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●あたし、お料理は苦手なんです!?①
しおりを挟む「わぁ!
かわいいぃ!」
とりあえず、理央クンのペットになってしまったあたしなのだけど。だからって、猫みたいにゴロゴロしてればいいわけにもいかないみたい。
一応メイドなんだから働かなくちゃならないって事だもんで、用意された仕事着に着替えたのだが。
「えー、何かパンツとか見えちゃいそう。
屈む時とか、後ろ気を付けなくちゃ」
その仕事着っていうのが、いわゆるメイド服なんだけど、フリフリの付いた白いエプロンに、ミニのスカート。それから頭には、あのメイドさんがやってるヒラヒラっとしたのが付いてるカチューシャもあった。
「やっぱりメイドさんと言えば、この格好なんだろうなぁ。
でもミニスカートなんて、これ理央クンの趣味だとか?
なんてね」
まるでコスプレみたいな服に最初は戸惑ったけど、まぁデザインはかわいいので、それはそれで気に入っちゃったかも。
それから、着替えや寝る為の専用の部屋も用意してくれた。
着替えのクローゼットと普通のシングルベッドとテーブルにイスだけとやけにシンプルなんだけど、まぁ住み込みで働くメイドさんならこんなもんだよね。
借金を返す為、あたしだって頑張るんだもんねー!
着替えたの済んだあたしは、再び理央クンの部屋にと戻った。
デカい家に広くて長い廊下だから迷子に、なんて思ったけど。
でもあたしの部屋と理央クンの部屋は隣同士になっていたので、迷う事はない。
……隣同士だけど、部屋の大きさは全然違うのね。
ドアを開けて中に入ると、理央クンはソファではなく机に着いていた。
ノートを広げ、シャーペンを持って何か書いている。
「えっと……あの、着替えたんだけど……」
おそるおそる言うと、理央クンのシャーペンを持つ手がピタリと止まり、チラリとあたしの方を見た。
「……タメ口?」
「えっ? あっ、やっ
着替えが、でき、ました!」
慌てて言い直すと、理央クンは再び視線をノートに戻し、止めたシャーペンの手を動かした。
え~?
クラスメイトなのに、敬語で話さなきゃならないの?
「ええっと」
せっかく着替えも済んだのに、まるであたしの事なんて無視をしてるかのような理央クンに、あたしは手持ちぶさたになってしまった。
「あのぉ……」
あたしは何をしたらいいんだろう?
そう思って、理央クンに声をかけようとしたんだけど。
「うるさいな! 授業の予習してんだよ。
話かけるなよな」
「わわっ、ごめんなさい!
だけど、あたしは何をしたら……」
もう授業の予習なんてしてるんだ!
てゆーか、あたしは明日からの学校はどうなるんだろう。
「暇なら掃除からでも始めろよ。
食事の支度も風呂の掃除も洗濯も。
オレの身の回りの世話は、みんな美咲の仕事なんだからな!」
「ひゃあぁ!
は、はいぃっ!!」
言われるがまま、あたしは部屋を飛び出して掃除をする事にした。
掃除道具の場所や掃除の仕方、それからキッチンにバスルームと。
この家の基本的な事は、あの全身真っ黒な男の人から指示を受けた。
…この全身真っ黒な男の人、理央クンの使用人みたいな感じなのかなぁ。
家の中なのにずっとサングラスをかけたままだから、ちっとも人相がわからない。
とりあえず20代後半っぽいんだけど、黒い前髪を後ろに固めて黒スーツにサングラスだもん、ちょっと怖いよ。
なんでそんな格好してるんだろう?
「何かわからない事や不自由される事がありましたら、またわたしに訊いて下さい」
「あ、はい」
人質なのに、あたしに丁寧な扱いをしてくれるこの全身真っ黒な男の人。
あたしの事、力ずくで家から連れ出したから怖い人かと思ったけど、そうでもないのかな。
「あ、あのぉ。
お名前、訊いてもいいですか……?」
「あぁ、申し遅れました。
わたしは西原と言います」
サイバラさんか。
略してサイさん!
って、動物のサイを呼んでるみたいだぁ。
さすが豪邸だけあって、大きな大きな浴槽を洗って、広い広い絨毯じゅうたんに掃除機をかけて。
それが終わったら、晩ご飯を作らなきゃ……って。
あたし、料理とかした事ないんだけどー!?
冷蔵庫を開けて見ると、いろんな野菜やお肉なんかは揃っている。
でもそれで何を作ったらいいかなんて、全然わかんない!
仕方なく他の棚を開けてみると、そこで良いものを見つけた!
カレーのルーだ!
カレーぐらいなら学校の調理実習で作った事あるし、簡単だよね。
「よぉっし!」
あたしは再び冷蔵庫を開けると、お肉と野菜を取り出して調理を開始した。
____で。
「……なんだ、コレ」
慣れない手つきで頑張って作ったカレーなんだけども。
カレーはなんとかできたんだけど、肝心なご飯を炊いてないというミスをしてしまい。
尚且つお皿に盛り付ける直前に気付いたというわけで、焦ったあたしが必死になって考えたのが、棚にあった食パンを添えた その名も……
「カレー……パン、です……」
「カレーパンってのは、パンの中にカレーを入れて揚げたものじゃないの?」
「いやぁ……その……。
………………………ごめんなさい…」
言い訳にすらならない、カレー食パン。
ご飯がないなんて、その時点で痛恨のミスだもんね。
だけど、
「……ま、いいよ。
いただきます」
そう言って小さくため息をついた理央クンは、スプーンでカレーをすくって口に入れた。
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