乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、この恋は諦められません

木村 真理

文字の大きさ
上 下
14 / 190

ガイ 3

しおりを挟む
だが、公爵はまた養子を迎えられた。
それもリアと釣り合うひとつ年下の少年である。

エミリオとはこれまで受けてきた教育が異なるため、武術や知力は私のほうがずっと上だろう。
が、彼は魔力の扱いは突出して長けていると聞く。

これから成人まで公爵が鍛えれば、彼が次期ハッセン公爵となることも不可能ではないだろう。

そんな少年を今頃養子に迎えられたのは、私にはリアはもったいないと、ハッセン公爵が考えられたからではないだろうか。
ハッセン公爵は、私ではなく、エミリオに公爵家を継がせ、リアを彼の妻にするつもりではないだろうか。

そんなはずはないと思う一方、否定してもしきれない疑いが胸をやく。

ハッセン公爵の座など、リアに比べればなんということもない。
私の実力なら、別の公爵の座であっても望んで得られないということはないだろう。
公爵の座は、ひとつではない。

けれどリアは、この世でひとりしかいない。

今のリアは、兄である私にほのかな想いを寄せてくれているような気がする。
うぬぼれかもしれないが……。
彼女が私を好きだという時、家族としてだけではない気持ちも、いくばくかはあるのではないかと感じるのだ。

けれどそれは、リアがよく知る年の近い異性が私だけだからかもしれない。

実際、私は仕事の能力はそれなりに高いが、人好きのする性格ではない。
公爵家の跡取り候補として社交の術も学んでいるし、それなりに表面は対応できる。
が、基本的な性格は四角四面で融通のきかない面白味のない男だ。
とてもリアのような心の優しい少女が好む人間とは思えない。

……昨夜会ったエミリオは、ずいぶん人懐っこく明るい少年だった。
ああいう人間は、きっと同性にはよき友として、異性にはあまやかな思慕の対象として、人気があるのだろう。
彼が弟として傍にいれば、リアはいつかエミリオに心を寄せるようになるかもしれない。

私が成人しリアに求婚する権利を得る前に、リアが他の男を望めば。
私は自分の願いを口にすることさえ許されず、彼女を永遠に失うかもしれない。
そんな可能性を考えただけで、背筋が凍った。

だから。
最も危険性が高いライバルとして急浮上したエミリオを、牽制するのは当たり前だと思う。

新しく迎える弟にどのように接すべきか悩んでいたリアに、エミリオと距離を置くよう助言した。

年頃の少年だから年の近い異性であるリアが親し気にするのは気恥ずかしく思うだろうとか、異性として好意をもたれていると誤解され戸惑わせるのではないかなど、思いつくままに、リアがエミリオと距離を置かねばと思わせるようなことを囁いた。

それがハッセン公爵のお気持ちに反することであっても、リアとエミリオの間に距離を保たせられるのであれば、私にとっては必要不可欠なことなのだ。

我ながら、姑息なことだ。
けれど、リアを得るための手を抜くなどあり得ないことだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

処理中です...