66 / 190
50
しおりを挟む
思いがけず、しばらく王子宮で働くことになった。
王子のお願いもあって、しばらくお休みもなしになりそう。
シャナル王子も、お休みなしで魔力補充をなさるみたいだから、わたくしもがんばろう。
もともと参内する予定だったし、リンダ様の許可もおりた。
家にひきこもっていると、お父様とお兄様の安否ばかりが心配で、なにも手につかなくなりそうだから、ちょうどよかったのかもしれない。
少なくても、仕事をしている時は、仕事のことを考えていられるもの。
ただ心配なのは、エミリオのことだ。
乙女ゲームの中のエミリオは、ハッセン公爵家で疎外感を感じたせいで性格が歪んでしまう。
愛情深い少年であるエミリオは、公爵家で冷たくあしらわれたことで、人にかまってもらえないことに過度の恐怖を抱くようになる。
そしてヒロインを好きになると、その愛情に比例するかのように、彼女につきまとい、彼女の行動のすべてを把握しようとする。
最終的には、彼女が他の人と話をすることさえ、嫌がるようになる。
恋人との関係は、ふたりの問題だ。
ふたりが幸せなら、それでよいと思う。
ゲームでのふたりは幸せそうだった。
だから、問題などないように思う。
けれどわたくしは、エミリオもヒロインも、他の人とも関わって生きていったほうが幸せなように思える。
エミリオのことは少し知っただけだけれど、ご家族への愛情もたくさんあるようだし。
それにエミリオの性格が歪んでしまうのは、よくないことだと思うのだ。
たいていの場合、エミリオの寂しさはごく初期にヒロインと友人になることで平和的に解決され、歪みかけた性格ももとの朗らかな性格へと戻る。
そしてヒロインと友人のまま終わる、というのがエミリオを攻略対象に選択した場合に最もよくあるパターンだった。
お兄様とエミリオも、ヒロインのおかげで仲良くなり、3人で笑いあうというエンドも多かった。
……「悪役令嬢」であるわたくしは、その時修道院にいれられて嘆いていたけれど。
「プリンセス・ルールズ」では、攻略対象は5人いたけれど、ヒロインの狙いはおおむね第二王子であるユリウス王子だった。
考えてみれば当然のことで、あちらの世界の物語では、王子と結婚することを最上のハッピーエンドとする傾向があった。
上昇志向のつよいヒロインが、次期王と目されるユリウス王子に目をつけないわけがない。
それゆえか、ユリウス王子以外の攻略対象とのエンドは、ヒロインと友人になって終わる「友情エンド」が多かったのだ。
前世のわたくしはエミリオが好きで、ヒロインとしてエミリオを攻略するにはどうすべきか熱心に研究を続けていたのだけれど、何度挑戦しても友情エンドが続くことに、一時は研究を放棄しようとしていた。
そんなある日、前世のわたくしは、今まで見たことがなかったエミリオのエンドを発見する。
それが「監禁エンド」。
ヒロインを独り占めしたいと願ったエミリオは、ヒロインを監禁してしまうという結末を迎えるのだ。
犯罪である。
王子のお願いもあって、しばらくお休みもなしになりそう。
シャナル王子も、お休みなしで魔力補充をなさるみたいだから、わたくしもがんばろう。
もともと参内する予定だったし、リンダ様の許可もおりた。
家にひきこもっていると、お父様とお兄様の安否ばかりが心配で、なにも手につかなくなりそうだから、ちょうどよかったのかもしれない。
少なくても、仕事をしている時は、仕事のことを考えていられるもの。
ただ心配なのは、エミリオのことだ。
乙女ゲームの中のエミリオは、ハッセン公爵家で疎外感を感じたせいで性格が歪んでしまう。
愛情深い少年であるエミリオは、公爵家で冷たくあしらわれたことで、人にかまってもらえないことに過度の恐怖を抱くようになる。
そしてヒロインを好きになると、その愛情に比例するかのように、彼女につきまとい、彼女の行動のすべてを把握しようとする。
最終的には、彼女が他の人と話をすることさえ、嫌がるようになる。
恋人との関係は、ふたりの問題だ。
ふたりが幸せなら、それでよいと思う。
ゲームでのふたりは幸せそうだった。
だから、問題などないように思う。
けれどわたくしは、エミリオもヒロインも、他の人とも関わって生きていったほうが幸せなように思える。
エミリオのことは少し知っただけだけれど、ご家族への愛情もたくさんあるようだし。
それにエミリオの性格が歪んでしまうのは、よくないことだと思うのだ。
たいていの場合、エミリオの寂しさはごく初期にヒロインと友人になることで平和的に解決され、歪みかけた性格ももとの朗らかな性格へと戻る。
そしてヒロインと友人のまま終わる、というのがエミリオを攻略対象に選択した場合に最もよくあるパターンだった。
お兄様とエミリオも、ヒロインのおかげで仲良くなり、3人で笑いあうというエンドも多かった。
……「悪役令嬢」であるわたくしは、その時修道院にいれられて嘆いていたけれど。
「プリンセス・ルールズ」では、攻略対象は5人いたけれど、ヒロインの狙いはおおむね第二王子であるユリウス王子だった。
考えてみれば当然のことで、あちらの世界の物語では、王子と結婚することを最上のハッピーエンドとする傾向があった。
上昇志向のつよいヒロインが、次期王と目されるユリウス王子に目をつけないわけがない。
それゆえか、ユリウス王子以外の攻略対象とのエンドは、ヒロインと友人になって終わる「友情エンド」が多かったのだ。
前世のわたくしはエミリオが好きで、ヒロインとしてエミリオを攻略するにはどうすべきか熱心に研究を続けていたのだけれど、何度挑戦しても友情エンドが続くことに、一時は研究を放棄しようとしていた。
そんなある日、前世のわたくしは、今まで見たことがなかったエミリオのエンドを発見する。
それが「監禁エンド」。
ヒロインを独り占めしたいと願ったエミリオは、ヒロインを監禁してしまうという結末を迎えるのだ。
犯罪である。
0
お気に入りに追加
137
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる