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シャナル王子 8
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「僕、あきらめないよ」
コントロールできない魔力が、体からあふれる。
リアは驚いたように、後ずさった。
それがなんだかすごく腹が立って、僕はぎゅっとリアに抱き付いた。
「リアが誰を好きだって、僕はリアをあきらめない!リアが好きなんだ。リアだけが欲しいんだ!リアがいない世界なんて、いらないんだ!僕にはリアだけなのに……!」
だだっこのような言葉が、口からこぼれて止まらない。
でもリアは、いつものように僕を子ども扱いしてなだめたりしなかった。
僕の腕の中で、驚きで身を固くしている。
「僕もね、リアに黙っていたことがあるんだ。リアの髪の色がお母様に似ているから、リアといるとお母様と一緒にいるみたいって言ってたよね。あれ、嘘なんだ。僕の両親は、僕のことなんてぜんぜんかわいがってくれなかったから、お母様なんて、どうだっていいんだ。傍にいてほしいのは、リアだけなんだよ」
「そんな……、シャナル王子のご両親だって、きっと王子のことを思っていらっしゃいますわ」
「ぜんぜんだよ。リア、世の中にはいろんな親がいて、いろんな子どもがいるんだよ?ハッセン公爵みたいに、子どもを大切にする親もいれば、僕の親みたいに、いずれ手放さなくてはならない子どもに情を持つことをうとむ親もいるんだって」
とっさに僕の言葉を否定したものの、リアはそれ以上否定を重ねなった。
リアだって、世の中にはひどい親もいるって知っている。
ただ自分の経験則から、親は子を愛するものだってつい思っちゃうんだろう。
そっと顔をあげると、リアは辛そうに目を閉じていた。
安易な否定や慰めの言葉を口にせず、そっと僕の背を抱いてくれるリアは、やっぱり僕にとってすごく大切な人だと思う。
欲しい。
リアが、欲しい。
他の男に渡すのなんて、ぜったいにいやだ。
「リア。今回の国境障壁が壊された件で、サラベス王の退位ははやまると思うんだ」
「なにを……っ、そのようなこと、軽々に口にされるものではございませんっ」
リアは僕を抱きしめていた手をはなし、僕の肩をつかんで、厳しく言う。
僕はリアを見上げ、ゆっくりと言った。
「でも、民はきっと国境障壁が壊されたのはサラベス王のせいだって思うよ。それに、シュリー州からの連絡によると、国境障壁を壊したのは、海賊ラジントンっていう義賊なんだって。崩壊しつつあるイプセン国で暴れていた彼らがこのグラッハ国に現れたのは、サラベス王の施政に問題があるからじゃないか……そんな声は、軍部ですでにあがっている」
「なんてことなの……、なぜ海賊ラジントンが、このグラッハに現れるの……」
ぼうぜんとリアがつぶやく。
さすがだなぁ。
軍部の上層部でも、海賊ラジントンの名を聞いたことがある人間はごく一部だった。
なのにリアはすでに、ラジントンの名を知っていた。
義賊という言葉も、イプセンが事実上崩壊寸前であることも、知っているようだ。
情報の出どころは、ハッセン公爵なのかな。
彼なら、それを知る一部の人間であっても不思議はない。
それにしたって、公爵は娘だというだけでなんでも教えてくれるって人ではないっぽかった。
その情報を与えられているってことは、リアはそれだけの信頼を得ているんだろう。
「王の力が衰えれば、国は荒れる。衰えたって思われるだけでも、国は荒れる。それは、わかるよね?」
リアは、まだ頭が混乱しているっぽい。
僕の言葉に、ただうなずいた。
「でもグラッハは、だいじょうぶだ。サラベス王の後に成人間近のユリウス兄様がいるし、僕っていうスペアもいる」
「シャナル王子は、スペアなどではありません!ご自分をおとしめるようなことはおっしゃらないでください!」
「うん、ありがと。でも、ごめんね。僕ね、リアを脅迫するつもりなんだ」
「脅迫、ですか?」
リアはきょとんと僕をみおろした。
こんなときなのに、じっと見つめられるとどきどきして、嫌われるようなことを言うのはやめようかなって思う。
でもこのままじゃリアを失うだけだって思うから、僕は。
