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ハウアー 2

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7歳の時にシャルボン伯爵家から王家へと養子に入られたシャナル王子は、外見だけならばいたいけな天使のような子どもだ。

金の巻毛、おおきな緑の目。
肌は白く滑らかで、笑顔はこの世のあらゆる悪事を知らないかのように無垢。
言葉遣いや所作はやや子どもっぽいが、それも王子の外見にはよく似合っている。

ふだん王城にいるのは、小翼見習いの子どもでも12歳以上。
多くは成人した大人である。

シャナル王子のあざとい子どもっぽい話し方に違和感を抱く者は少なく、魔力量は多いのにおかわいらしい王子というのが一般的な評判だ。

けれど、それは王子が装っている偽りの姿だ。

王城に王子をお迎えした時から側仕えとしてお傍にいる私たちは、王子の子どもっぽさが偽りのものだと知っている。
ふとした瞬間に王子が見せる表情のぬけた顔、つぶやき。
時折出される百手先を読んだかのような指示。

当初は子どもが自分を大物に見せようと意味ありげにふるまっているだけだと主張していた者も、1年がたつ今では、シャナル王子はふつうの子どもではないと認めている。

魔力量が多く、頭が尋常ではなく切れる王子。
なぜ彼が自分をいつわり、子どもっぽくみせかけているのかは知らない。
しかし、その卓越した能力をもつ王子が、自分が側仕えとして仕える主だと気づいた当初、私たちは喜んだ。

英雄に憧れる少年のようで少し気恥ずかしいが、こんな王子を王として迎えたグラッハ国を見たいと、きっとその時のグラッハは歴史に残る素晴らしい国になるだろうと……、そんな夢を見た時もあったのだ。

だが今は、戸惑っている。

私は王であっても、彼らに幸福な人生を送ってほしいと僭越ながら願っている。
そのためのサポートをすることが、私たち側仕えの仕事だと思っている。

もちろんグラッハという国に王という存在は欠かせず、しかし一方で、王になれるほどの魔力量を持つ人間が少ないので、それだけの魔力量をもつ人間は有無を言わさず王になっていただかなくてはならない。
ユリウス王子にご自身の夢を捨てていただいたように、王となる人間の夢をかなえるよりも、彼らが果たすべき義務を果たしてくださることを望む。
それでも、できうるかぎり彼らにも幸福な人生を送ってほしいと思うのだ。

ユリウス王子の求めるものはわかりやすく、それを実現できる可能性は見出されている。
だが、ユリウス王子の次の王にと望まれているシャナル王子に対しては、いまだ誰も彼の望みをうかがうことすらできない。

いや、望みだけではない。
シャナル王子の好むもの、嫌うもの、すべてがあの偽りの子どもの姿に隠されて、わからない。

そんな王子が唯一関心をよせているのがリーリア・ハッセンである。

ハッセン公爵の一人娘である彼女は、シャナル王子の「お気に入り」だ。
王城の誰もに喧伝するように、シャナル王子はリーリアを「お気に入り」として扱っている。
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