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サラベス王 3

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わたしは心の中で、ユリウスに「すまぬ」と何度もわびる。
まだ数年はあったであろう猶予期間は、もはや彼に与えられなくなってしまった。
工学で有名なギッセルド国に留学していたユリウスは、すでにこちらへの帰路につかされている。
グラッハの、新しい王になるために。

……自分の腹を痛めて生んだ我が子は、かわいい。
それはもう、無条件で。
長男のアールも、次男のコンラッドも、たぶん今の彼らの1割の能力しかもたず、容姿や性格が万倍悪かったとしても、わたしにとってはかわいい息子だったと思う。
いや、実際には、わたしの息子たちは父親ににて、かなりしっかりものなのだが。

一方で、養子に迎えた二人の息子には、期待と罪悪感を抱いている。

30年も手塩にかけて育ててきたグラッハという国は、今のわたしにとって大切な宝物だ。
王という任はたいへんなことが多いが、やりがいのある仕事だとも思う。

とはいえ、国を守るために魔力や生命力を削られる上、口うるさい貴族たちにあれこれ口出しされ、外交だのなんだのも忙しく……、おかしいな、あまりいいところが思いつかん。

まぁ、わたしにはスノーがいた。
この国をよくしたいと願い、わたしを愛し、導き、支えてくれる最愛の夫が。

だからこそ、今のわたしがあり、グラッハの王であった人生を良いものだったといえる。

それにわたしにとって、人生いちばんの関心事は、「なにをなすか」ではなく、「だれとともにあるか」だった。
スノーが傍にいてくれるなら、王ではない職についていても、きっと幸福な人生だっただろうと思う。

だが。
ユリウスは、たぶんそういうタイプではない。

もちろんユリウスは18歳とまだ若いから、最愛となる人間にであっていないだけで、最愛となる人間に出会ったとたん価値観ががらりと変わる可能性はある。

だが、現時点ではユリウスにとって人生の関心ごとは「だれとともにあるか」ではなく「なにをなすか」であり、その「なにか」は工学関係だろう。
あれは、幼いころから工学狂いだった。

工部での功績を認めて成人とし、ギッセルド国に留学できることになった時のユリウスの笑顔を思い出す。
まだ半年ほどは残っていた留学を、こんな形で中途帰国させることになるとは、なんとも申し訳ない。

「ユリウスよりは、シャナルのほうがなんとかなると思うのだが」

「王として?ユリウスも充分実力はあると思うよ?」

「わかっている。そうではなく、精神的なものだ。ユリウスは、工学から切り離された人生に喜びを見出すのは難しそうだろう。だがシャナルは、リーリア・ハッセンがいれば、王であっても幸せになれるのではないか?」
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