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開店してから2時間くらい経つ筈なんだけど、さも今来たような様子のクロウ。
やっぱりナンバーワンとなると、社長出勤みたいな感じだ。
「あ、愛ちゃんも一緒なんだ。
じゃあオレ、間に入ったら両手に華じゃん♪」
クロウは隣同士に座ってたあたしと凛の間を割って、ソファに座った。
「さぁって、今日は何を飲ませてくれるのかな」
「んっとねぇ…。
じゃあアタシ、クロの為にモエ白」
「サンキュ!」
メニュー表を見ながら、凛はクロウにお酒の注文を入れた。
あたしはチラリとメニュー表の凛の注文したお酒の値段をチェックした。
モエ·エ·シャンドン(白)¥9000
…いきなり9000円のお酒って。
これが粋なお客のオーダーなのかどうかわからないけど。
あたしも指名してあげてる以上、煌にこんなお酒を注文してあげた方がいいのかしら。
「えーっと…」
メニュー表を見ながら、何となく煌に合うようなお酒を選ぶ。
あんまり高いものを選んであげる必要ないし、だからって安すぎたらかわいそうかも…
と、その時。
「ありがとうございます!
プリンスにルイ入りましたー!」
「うぉー!」
向こうのテーブルから大声で何やら盛り上がった様子がここまで聞こえた。
近くにいたホストたちまで集まり、手を叩いては声を出し、BGMすらも変わった。
「すっご…。
どんだけ高いものなのかしら…」
「愛さん、あれはルイ13世って言うブランデーで35万だよー」
あたしがあっけに取られていると、凛が顔を覗かせて答えた。
「すごいよね…。
おれ、飲んだ事もないよ」
反対隣に座る煌も、向こうの騒ぎを見ながらそうぼやいた。
入って半月の新人君なら、そりゃそうだろうね。
ところが、そんな高級品オーダーの騒ぎに対して表情を険しくして見ている人物がいた。
…クロウだ。
他のホストたちは手を叩いて盛り上がっているのに、そんな状態を彼は憎らしげに見ていた。
そんなクロウに気付いた凛が心配したのか、顔を覗かせて訊いた。
「どうしたの、クロ?」
「…アイツ、今売り上げがオレとトントンになってきたんだよね」
クロウがアイツと呼んだ方をアゴで差しながら小声で言ったのを、あたしは聞いた。
それは今盛り上がってるテーブルの方の、恐らく真ん中に立ってるホストの事だろう。
地毛なのかウイッグなのか知らないが、銀髪を後ろ1つで括った姿が印象的で、確かあたしが永久指名するホストを選ぶ際に見た冊子のナンバーツーに載っていた男だ。
売り上げがトントン。
つまり、この調子でいけば1位と2位が逆転しかねない…て事。
こういう所は月末になるとその月分の自分の売り上げを発表されて、それに応じてナンバーワン ナンバーツーを決めるんだ。
今向こうのナンバーツーに高いオーダーが入ったわけだから、もしかしたらこれでクロウが負けてるかもしれない。
「なんだぁ、そういう事ね。
だったらアタシに任せて!」
何を思い付いたのか凛は立ち上がり、近くにいたホストを呼んた。
「ねぇ、クロにドンペリ持ってきて。
一番高い、プラチナでね」
「凛ちゃん!マジで?」
何だかよくわからないけど、そうオーダーをかけた凛に対して、またしても近くにいたホストたちは集まり、さっきのような騒ぎが今度はこのテーブルのまわりで起こった。
やっぱりナンバーワンとなると、社長出勤みたいな感じだ。
「あ、愛ちゃんも一緒なんだ。
じゃあオレ、間に入ったら両手に華じゃん♪」
クロウは隣同士に座ってたあたしと凛の間を割って、ソファに座った。
「さぁって、今日は何を飲ませてくれるのかな」
「んっとねぇ…。
じゃあアタシ、クロの為にモエ白」
「サンキュ!」
メニュー表を見ながら、凛はクロウにお酒の注文を入れた。
あたしはチラリとメニュー表の凛の注文したお酒の値段をチェックした。
モエ·エ·シャンドン(白)¥9000
…いきなり9000円のお酒って。
これが粋なお客のオーダーなのかどうかわからないけど。
あたしも指名してあげてる以上、煌にこんなお酒を注文してあげた方がいいのかしら。
「えーっと…」
メニュー表を見ながら、何となく煌に合うようなお酒を選ぶ。
あんまり高いものを選んであげる必要ないし、だからって安すぎたらかわいそうかも…
と、その時。
「ありがとうございます!
プリンスにルイ入りましたー!」
「うぉー!」
向こうのテーブルから大声で何やら盛り上がった様子がここまで聞こえた。
近くにいたホストたちまで集まり、手を叩いては声を出し、BGMすらも変わった。
「すっご…。
どんだけ高いものなのかしら…」
「愛さん、あれはルイ13世って言うブランデーで35万だよー」
あたしがあっけに取られていると、凛が顔を覗かせて答えた。
「すごいよね…。
おれ、飲んだ事もないよ」
反対隣に座る煌も、向こうの騒ぎを見ながらそうぼやいた。
入って半月の新人君なら、そりゃそうだろうね。
ところが、そんな高級品オーダーの騒ぎに対して表情を険しくして見ている人物がいた。
…クロウだ。
他のホストたちは手を叩いて盛り上がっているのに、そんな状態を彼は憎らしげに見ていた。
そんなクロウに気付いた凛が心配したのか、顔を覗かせて訊いた。
「どうしたの、クロ?」
「…アイツ、今売り上げがオレとトントンになってきたんだよね」
クロウがアイツと呼んだ方をアゴで差しながら小声で言ったのを、あたしは聞いた。
それは今盛り上がってるテーブルの方の、恐らく真ん中に立ってるホストの事だろう。
地毛なのかウイッグなのか知らないが、銀髪を後ろ1つで括った姿が印象的で、確かあたしが永久指名するホストを選ぶ際に見た冊子のナンバーツーに載っていた男だ。
売り上げがトントン。
つまり、この調子でいけば1位と2位が逆転しかねない…て事。
こういう所は月末になるとその月分の自分の売り上げを発表されて、それに応じてナンバーワン ナンバーツーを決めるんだ。
今向こうのナンバーツーに高いオーダーが入ったわけだから、もしかしたらこれでクロウが負けてるかもしれない。
「なんだぁ、そういう事ね。
だったらアタシに任せて!」
何を思い付いたのか凛は立ち上がり、近くにいたホストを呼んた。
「ねぇ、クロにドンペリ持ってきて。
一番高い、プラチナでね」
「凛ちゃん!マジで?」
何だかよくわからないけど、そうオーダーをかけた凛に対して、またしても近くにいたホストたちは集まり、さっきのような騒ぎが今度はこのテーブルのまわりで起こった。
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