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悪役令嬢兼魔王だけど、王太子に婚約破棄されたので、正体をバラしてみた

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 王太子たちは、マリアンヌの言葉の意味を理解できなかった。
不審そうに眉をしかめる王太子たちをあざ笑いながら、マリアンヌはぱちんと指をならした。
するとみるみるまに、真紅のドレスをまとった彼女の背から大きな黒い羽が生える。

「あ、ぁああああああああくまっ!!」

 会場はいっしゅんで恐怖に包まれた。
あちこちで悲鳴があがる。
けれど彼らは誰一人として逃げ出さなかった。
否、逃げ出せなかったのだ。

「ええ、悪魔ですの。正確に申しあげるなら、魔王ですわ。……申し訳ございませんけど、皆様そこから動かないでくださいね?動けないよう魔術をかけましたが、その足を無理に動かすとネズミに姿が変わりますわよ?」

 楽しげに言われたマリアンヌの言葉に、パーティの出席者たちは息をのんだ。
魔王と名乗ったマリアンヌにかけられた魔術は脆弱なもので、屈指の魔力を誇る学院の生徒なら、無理をすれば拘束はとけただろう。
 けれどその結果がねずみに姿を変えられるというのでは、たとえ可能性の問題だとしても、その魔術を破ろうとは思えなかった。

 重苦しい沈黙を破ったのは、王太子に抱きしめられていた少女の声だった。

「ま、魔王様!?まさかマリアンヌ様が、魔王さまだったのですか!?」

「リリス!危ないから、君は後ろにさがるんだ!」

 王太子はマリアンヌのほうへと身を乗り出した愛する少女を、動かない体を必死で動かそうとしながら、自らの背に庇おうとした。
 けれどリリスは王太子の腕をふりきり、マリアンヌの姿を凝視すると、その場にがばりと身を伏した。

「申し訳ございません、魔王様!魔王様の獲物を横取りする気なんてなかったんです!!」

 ふぇぇとかわいらしい声で泣く少女に、マリアンヌはため息で答えた。

「あー、バラしちゃったらダメじゃん。せっかくこの国はあんたに譲ってあげようと思ったのにさぁ」

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