乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、この恋は諦められません

木村 真理

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思いがけず、しばらく王子宮で働くことになった。

王子のお願いもあって、しばらくお休みもなしになりそう。
シャナル王子も、お休みなしで魔力補充をなさるみたいだから、わたくしもがんばろう。

もともと参内する予定だったし、リンダ様の許可もおりた。
家にひきこもっていると、お父様とお兄様の安否ばかりが心配で、なにも手につかなくなりそうだから、ちょうどよかったのかもしれない。

少なくても、仕事をしている時は、仕事のことを考えていられるもの。

ただ心配なのは、エミリオのことだ。
乙女ゲームの中のエミリオは、ハッセン公爵家で疎外感を感じたせいで性格が歪んでしまう。

愛情深い少年であるエミリオは、公爵家で冷たくあしらわれたことで、人にかまってもらえないことに過度の恐怖を抱くようになる。
そしてヒロインを好きになると、その愛情に比例するかのように、彼女につきまとい、彼女の行動のすべてを把握しようとする。
最終的には、彼女が他の人と話をすることさえ、嫌がるようになる。

恋人との関係は、ふたりの問題だ。
ふたりが幸せなら、それでよいと思う。
ゲームでのふたりは幸せそうだった。
だから、問題などないように思う。

けれどわたくしは、エミリオもヒロインも、他の人とも関わって生きていったほうが幸せなように思える。
エミリオのことは少し知っただけだけれど、ご家族への愛情もたくさんあるようだし。
それにエミリオの性格が歪んでしまうのは、よくないことだと思うのだ。

たいていの場合、エミリオの寂しさはごく初期にヒロインと友人になることで平和的に解決され、歪みかけた性格ももとの朗らかな性格へと戻る。
そしてヒロインと友人のまま終わる、というのがエミリオを攻略対象に選択した場合に最もよくあるパターンだった。

お兄様とエミリオも、ヒロインのおかげで仲良くなり、3人で笑いあうというエンドも多かった。
……「悪役令嬢」であるわたくしは、その時修道院にいれられて嘆いていたけれど。

「プリンセス・ルールズ」では、攻略対象は5人いたけれど、ヒロインの狙いはおおむね第二王子であるユリウス王子だった。

考えてみれば当然のことで、あちらの世界の物語では、王子と結婚することを最上のハッピーエンドとする傾向があった。
上昇志向のつよいヒロインが、次期王と目されるユリウス王子に目をつけないわけがない。
それゆえか、ユリウス王子以外の攻略対象とのエンドは、ヒロインと友人になって終わる「友情エンド」が多かったのだ。

前世のわたくしはエミリオが好きで、ヒロインとしてエミリオを攻略するにはどうすべきか熱心に研究を続けていたのだけれど、何度挑戦しても友情エンドが続くことに、一時は研究を放棄しようとしていた。

そんなある日、前世のわたくしは、今まで見たことがなかったエミリオのエンドを発見する。
それが「監禁エンド」。
ヒロインを独り占めしたいと願ったエミリオは、ヒロインを監禁してしまうという結末を迎えるのだ。
犯罪である。
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