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エミリオは、このハッセン公爵家の正式な養子だ。
とはいえ、まだ我が家の養子にむかえられて数日しかたっていない。
わたくしは、いつかはハッセン公爵家から出る身とはいえ現ハッセン公爵の実の娘として、15年この家で育ってきた。
ハッセン公爵家の使用人の信頼が、わたくしに寄せられているのは当然のこと。
それなのに、わたくしがエミリオを冷たくあしらえば、使用人たちもエミリオへの態度をよそよそしくするだろう。
お父様が不在の間に、代理にすぎないわたくしが、エミリオと我が家の使用人たちの信頼関係を損なうような真似はしてはいけない。
それに、前世の乙女ゲームのエミリオは、わたくしたち家族に冷たくされたことで性格をゆがめ、最悪の場合ヒロインを監禁するような犯罪者になりさがってしまうのだ。
ハッセン公爵家から、犯罪者をだすなんて、とんでもないことだ。
だからエミリオに対して、冷たくするなんていけないこと……。
あぁ、でも。
ゲームはゲームで、現実は現実だ。
それらは別々のものなのだから、分けて考えるべきで。
現実のエミリオは、わたくしが冷たくしたからと言って、ヒロインを監禁するような人間にはならないかもしれない。
いえ、だからといって、わたくしがエミリオに冷たくしていいというわけではないけれども……。
あぁ、いっそ、なにもかも、ゲームどおりなら。
ゲームどおりに現実が進むなら、お父様もお兄様もご無事でお帰りになるはず。
わたくしがエミリオに冷たくあたって、エミリオの性格が歪んでしまえば、「ゲームどおり」の未来が訪れるのなら。
お父様やお兄様がご無事で戻られるというなら、エミリオに冷たくあたるくらい悪いことだと思わない……。
いいえ。駄目。
冷たくあたった結果、エミリオが犯罪者になれば、お父様やお兄様も苦しめる。
エミリオだって、ヒロインだって苦しむ。
それにゲームどおりの未来が訪れるなら、お兄様はわたくしではなく「ヒロイン」と結ばれてしまわれるかもしれない……。
……あぁ!
落ち着こうとしても、思考が入り乱れる。
ゲームは、ゲーム。
現実は、現実。
例えゲーム通りに未来を紡ごうとしても、そんなものが現実になるはずないのに……。
馬鹿な考えが頭に繰り返し、うかぶ。
わたくしはそんな考えを閉じ込めるように、機械的な笑顔をうかべなおし、ビスケットを食べる。
エミリオに今日の予定を聞き、わたくしは王城へ行くことを告げる。
他愛のない会話を笑顔でかわし、デザートの葡萄を食べ終えると、わたくしは先に席を立った。
このくらい友好的にしておけば、じゅうぶんだろう。
家の者に見送られて、王城へと向かう。
……こんなことでは、いけない。
それは、わかっているのに。
お父様。
ご無事で、いらしてください。
お父様にもうお会いできないかもしれないと思うと、リーリアはまっすぐに立つこともできません。
お兄様。
お会いしたいです。
ふたりで、お父様の無事をお祈りしたい。
お兄様が傍にいてくだされば、お父様の無事を、ただひたすらに祈れるのに…。
気を緩めるとまた、うつうつとした考えに飲まれそうだ。
わたくしは窓の外を眺めていた目をとじた。
ゆるい呼吸を意識してはきだすと、体も心も疲れているからだろう、すぐに、うつらうつらとしてしまう。
そして、奇妙な夢を見た。
とはいえ、まだ我が家の養子にむかえられて数日しかたっていない。
わたくしは、いつかはハッセン公爵家から出る身とはいえ現ハッセン公爵の実の娘として、15年この家で育ってきた。
ハッセン公爵家の使用人の信頼が、わたくしに寄せられているのは当然のこと。
それなのに、わたくしがエミリオを冷たくあしらえば、使用人たちもエミリオへの態度をよそよそしくするだろう。
お父様が不在の間に、代理にすぎないわたくしが、エミリオと我が家の使用人たちの信頼関係を損なうような真似はしてはいけない。
それに、前世の乙女ゲームのエミリオは、わたくしたち家族に冷たくされたことで性格をゆがめ、最悪の場合ヒロインを監禁するような犯罪者になりさがってしまうのだ。
ハッセン公爵家から、犯罪者をだすなんて、とんでもないことだ。
だからエミリオに対して、冷たくするなんていけないこと……。
あぁ、でも。
ゲームはゲームで、現実は現実だ。
それらは別々のものなのだから、分けて考えるべきで。
現実のエミリオは、わたくしが冷たくしたからと言って、ヒロインを監禁するような人間にはならないかもしれない。
いえ、だからといって、わたくしがエミリオに冷たくしていいというわけではないけれども……。
あぁ、いっそ、なにもかも、ゲームどおりなら。
ゲームどおりに現実が進むなら、お父様もお兄様もご無事でお帰りになるはず。
わたくしがエミリオに冷たくあたって、エミリオの性格が歪んでしまえば、「ゲームどおり」の未来が訪れるのなら。
お父様やお兄様がご無事で戻られるというなら、エミリオに冷たくあたるくらい悪いことだと思わない……。
いいえ。駄目。
冷たくあたった結果、エミリオが犯罪者になれば、お父様やお兄様も苦しめる。
エミリオだって、ヒロインだって苦しむ。
それにゲームどおりの未来が訪れるなら、お兄様はわたくしではなく「ヒロイン」と結ばれてしまわれるかもしれない……。
……あぁ!
落ち着こうとしても、思考が入り乱れる。
ゲームは、ゲーム。
現実は、現実。
例えゲーム通りに未来を紡ごうとしても、そんなものが現実になるはずないのに……。
馬鹿な考えが頭に繰り返し、うかぶ。
わたくしはそんな考えを閉じ込めるように、機械的な笑顔をうかべなおし、ビスケットを食べる。
エミリオに今日の予定を聞き、わたくしは王城へ行くことを告げる。
他愛のない会話を笑顔でかわし、デザートの葡萄を食べ終えると、わたくしは先に席を立った。
このくらい友好的にしておけば、じゅうぶんだろう。
家の者に見送られて、王城へと向かう。
……こんなことでは、いけない。
それは、わかっているのに。
お父様。
ご無事で、いらしてください。
お父様にもうお会いできないかもしれないと思うと、リーリアはまっすぐに立つこともできません。
お兄様。
お会いしたいです。
ふたりで、お父様の無事をお祈りしたい。
お兄様が傍にいてくだされば、お父様の無事を、ただひたすらに祈れるのに…。
気を緩めるとまた、うつうつとした考えに飲まれそうだ。
わたくしは窓の外を眺めていた目をとじた。
ゆるい呼吸を意識してはきだすと、体も心も疲れているからだろう、すぐに、うつらうつらとしてしまう。
そして、奇妙な夢を見た。
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