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同じ小翼とはいえ、同じ部署に配属されたことがないコンラッド王子との接点はない。
だからわたくしは、彼のことをほとんどしらない。
そもそもコンラッド王子は、サラベス王とスノー様の間に生まれた王の実子で、王子としては魔力は低く、おふたり譲りの銀の髪は珍しいけれども、そのほかはすべて凡庸で、目立つ方ではない。
ただおとなしく、落ち着いた方だと聞いていた。
けれども今のコンラッド王子は、よほど慌てていたのか、同じ王子であるシャナル王子の宮を訪ねるのに先触れも出さず、伴の侍官もつけず、自分でドアまで開けてシャナル王子の宮へと押し入ってきた。
口調こそおちついているものの、顔にはうっすら汗をかいているし、息もすこしあがっている。
「これは…、コンラッド王子。お迎えもせず、申し訳ございません」
今は主人であるシャナル王子も不在だし、王子であるコンラッド様を衛兵は止めなかったのかもしれない。
それにしても非常識な登場の仕方に、わたくしは唖然としてしまった。
もしやシャナル王子とコンラッド王子は意外に仲が良く、こうしたとつぜんの訪問もよくあることなのかしら。
そっと周囲の侍官の顔をうかがうと、シスレイ以外の侍官の顔は落ち着いている。
……よくあること、なのかしら?
けれども侍官たちは、動揺していても顔に表すことはあまりない。
わたくしはさりげなく後方に退き、そっと皆様の様子を見習うことにした。
「いや。こちらが勝手に押しかけたのだ。迎えなど、いい。それより、シャナルは。まだ、いるかな?」
「いえ。先ほど、ザッハマインへ出立されました」
ハウアー様が丁重にお答えすると、コンラッド王子は顔をゆがませた。
「……そうか」
コンラッド王子の顔が歪む。
あ、泣く、と思ったけれども、王子は泣かなかった。
「出立の前に、一声かけたかったのだが間に合わなかったようだね。……君たちも、忙しいところだろう。押しかけてすまなかった。戻るよ」
「コンラッド王子の宮まで、お送りいたしましょう。クノエ」
ハウアー様が命じると、クノエ様は一礼して、コンラッド王子に従った。
コンラッド王子は一瞬それを断ろうとしたようだけれども、すぐにそれを受け入れ、部屋を出て行かれた。
……あぁ、あの方はきっと。
弟であるシャナル王子を気遣って、ここにいらしたのだろう。
危険地帯へ行く弟へ、励ましの言葉をかけようと、わざわざ足を運んでくださったのだ。
わたくしはあの王子にも申し訳なく思い、同時にシャナル王子のために嬉しくなった。
王子。
ここにも、シャナル王子のお味方はいらしたようです。
きっとご無事でお戻りください。
だからわたくしは、彼のことをほとんどしらない。
そもそもコンラッド王子は、サラベス王とスノー様の間に生まれた王の実子で、王子としては魔力は低く、おふたり譲りの銀の髪は珍しいけれども、そのほかはすべて凡庸で、目立つ方ではない。
ただおとなしく、落ち着いた方だと聞いていた。
けれども今のコンラッド王子は、よほど慌てていたのか、同じ王子であるシャナル王子の宮を訪ねるのに先触れも出さず、伴の侍官もつけず、自分でドアまで開けてシャナル王子の宮へと押し入ってきた。
口調こそおちついているものの、顔にはうっすら汗をかいているし、息もすこしあがっている。
「これは…、コンラッド王子。お迎えもせず、申し訳ございません」
今は主人であるシャナル王子も不在だし、王子であるコンラッド様を衛兵は止めなかったのかもしれない。
それにしても非常識な登場の仕方に、わたくしは唖然としてしまった。
もしやシャナル王子とコンラッド王子は意外に仲が良く、こうしたとつぜんの訪問もよくあることなのかしら。
そっと周囲の侍官の顔をうかがうと、シスレイ以外の侍官の顔は落ち着いている。
……よくあること、なのかしら?
けれども侍官たちは、動揺していても顔に表すことはあまりない。
わたくしはさりげなく後方に退き、そっと皆様の様子を見習うことにした。
「いや。こちらが勝手に押しかけたのだ。迎えなど、いい。それより、シャナルは。まだ、いるかな?」
「いえ。先ほど、ザッハマインへ出立されました」
ハウアー様が丁重にお答えすると、コンラッド王子は顔をゆがませた。
「……そうか」
コンラッド王子の顔が歪む。
あ、泣く、と思ったけれども、王子は泣かなかった。
「出立の前に、一声かけたかったのだが間に合わなかったようだね。……君たちも、忙しいところだろう。押しかけてすまなかった。戻るよ」
「コンラッド王子の宮まで、お送りいたしましょう。クノエ」
ハウアー様が命じると、クノエ様は一礼して、コンラッド王子に従った。
コンラッド王子は一瞬それを断ろうとしたようだけれども、すぐにそれを受け入れ、部屋を出て行かれた。
……あぁ、あの方はきっと。
弟であるシャナル王子を気遣って、ここにいらしたのだろう。
危険地帯へ行く弟へ、励ましの言葉をかけようと、わざわざ足を運んでくださったのだ。
わたくしはあの王子にも申し訳なく思い、同時にシャナル王子のために嬉しくなった。
王子。
ここにも、シャナル王子のお味方はいらしたようです。
きっとご無事でお戻りください。
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