラスのツル部分を持つと浮かせた。

そしてゆっくりと顔から離していき、と同時にサイさんは閉じたまぶたを開けてあたしの方を向いた。


朝の登校は車で送ってもらっちゃったんだけど、身体の調子もすっかり良くなったので帰りはいつも通り途中まで歩いた。


ホントは別に全部歩いて帰ってもいいんだけど、それはサイさんが親切で乗せてくれるので、あたしは甘えちゃってる。




「お待たせしました。
さぁどうぞ、まどかさん」



「いつもありがとう、サイさん」



「……ふふっ
“サイさん”ですか。
ようやく慣れてきましたよ」



いつも突っ込まれなかったから気にしないで呼んでいたけど、ずっと違和感感じてたんだ!


だけど。
サイさんが笑ったぁ!

サングラスしたままだけど、白い歯を覗かせた口元がサイさんに笑顔を見せた。



「ごめんなさい。
サイバラさんって、ちゃんと呼んだ方がいいですよね」



「わたしは構いませんよ。何とでも呼んで下さい」



口元に笑みを残したまま、サイさんは車を発進させた。


サイさんの笑顔。
サングラスを外した顔、見てみたいなぁ。

きっと隠されたその下には、優しい笑顔を持ってるんだと思うよ。





しばらく走らせた車が広い庭も通り抜け、ようやく家の前まで到着した。



「お疲れ様でした。
ではわたしは、車を片付けたら失礼しますので」



あたしを降ろした後、車庫に戻そうと運転席にまた乗り込もうとしたので、あたしは慌ててサイさんの腕を引っ張って引き止めた。



「まどかさん?」


「待って、サイさん。
そのサングラス取って見せてよ」



ご主人様の命令で、顔を見たくないからって強制的にかけさせられてるサングラス。

さすがに今はもう怖くないし、そのサングラスの下の顔を見たいもんね。



「ですが……」


「わかってるよ。
でもご主人様もここにいないわけだし、今なら大丈夫でしょ?」



ご主人様は先に家に帰ってるから、まだ中に入ってない玄関先なら見えっこないもんね。


サイさんにサングラス取ってもらうチャンスと言えば、今なんだよ!



「…………っ」



「もしかして、サイさん自身もサングラスを取りたくないような理由があるの?」



「いえ、わたしは別に。
これは単に理央様に……」



「だったら!
ね、お願い。サングラス取った顔、あたしに見せて?」



無表情だとわからなかったけど、あの口元の笑みを見たらホントは優しそうな顔してるって思うの。

こうして毎日会ってる仲なんだから、素顔くらい見たいじゃない?

サイさんの素顔、絶対ステキだよ。




「……では少しだけ、失礼して」



少し悩んだようだったけど、あたしの懇願する姿に負けたのかサイさんはサングラスに手をかけた。



「わぁ! 早く早く!」



サイさんはサングラスのツル部分を持つと浮かせた。

そしてゆっくりと顔から離していき、と同時にサイさんは閉じたまぶたを開けてあたしの方を向いた。



「…………………!」



「……そんなに見つめられると、さすがに照れてしまいますね」



サングラスを外したサイさんは、あたしが思っていた通り優しい顔だった。

サングラスで隠れるのは目だけなんだけど、その目ひとつだけで顔つきの印象は変わるよ!


ただ、長いまつげに、くっきりの二重まぶた。

その形も合わせて、ご主人様の目とまるでよく似ているようにも見えた。


目だけ見てたら、何だかサイさんがご主人様みたい……






「美咲!
遅いと思ったら、そんな所で何してんだ。
それに、西原………」


「理央様っ」



突然、ガチャと開いた玄関のドアから、ご主人様は顔を出して来たのだ。


だけど、ご主人様とサイさんの間で、ピンと空気が張り詰めた。


今、命令されてるのに、サングラスを外してるサイさんと顔を合わせてしまったんだ!


「西原……お前っ」


「も、申し訳ありません! 理央様っ」


すぐに顔色を変えて睨みだしたご主人様に、サイさんはすぐに手に持っていたサングラスをかけ直した。


え、なに?
そんなに大事《おおごと》なの!?



「お前は車を出す事だけが仕事だ!
それ以外の時は早く消えてろ!!」



「はい、畏《かしこ》まりました!」



「美咲!
お前もコイツとだべってないで、すぐに仕事しろ!」



それだけ言うと、ご主人様はバン! と強くドアを閉めてしまった。



「……………っ」


玄関外にあたしとサイさんと、重い空気だけが残った。



「どうして?
どうしてサイさんが素顔を見せただけで、あんなに怒るの?
いつも優しいご主人様なのに、おかしいよぉ!!」



サイさんには何の罪もないのに、目の前であんなヒドい事を言うなんて。

ご主人様はどうしてサイさんをそこまで嫌っているの!?



「すみませんね、わたしのせいでまどかさんまで嫌な思いをさせまして。
ではまた明日、買い物に行く時には車を出しますので」



軽く一礼すると、サイさんは運転席に乗り込んだ。



「待って、サイさん!」



あたしはすぐに運転席側のドアに回り込み、サイさんに窓を開けてもらった。



「ねぇ、どうしてサイさんはご主人様にあんな風に言われるの?
サイさんは知ってるんでしょ?」



「それは……」



何もないのに、ご主人様があんなヒドい態度を取るとは思えない!

きっと、何か理由が――――



「……それはわたしが、亡くなった理央様のお母様の弟、だからですね」



「弟!?
それって、サイさんはご主人様の……叔父さん?」



目元がご主人様にソックリだと思ったけど、それが叔父と甥の関係だと言うのなら納得できる。

だけど、ならば尚更あんな態度おかしいじゃない!?



「亡くなったお母様の面影とわたしが、よく似ているんです。
それが、お気に召さないんですよ」



そう言うと、サイさんは車を発進させた。



あたしは車が見えなくなってしばらくしても、まだずっとその場に立ってサイさんの方を見ていた…………。








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