異世界で(口の悪い)騎士様に拾われたのですが

木村 真理

文字の大きさ
上 下
78 / 113

ましてやドレスを選んでもらう意味なんて知らなかったわけですが

しおりを挟む
 レイの瞳の色に似ているドレスを選んで、レイに好意を伝えていると思われていたなんて。
ははははははは恥ずかしい……!

 そういうのが許されるのって、せいぜい20代までじゃないですか?
いや、私も昨日までは20代だったけど、より若さが必要とされるというか。
それとも愛され女子なら、それくらい普通のアピールなわけ?

 だってさぁ、相手の見ている前で、まっさきに選んだのがあのドレスなわけで。
あまつさえ、感想まで要求するって。
 ドレスの色にそんな意味があるとしたら、それ、どれだけ愛されてるって自信満々なんだよって気がするのは、私だけ?
めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど……!

 でも、そんな私の反応が、お洋服屋さんたち的には意外だったみたい。
きょとりと目を丸くして、お互いに目配せをしあっている。
 
 え。なんですか、その不穏な感じ。
まだ何かある感じですか?

「私、遠いところから来たので、こちらの風習に疎いところがあるんです。他にもなにか気がかりなことがあるようでしたら、教えてくださらない?」

 ぜったいなんかやらかしてる。
そんな気がして、おそるおそる訊いてみる。

 すると、お洋服屋さんたちは、また目と目で仲間内で相談する。
そして少しの間の後、リーダーさんが半信半疑な口調で、代表して訊いてくれた。

「こちらの風習では、女性が身内以外の男性に服を選んでいただくというのは、その男性に自分の身をすべてお任せするという意思表示でございます。……かなり一般的に浸透している話ではございますが、もしや美咲様は、こちらもご存知ないのでは、と思いまして」

「……それは、もしかすると」

「はい……」

 すべてをお任せする、と濁された言葉がいっしゅんわからなくて考えたけど、リーダーさんの顔が赤くなっていくのを見て、気づいた。
 夜的な意味ですね!
あなたが選んでくれた服ですから、脱がせてもいいですよ、的なことか!

「知りませんでした……!」

 ぜんっぜん知らなかったよ!

 かああああああああああっと、私も赤くなる。
そんなこと、なにも知らなかったから、堂々と一緒に選んでほしいって言っちゃってたよ!

 ん?
それが、こっちの世界では一般的な常識なんだとすると。
レイは、その意味ってわかってたってことだよね?

 あの時、レイはなんて言ってたっけ?
確か、そう。
「俺的には、すげー嬉しいけど」
…………………っきゃあああああああああああああああ!?

 それって、それって……!
私、やっちゃった系ですか!?
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です

流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。 父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。 無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。 純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。

朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。  そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。  だけど、他の生徒は知らないのだ。  スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。  真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

関係を終わらせる勢いで留学して数年後、犬猿の仲の狼王子がおかしいことになっている

百門一新
恋愛
人族貴族の公爵令嬢であるシェスティと、獣人族であり六歳年上の第一王子カディオが、出会った時からずっと犬猿の仲なのは有名な話だった。賢い彼女はある日、それを終わらせるべく(全部捨てる勢いで)隣国へ保留学した。だが、それから数年、彼女のもとに「――カディオが、私を見ないと動機息切れが収まらないので来てくれ、というお願いはなんなの?」という変な手紙か実家から来て、帰国することに。そうしたら、彼の様子が変で……? ※さくっと読める短篇です、お楽しみいだたけましたら幸いです! ※他サイト様にも掲載

処理中です...