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ようやくバッグをおろしましたが
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ずーっと我慢していたトイレを無事にすませ、よろよろとベッドルームへと戻る。
そして、あらためてお部屋を見た。
ラナンキュラスの間は、ベッドルーム、化粧室、バスルーム、トイレがついているかなり広いお部屋だ。
お屋敷の中心部であるこの棟にあるお部屋は、ほとんど家族が使うため、東棟のお客様用客室とは違って応接室がないんだって。
悪いなってレイに謝られたけど、じゅうぶん広いですよー。
どうせ来客なんてないしね。
ベッドルームの端にあるソファに腰をおろし、手に持っていたバッグをローテーブルの上に置いた。
バッグは、必要なものをぎゅぎゅっと詰め込んでいたから、そこそこ重かった。
うーん、と伸びをして、体を整える。
ついでに、たぶんハキさんたちが、早々に用意してくださったおかげかな、お部屋はじゅうぶん暖かくなっていたから、ダウンコートも脱ぐ。
……っていうかさぁ。
私、ここまでバッグもおろさず、コートも脱がず、だったんだなぁ。
わりと礼儀的にどうなのって感じだよね。
そんなことにも気が回らなくなってたんだ。
別に、バッグをおろした瞬間、とられるとか、そういうことを心配してたわけじゃないんだけど。
ほんとは、心の底では、これがなくなったらどうしようって思ってたんだろうか。
バッグには、元の世界のものが詰まってるから……。
あぁ。ダークモードに入りそう。
そうじゃなくて。
顔を洗って、お化粧落とさなくちゃ。
お化粧自体は汗と涙でほとんど落ちている気がするけど、汗と涙を落としたい。
って思うけど、体が泥のように重い。
ぽやーっと窓の外を眺める。
暗い中に、まっすぐ光の列が見える。
あれはさっき通ってきた門への道かな。
あー。ベッドで寝たい。
だけどレイたち、戻ってくるって言ってたよなぁ。
バッグからペットボトルを取り出し、残りのカフェオレを飲む。
人工甘味料たっぷりのあまったるい味が、体にしみこむようだ。
これ全部飲んじゃったら、次にこれを飲めるのはいつになるんだろう。
また泣きそうになった時、とんとんとノックの音がした。
私はあわててバッグにペットボトルを戻すと、「はい、どうぞ」と応える。
ドアを開けたのは、さっき紹介してもらったメイドさんだった。
たしか、メアリーさんだっけ。
メアリーさんは、私を見て一礼すると、さっと横にずれた。
その後ろからレイがひょこっと顔をのぞかせる。
「美咲。軽いお食事を用意したんだけどよー、入ってもいいか?」
「あ、はい!ありがとうございます」
レイがうなずいて、メアリーさんを促す。
メアリーさんは、廊下に置いてあったらしいワゴンを押してきた。
ワゴンの上には、ポットと2人分のカップ、サンドゥイッチとスープに焼き菓子が乗っている。
メアリーさんはてきぱきと暖炉の近くにあるテーブルに食事を用意してくれる。
レイは椅子に腰をおろし、私にも座るように促した。
そして、あらためてお部屋を見た。
ラナンキュラスの間は、ベッドルーム、化粧室、バスルーム、トイレがついているかなり広いお部屋だ。
お屋敷の中心部であるこの棟にあるお部屋は、ほとんど家族が使うため、東棟のお客様用客室とは違って応接室がないんだって。
悪いなってレイに謝られたけど、じゅうぶん広いですよー。
どうせ来客なんてないしね。
ベッドルームの端にあるソファに腰をおろし、手に持っていたバッグをローテーブルの上に置いた。
バッグは、必要なものをぎゅぎゅっと詰め込んでいたから、そこそこ重かった。
うーん、と伸びをして、体を整える。
ついでに、たぶんハキさんたちが、早々に用意してくださったおかげかな、お部屋はじゅうぶん暖かくなっていたから、ダウンコートも脱ぐ。
……っていうかさぁ。
私、ここまでバッグもおろさず、コートも脱がず、だったんだなぁ。
わりと礼儀的にどうなのって感じだよね。
そんなことにも気が回らなくなってたんだ。
別に、バッグをおろした瞬間、とられるとか、そういうことを心配してたわけじゃないんだけど。
ほんとは、心の底では、これがなくなったらどうしようって思ってたんだろうか。
バッグには、元の世界のものが詰まってるから……。
あぁ。ダークモードに入りそう。
そうじゃなくて。
顔を洗って、お化粧落とさなくちゃ。
お化粧自体は汗と涙でほとんど落ちている気がするけど、汗と涙を落としたい。
って思うけど、体が泥のように重い。
ぽやーっと窓の外を眺める。
暗い中に、まっすぐ光の列が見える。
あれはさっき通ってきた門への道かな。
あー。ベッドで寝たい。
だけどレイたち、戻ってくるって言ってたよなぁ。
バッグからペットボトルを取り出し、残りのカフェオレを飲む。
人工甘味料たっぷりのあまったるい味が、体にしみこむようだ。
これ全部飲んじゃったら、次にこれを飲めるのはいつになるんだろう。
また泣きそうになった時、とんとんとノックの音がした。
私はあわててバッグにペットボトルを戻すと、「はい、どうぞ」と応える。
ドアを開けたのは、さっき紹介してもらったメイドさんだった。
たしか、メアリーさんだっけ。
メアリーさんは、私を見て一礼すると、さっと横にずれた。
その後ろからレイがひょこっと顔をのぞかせる。
「美咲。軽いお食事を用意したんだけどよー、入ってもいいか?」
「あ、はい!ありがとうございます」
レイがうなずいて、メアリーさんを促す。
メアリーさんは、廊下に置いてあったらしいワゴンを押してきた。
ワゴンの上には、ポットと2人分のカップ、サンドゥイッチとスープに焼き菓子が乗っている。
メアリーさんはてきぱきと暖炉の近くにあるテーブルに食事を用意してくれる。
レイは椅子に腰をおろし、私にも座るように促した。
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