あたし、今日からご主人さまの人質メイドです!

むらさ樹

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「…………………」


「ど、どう?」


「敬語」


「ですか……っ!?」



モグモグと口を動かし、あたしの作ったカレーを食べてくれている理央クン。


お肉と野菜を炒めてから煮込み、普通にカレールーを溶かして作ったものだから変な味ではないと思う。


だいたい、カレーは誰が作っても同じ味なんだから!



「……コクがない」


「は……」


「野菜も大きさバラバラで、煮えてないイモとかあるし」


「ウソ!」


「ま、10点てとこだな」


「ひゃぁ……」


一番簡単で一番無難な料理だと思ったのに!
野菜の大きさはわかるけど、コクって何?

カレールーの入った箱に書いてある通りに作ったよぉ!
なのに10点だなんてぇ。



「まぁいいさ、全然食べれるから。
お疲れ様」


「ぁ……はい」


ヒドい評価ではあったものの、理央クンはそんな10点のカレーを引き続き食べてくれた。

それに、まさか「お疲れ様」だなんて言ってくれるとは思わなかったなぁ。






ぐぅぅ……

「あ」


理央クンが食べてる所を見ていたら、あたしもお腹の虫が鳴いた。

そういえばお昼に学食食べたっきりで、もう夜だもんね。




「美咲、見てないでお前も食べろよ。
まさかもう残ってないのか?」



「え?
カレーも食パンも、もちろんあるよ?」


「タメ口?」


「……あります」


うーん、何だか調子狂っちゃうなぁ。

メイドさんやるってだけで、クラスメイトに敬語使わなくちゃならないんだもんね。



「あるんなら食べればいいだろ?
今お前の家はここなんだ。自分の食事もちゃんと自分で管理しろよ」


「あ、はい。
あ、でもご両親の分も残しとかなきゃですよね。
いつ頃帰って来るんですか?」



そういえば理央クンの両親はずっと見ていない。
お父さんはお仕事だとして、お母さんも働いてるのかなぁ?



するとその時、“ご両親”という言葉に反応したかのように、理央クンの表情がピクリと引きつった感じに見えた。



「母さんはとっくの昔に死んでいないし、父さんも滅多に家に帰って来ない。
食事はオレと美咲の分さえ作ればいいんだよ」


「………っ
じゃあこの家に、ひとりでいるの?」


「普段オレの身の回りの世話は西原がしてくれていた。
父さんがオレに残した、召使いさ」



お母さんは亡くなっていて、お父さんも家に帰らない?

理央クンの家庭の事なんて、今日初めて会ったあたしには知らない事。


お金持ちなだけで友達もいなさそうな理央クンだけど、あたしはたまたまこの家で働く機会があったから知る事ができたんだ……。








__その後

10点のカレー食パンを完食してもらうと、あたしはお皿を洗って片付けた。


「……ふぅ」


日頃やらなかった台所仕事。
油汚れの強いお皿洗うのって、特に面倒くさーい!

お母さん、こんな面倒くさい事をいつもやってくれていたんだね。




「美咲、あがったぞ。
仕事が済んだらお前も入れば?」


「あ、はーい」


あたしがお皿を洗ってる間、理央クンはお風呂に入っていた。



(うわ……っ)


そもそも男子のお風呂あがりなんて姿、見たこともないのにっ
今日初めて会ったイケメンクラスメイトの豪邸に来て、お風呂上がりのパジャマ姿を見てしまった!



「何だよ」


「あっ、いやっ
お風呂、いただきまーす!」


「……そうだ。
風呂が済んだら、後からオレの部屋に来い」


「えっ
あ、はい」


そう言いながら、濡れた髪をタオルで拭きながら理央クンは部屋に戻って行った。


後で、何があるんだろう。
まだ仕事が残ってるのかな。




台所仕事をささっと終わらせると、理央クンに言われた通りあたしもお風呂に入った。


掃除した時にも思ったけども、あたしの家にある浴槽の何倍分?ってくらいの大きさ!

まるで銭湯のお風呂みたいな大きさの浴槽に入ったんだけど、楽しーい!

……それに、さっきまで理央クンが入ってたお風呂に今あたしが入ってるなんて、やっぱりドキドキしちゃうよぉぉ!!



お掃除にお料理は面倒くさいし大変だけど。

でも気になってた理央クンにグッと近付いちゃってるし、なんかコレはコレでメイド生活も楽しいかもしれないなぁ。

なんてね。









お風呂からあがると、あたしの為にと用意してあったパジャマがあったけれども、まだ仕事があるっぽいので再びメイド服を着た。



それから理央クンの部屋の前に立つと、コンコンとノックして中に入った。



「あの、理央ク……」


「ご主人様」


「ご、ご主人さまぁ!」



デカいソファにふんぞり返ってテレビを見ている理央クンにあいさつしようとしたつもりが、また揚げ足を取られてしまった。

その呼び方も、早く慣れなきゃだよね。




「……ええと、言われた通り来ましたけど、何でしょうか」


「…………」


理央クンは、ふんぞり返ってたソファから下りて立ち上がった。

そして一直線にあたしの方に向かって歩き出し、目の前で立ち止まった。




(うわうわうわぁっ)


初めてこんな間近で見る理央クン。

教室ではツンとしてる顔しか見ないし、こんなにも近付く事もなかったからいろんな発見がある。

長いまつげに、くっきり二重のまぶた。

背も目の前に立つと、あたしよりずっと高い!!


ついポーッと見とれていると、理央クンはパジャマのポケットから何かを取り出してあたしの首に巻き付けた。



「……?」


反射的に首に付けられたらものに触ってみたけど、紐のようなもので引っ張っても取れない。

え、何これ?



「……首輪だよ。
オレのペットだってのを示すな」


「え~~~~~っ!?」



ペット!

ふざけて言っただけなのかと思っていたけれど、忘れてなかったんだ!


首輪だなんて、理央クンはあたしの事ホントにペットにするつもりなの!?



「鍵付きだからな。
勝手には外せないから」



ひゃあ……本気みたいだ!
あたしは本当に、理央クンのペットなのぉ!?



「言っておくけど、学校では普通にしてろよ。
だからこそ、チョーカーみたいなオシャレなデザインにしてやったんだからな」



首に付けられたものは自分じゃ見えないから、後から鏡で確認しよう。

でも触った感じ、そこら辺にある犬猫用みたいな首輪とは違うみたいだ。



「てゆーか、あたし学校に行けるの!?」


「当たり前だろ」


そっかぁ!
ずっとこの広い家に閉じ込められた生活をしなくちゃいけないのかと思ったよぉ。



「わかったら、もう部屋に帰って今日は休め。
これから毎日がこんな生活になるんだからな」



「あ、はい」



人質のメイド生活ってどんななのって思ってたけど、学校には普通に行けるわけだし、ここではお掃除にご飯の支度はあるけど、理央クンと同居できるわけだもんね。

ペットにはされちゃったけど、これから毎日がドキドキ楽しみになってきたかもしれないよぉん。





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