紫に抱かれたくて

むらさ樹

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__その2日後。


「あ、凛っ」

仕事に入る前の控え室で、凛が来るのを待っていた。

先に来ていたあたしはすっかり支度を終えている。
来たばかりの凛はバッグを置くと、早速ドレスに着替え始めた。


「愛さん、今日は早ーい。
やる気満々なのぉ?」

「そうじゃないわよっ
それより、昨日の話を聞かせてよ。
どうだった?
どんなものにお金をつぎ込んだの?」

「昨日?
……あー、ホストクラブの話かぁ」

「やっぱり、あのグラスのタワー?
あれ1つで、結構売り上げの貢献になるのよね」


お店全体で行われるイベントみたいになっちゃってるから、きっと相当な金額だろうし、他のお客の目も引いてさぞ本人だけじゃない指名を受けてたホストさえも気分もいいんだろうな。


…所が凛の返ってきた反応がやけにイマイチで、でもその理由を聞いて納得した。


「昨日はあんまり遊べなかったのぉ…」

「えっ、どうして?
ガッツリ遊ぶって言ってたのに」


お気に入りの子に貢献して、自分の手でナンバーワンにしてあげるのが楽しい育成ゲームって言ってたのだ。

さぞ派手なパフォーマンスのあるお酒を注文したんだと思ってたんだけど。


「だってぇ…昨日いなかったんだもん」

「え、目当てのホストが?」

「そう!
もう超クヤシいから他の子でガマンしたけどー!」


ガマンだなんて、そのホストが聞いたらかわいそうに。

だけど、年中無休のホストクラブなら、ホストたちも交代でバラバラに休みをもらってるんだろうな。
それはあたしらだって同じだから仕方ないって言うか、納得するしかないわよね。


「はぁ…アタシ今日は仕事する気になれない~」

なんて言いながら鏡の前で突っ伏した凛。
せっかく休みの日に気合い入れて行ったのに、いなかったんなら落ち込みたくもなるわよね。


「まぁまぁ、次があるわよ」なんて気休めになればと凛を励ましながらあたしは考えていた。

…そういえば。
紫苑はオーナーだから、いつもいるとは限らないみたいな事を聞いた。


実は明日、あたしは休み。
凛の結果報告を聞いて、参考にしようと思ってたのだ。

紫苑がいるかどうかわからないけど…。
凛の話が聞けそうにないなら、明日あたしが改めて練習のつもりで行ってみよう。

敢えてランクの低いホストなら、口も軽くていろいろ裏話を聞かせてもらえるかもしれないものね。







__そんなわけで、翌日の休み。

あたしは1人、“club-shion”へと向かった。

前の時、“club-shion”へ来ていたお客は派手な衣装の女が多かった。

ニオイでわかる。
あれは多分、あたしらと同じような仕事をしてる女なんだわ。

それ以外なら、元々のお金持ちか、親のスネかじってるような奴か。


何にしても、行くからにはあたしだって負けてらんない!


持っている服の中で一番高くてセクシーなものを着て。
仕事のお客からもらったブランドの時計やバッグを身に着ける。

予習とは言え、お金もやや多めに持って行っとこう。


あたしはすっかり気合いを入れ、本気モードで“club-shion”へと立ち向かった。


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