悠久なる RIN NE(※R18)

むらさ樹

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以来、

私は毎日その店に来ると、凛音を腕に抱きながら他愛のない話だけをして帰った。


時には凛音に問われて仕事の話をする事もあったが、凛音と話す仕事の話は全く苦を感じなかった。



それはそうと、部屋の支度はちゃんと整っているし、凛音の身なりも綺麗にしている。

これだけのもてなしをされれば、普通に考えたらプレイを楽しまない方がおかしいのだろうし、私も又そうすればいいだろうが……





「今日も来てくれて、ありがとうございます。
櫻井さま」



この純粋な笑顔が消えてしまわないよう、私は手を出す事だけはしなかった。




…ところが、そんな今日。凛音は私に新しい提案をしてきた。




「櫻井さま?
もし良かったらなんですが…シャワーなど、かかられませんか?」



「シャワー?」



この部屋にはシャワーの付いた、バスルームがある。


中は広く、それは入浴以外を目的に使う事もできるようになっているのを、私は前から知っていた。




「あぁ…そうか、いつも私の臭いが気になっていたのだね。
不快な思いをさせて、申し訳なかったよ」



毎日仕事から帰る足で凛音に会いに来ていた。

真夏ほどではないが、それなりに汗もかいているだろうし、私自身の臭いもあっただろう。

加齢臭…なんて、認めたくなかったがね。




「ち 違いますっ!
そんな意味で言ったのではなく、せっかくお部屋を用意しているので、存分に活用されてはと思ったんです」



どうやら誤解していた私に、凛音は慌てて両手を振って返した。


存分に活用……
そうだな。せっかく整えてくれている部屋なのに、私は殆ど未使用のまま帰っているわけだ。



「ありがたい話なんだがね、汗を流す時間があれば、少しでも凛音と一緒にいたいんだよ。
せっかくの話なんだが…」


「いえ、もちろんわたしも、櫻井さまとご一緒させて頂きます」


「…………………っ?」



私をまっすぐに見上げながら放った凛音のその言葉に、しばらく意味が見いだせなかった。


いや、私ではない。
凛音の方が、自分の言ってる意味がわかっているのだろうかと心配したのだ。




「一緒…なのは嬉しいが、シャワーにかかるのだから君の綺麗なドレスが濡れてしまうよ」



「服はもちろん脱ぎます!
…櫻井さまが、着たまま濡らしたいと仰るならそうしますが…」



「いや、そんな事は求めていないよ」



凛音は、私の前で肌を晒そうと言うのだろうか。

手を伸ばしただけで恐怖に震え、羞恥心と戦いながら胸を触らせた凛音が……。




「無理をしてはいけないよ。私なら大丈夫だ」



「無理ではありません!
わたしは櫻井さまに…少しでも気持ちよくなって帰ってもらいたいんです」



再び私を見上げた凛音の瞳はまっすぐで、とても羞恥心や恐怖心を隠しているようには見えなかった。



多額の支払いをして凛音を占領しているのだ。オーナーに、何かサービスをしろと強く言われたのかとも思ったが、そんな感じでもない。



「…見ず知らずの私に肌を晒すのは、嫌ではないかい?」



「見ず知らずなんかじゃありません!
毎日会社の為に一生懸命お仕事なさっているのに、いつも心に隙間が空いていらっしゃる孤独な社長さん。
なのにわたしの事を、本当に大切に扱って下さる、優しい優しい櫻井さまです」



「───────っ」




凛音の言葉に、私はジンと胸が熱くなった。



出会って1ヵ月も満たない凛音は、誰よりも私の事を理解してくれていたのだ。


つまらなかったろう私の話を聞いてくれ、ずっと私の事を見てくれていた。


それだけで私は満足だったのに、なのに君は────…




私は凛音の前に立つと、胸元でとまっているリボンの紐に手をかけた。



「…本当に、構わないんだね」



「はい、大丈夫です。
櫻井さま……」



凛音の返事を聞くと、私は安心してドレスのリボンをほどいた。


シルクの生地が、スルスルと音を立ててしなやかに解かれていく。



「…………………」



やがて身体を覆うドレスがストンと床に落ちると、そこには下着だけをまとった白くて華奢な身体だけが残った。


やはり多少恥ずかしいのか、頬を赤く染めだした凛音が身をよがらせた。


すぐにドレスを戻してあげようかとも思ったのだが、私も久し振りの女性の身体に見とれてしまい、そんな余裕がなかったようだ。


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