「もしもリアが僕と結婚してくれないっていうなら、僕、この国を出奔するよ。そしたら、スペアの王子はいなくなる。国も荒れるかもしれないね?」
コントロールできない魔力が、体からあふれる。
リアは驚いたように、後ずさった。
それがなんだかすごく腹が立って、僕はぎゅっとリアに抱き付いた。
「リアが誰を好きだって、僕はリアをあきらめない!リアが好きなんだ。リアだけが欲しいんだ!リアがいない世界なんて、いらないんだ!僕にはリアだけなのに……!」
だだっこのような言葉が、口からこぼれて止まらない。
でもリアは、いつものように僕を子ども扱いしてなだめたりしなかった。
僕の腕の中で、驚きで身を固くしている。
「僕もね、リアに黙っていたことがあるんだ。リアの髪の色がお母様に似ているから、リアといるとお母様と一緒にいるみたいって言ってたよね。あれ、嘘なんだ。僕の両親は、僕のことなんてぜんぜんかわいがってくれなかったから、お母様なんて、どうだっていいんだ。傍にいてほしいのは、リアだけなんだよ」
「そんな……、シャナル王子のご両親だって、きっと王子のことを思っていらっしゃいますわ」
「ぜんぜんだよ。リア、世の中にはいろんな親がいて、いろんな子どもがいるんだよ?ハッセン公爵みたいに、子どもを大切にする親もいれば、僕の親みたいに、いずれ手放さなくてはならない子どもに情を持つことをうとむ親もいるんだって」
とっさに僕の言葉を否定したものの、リアはそれ以上否定を重ねなった。
リアだって、世の中にはひどい親もいるって知っている。
ただ自分の経験則から、親は子を愛するものだってつい思っちゃうんだろう。
そっと顔をあげると、リアは辛そうに目を閉じていた。
安易な否定や慰めの言葉を口にせず、そっと僕の背を抱いてくれるリアは、やっぱり僕にとってすごく大切な人だと思う。
欲しい。
リアが、欲しい。
他の男に渡すのなんて、ぜったいにいやだ。
「リア。今回の国境障壁が壊された件で、サラベス王の退位ははやまると思うんだ」
「なにを……っ、そのようなこと、軽々に口にされるものではございませんっ」
リアは僕を抱きしめていた手をはなし、僕の肩をつかんで、厳しく言う。
僕はリアを見上げ、ゆっくりと言った。
「でも、民はきっと国境障壁が壊されたのはサラベス王のせいだって思うよ。それに、シュリー州からの連絡によると、国境障壁を壊したのは、海賊ラジントンっていう義賊なんだって。崩壊しつつあるイプセン国で暴れていた彼らがこのグラッハ国に現れたのは、サラベス王の施政に問題があるからじゃないか……そんな声は、軍部ですでにあがっている」
「なんてことなの……、なぜ海賊ラジントンが、このグラッハに現れるの……」
ぼうぜんとリアがつぶやく。
さすがだなぁ。
軍部の上層部でも、海賊ラジントンの名を聞いたことがある人間はごく一部だった。
なのにリアはすでに、ラジントンの名を知っていた。
義賊という言葉も、イプセンが事実上崩壊寸前であることも、知っているようだ。
情報の出どころは、ハッセン公爵なのかな。
彼なら、それを知る一部の人間であっても不思議はない。
それにしたって、公爵は娘だというだけでなんでも教えてくれるって人ではないっぽかった。
その情報を与えられているってことは、リアはそれだけの信頼を得ているんだろう。
「王の力が衰えれば、国は荒れる。衰えたって思われるだけでも、国は荒れる。それは、わかるよね?」
リアは、まだ頭が混乱しているっぽい。
僕の言葉に、ただうなずいた。
「でもグラッハは、だいじょうぶだ。サラベス王の後に成人間近のユリウス兄様がいるし、僕っていうスペアもいる」
「シャナル王子は、スペアなどではありません!ご自分をおとしめるようなことはおっしゃらないでください!」
「うん、ありがと。でも、ごめんね。僕ね、リアを脅迫するつもりなんだ」
「脅迫、ですか?」
リアはきょとんと僕をみおろした。
こんなときなのに、じっと見つめられるとどきどきして、嫌われるようなことを言うのはやめようかなって思う。
でもこのままじゃリアを失うだけだって思うから、僕は。
「もしもリアが僕と結婚してくれないっていうなら、僕、この国を出奔するよ。そしたら、スペアの王子はいなくなる。国も荒れるかもしれないね?」
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