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私の婚約者(王子)がお馬鹿すぎる。……でも好き、っていうこの羞恥に満ちた状況について

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 頭いたい……。

 このあほ王子と、馬鹿女をどこかの異次元に葬りたい。
それで一生、彼らと無縁に過ごしたい。
だけど私は、このあほの極みのような男のいちおう婚約者なわけで。

「カインズ男爵は、このことはご存知なのですか?」

 ため息を抑えつつ、確認すべきことを確認する。
エドワード王子は、私に話しかけられて、涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、嬉しそうに答える。

「ああ。令嬢の評判に傷をつけるような真似をするんだ。話はした」

「で?」

「彼も、娘同様、宝石が好きなようだったよ」

 つまり金で話をつけた、と。

「あなた王族としての手当てはわずかでしょう? よくそんなお金、ありましたね?」

 エドワード王子は、上のお二人の兄王子たちとは年齢が離れた末王子ということもあり、たいそう甘やかされている。
けれどそれは愛情面でのことで、金銭面は王族としての対面を保てるぎりぎりの額が支給されているにすぎない。

 不思議に思って問えば、王子は私の許しが得られそうだと判断したのか、アイスブルーの目に期待をにじませながら答えた。

「先日の人食い龍の退治で得た賞金があったからな。あれを使ったんだ」

「ああ、なるほど」

 私がからむと全力で残念になる王子なのでつい忘れがちだけど、この王子は武人としては稀にみる優秀な男なのだ。
人間では倒せないと言われていた人食い龍だって、彼の手にかかれば不可能ではない実力の持ち主。
ちょいちょいそれを忘れてしまうのは、私が見る王子の姿は、今のこの状況のようにめまいがするほどの馬鹿だからなんだけどね。

 私は足元で泣きながら私の許しを乞うている王子をじっと見る。
すると王子はほんのりと赤くなった。

 デカい男のそんな様子は、いかに王子が美形であっても情けないものだ。
ましてや、現状にいたる過程を思うと、ほんっとうに情けない。

 だけどまぁ、カインズ男爵や男爵令嬢にもいちおうの筋は通しているようだし。
学院の生徒たちはみんな、こんな王子の醜態にも慣れていて、王子が土下座しはじめたころから、こちらを無視してパーティを楽しんでいらっしゃるようだし。

 こんな馬鹿な考えで婚約破棄を口にするなんて王族としてはあってはならないことだ。
だけど、エドワード王子の兄である王太子様にはもう王子もふたりご誕生されていて、エドワード王子の王族としての重要性はかなり低い。

 一方で、武人としての王子の国への貢献は、まぁ評価されていいものだし。
我が侯爵家としては、国を支える貴族として、彼がよりよく国に尽くしてくれるよう導く責任があるわけで。
そのためには一時の怒りで彼との婚約を破棄するより、傍で監督していたほうがマシだし。
今回の件に関しても、私の打つ手もまずかったというのもあるし。

……いいかなぁ。
いいよね?

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