異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

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それがレイの望みだと言われましたが

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 肌が、綺麗になっている……?

 びみょうに、びみょうに、だけど。
うっすらあった目の下のちりめん皺が薄れている気がする。
肌のくすみも、いつもより薄いような。

 昨日からいろいろあって疲れ気味だし、肌のお手入れも万全とはいえないのに。
はっ。まさか、恋をすると綺麗になるってやつ?
 いっしゅん期待したけど、そんなわけないよな。
そんな即効性のある俗説、聞いたことないよ。
 現実的に考えたら、この鏡のうつりがいいんだろうな。
それか、室内の灯りの関係かで、綺麗に見えてるんだろう。

 手持ちのファンデーションとかについている鏡で確認したいけど、もうすぐメアリーさんが戻ってきそう。
と思った瞬間、ドアが開いて、メアリーさんがお茶を持ってきてくれた。
あいかわらず、すごいタイミングだ。

 メアリーさんが用意してくれたのは、マスカットみたいな香りのする紅茶だった。
それから指先ほどのサイズの小さな焼き菓子。
ミルクもおさとうもいれずにお茶をいただくと、バターとハチミツみたいな甘さのある焼き菓子が美味しさを増してくれる。

 メアリーさんは、お茶をいれてくれた後は、壁際で控えてくれている。
うーん、なんか落ち着かないなぁ。

 ひとりでお茶するのは、ふだんでもなくはないんだけど。
そういうときは、だいたい手元でスマホを見てたからなぁ。
ひとりで、なにもせずお茶だけをいただくって、ぜいたくな時間だと思うけど、落ち着かない。

「レイは、まだお仕事ですか?」

「そうですね。まだお仕事中のようです。……お食事はご一緒にということで、美咲様にもお待ちいただいていますが、先にすこしなにか召し上がられますか?」

「いえ、だいじょうぶです」

 手持ち無沙汰だったので聞いたら、腹ペコ疑惑を受けた。
しょうじきちょっとお腹はすいているけど、夕食を待てないほどじゃない。
居候先で、家主をおいて、他人にごはん用意してもらうのって、ちょっと遠慮しちゃうよね。

「昨日から、レイには、私のことでお時間をいただいているので。お忙しいでしょうに、申し訳ないなと思って」

 これも本心。
どう言ったって、私がレイに迷惑かけていることも、これからも迷惑をかけることも間違いないから、あんまり言うのもよくないと思ってるけど。

 だけど、メアリーさんは頼もしい笑顔で言う。

「美咲様のことに時間を使うことは、レイ様の望みでしょう。なにしろ、ひとめぼれしたあげく、家にまでお招きするほど愛されているのです。美咲様は、その要望に応えているのだと堂々とされていらっしゃればよろしいかと」

 おおぅ。
そういえば、そういう設定でしたね。
 でも真実は、私は異世界人で、レイにごりごりに頼らせてもらっているだけっていう……。

 あれ。でも、レイは私のこと、好きになってくれたんだっけ。
ここにずっといてほしいって、言われたし。

 てことは、メアリーさんの言葉も、間違いではない?
でも、愛されて望まれているんだからって、相手に迷惑かけても堂々としてるっていうのは、私にはハードル高い。
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