ルーインド東京

SHUNJU

文字の大きさ
上 下
10 / 14

第八章「意気込み」

しおりを挟む
総合病院の広場

震災によって、悲しみとつらさに暮れる避難民達。
低体温を防ぐために毛布を掛けて座り込む親子や
妊娠中の女性や子供を膝の上にのせて寝かせる母親や
ベンチに座り込む父子等がいた。
東京は今も尚、震災によって深刻な影響をもたらしている。

未夢のラジオで臨時報道を聴く遥達。
ニュースも東京ではなく、大阪の放送局から流れている。

キャスター「関東地方は現在も富士山の噴火によって
      重大な被害が続いています。」
遼真「今日もラジオ局はいつもと違う気がするね。」
掛「大阪からだろうな。きっと東京の放送局も放送できないんだよ。」

ポイント⑱ 放送局が巨大災害で放送できない時は     
      他の地方の放送局に切り替えられる場合がある。

そんな時、2人の女性が食糧を差し入れにやって来た。
その2人は女優の“大瀬鈴子おおせすずこ(25)”とそのマネージャーである。

遥「あっ、あなたは女優の大瀬鈴子さんですよね?
  どうしてこの避難所に来たんですか?」
大瀬「撮影現場が被災されて収録がしばらくできないようです。
   今は食糧と水を避難所の人に届けるボランティアをしているので。」

ポイント⑲ 震災が起きると、撮影現場が被災された場合は
      収録不能となり、映画やドラマ等の制作にも
      大きな影響を与える。

遥達は大瀬が食料を差し出す様子を見に行った。

大瀬「ごめんね。食糧持ってきたけど少ないから皆で分けて食べてね。」

そのテーブルには僅かながらの食糧が置いてあった。

女性「いやぁここはもう酷いんもんだねぇ。」
遥「ええ・・・。」

遥が元の場所に戻ると

遥「ねぇ遼真、未夢さんが持ってきた食糧まだあるかな?」
遼真「ほとんど食べ切っちゃったからそんなに残ってないよ。」

未夢が持ってきた食糧はほとんど減ってしまった。
遼真が未夢の鞄を漁っていると、その中から1枚の写真を見つけた。

遼真「これは・・・未夢姉ちゃんの写真だ!!」

この写真は去年のハロウィンに撮影された未夢のコスプレ写真だった。

掛「どうしてこんなモンが入ってたんだ!?」
遥「ここって渋谷のハチ公前広場?」
遼真「それだよ!!これ去年のハロウィンの時だよ!
   忘れられないからって未夢姉ちゃんがとっておいたんだよ!」
木村「そうか、その写真は未夢の大切な思い出だったのか!!」

すると、女の子の泣き声が聞こえた。

女の子「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん‼あーーーーーーーーーん‼」

遥「えっ、何?」
遼真「お姉ちゃん、こっち!」

遥と遼真は泣き声の持ち主の女の子の方へ行くと、そこには大瀬もいた。

遥「大瀬さん、この子供は?」
大瀬「この子はおつかいに行った時に
   今回の大地震に遭ってしまい家に帰れなくなったらしいですが、
   ご両親に会いたくなって急に泣き出してしまいました。
   私が一生懸命慰めようとしていますが。」
女の子「うわああああん‼パパァ~‼ママァ~‼会いたいよぉ~‼」
遼真「僕だって会いたいけど、皆で頑張って生きなきゃダメだよ!」
遥「そうだよ!パパとママはどこかにいるから心配しないで!」

そして一方、掛は震災で職を失った男性に食糧を差し出した。

掛「これ、お前にやるよ。」
男性「あ・・・ありがとう・・・」
掛「どうした?そんなに避難生活が辛いのか?」
男性「いや・・・実は今回の震災で、
   勤め先の会社が潰れることになったんだ・・・。」
掛「そりゃそうだな。巨大災害で都内の会社が
  相次いで倒産してるからな。」

ポイント⑳ この様な震災が起きると被災された場合
      倒産する会社や企業が増加する恐れがある。

遥と大瀬は毛布を掛けて座り込む女子高生に話しかける。

大瀬「どちらにお住まいでしょうか?」
女子高生「八王子の方です。」
遥「八王子・・・年はいくつぐらいですか?」
女子高生「17歳で、高校3年生です。
     今年、修学旅行で奈良と京都へ行くはずでしたが・・・」

女子高生は涙ながらにこう話した。

女子高生「新幹線も大災害で運行を停止して、
     修学旅行は今年、中止になってしまったんです・・・。」

ポイント㉑ 震災が起きると修学旅行や部活動等の
      学校行事にも大きな影響を与える。

遥「私も同じ境遇なんです!
  ゴールデンウィークに家族みんなで大阪万博に行くはずでした!
  あの大地震で行けなくなったので、大変な目に遭っているんです!」

一方、木村はその親子に食糧を渡した。

木村「もしよかったらコレをどうぞ。」
女性「ありがとうございます・・・。」
木村「どちらに住まわれているんですか?」
女性「町田の方です。
   小田急電鉄も全線ストップしてダメになったので、家に帰れなくて
   この子を抱えて、ここに避難してきました。
   この子には3つ上の兄がいて、私には夫がいるのですが・・・
   避難するときにはぐれちゃったかも・・・」

すると、広場内で大きな余震が発生した。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
ガシャーン!ガラガラガラ

子供の泣き声や避難民の悲鳴が響き、広場中に響いた。
遼真はラジオを庇った。

キャスター「只今、関東地方が激しく大きく揺れています!」

そして地震は一瞬にして収まった。

掛「収まったか?」

遥は子供達を庇い・・・

遥「怖かったね。大丈夫だった?」

そして1人の女性が涙ながらにこう言った。

女性「東京は・・・どうなってしまうのよ‼」

そして、子供達やその避難者のほとんどが
あまりの辛さや悲しみに泣き崩れてしまった。

遥はある事に思いつき、避難民の前でこう伝えた。

遥「みんな、私の話をよく聞いて!
  辛いのはみんな一緒!
  みんなで一緒に生きれば幸せになれるんだよ!」
遼真「お姉ちゃんの言う通り!皆で力を合わせて生きていけば
   東京もいつかは復興するよ!」

その後、
遥が廊下を歩き回っているとスマホから着信音が鳴った。

ピロピロピロピロ♪ピロピロピロピロ♪

遥はその着信に応答すると

遥「もしもし、遥だけど。」
幹「ハルちゃん・・・今どこにいるの・・・?」
遥「えっ、幹!?今私、総合病院の中だけど
  幹こそ、どこにいるの?」

そう、電話がかかって来た相手は
崩れかけたビルに閉じ込められた親友の幹だった。

幹「今・・・私、崩れかけた・・・ビルの中にいるんだけど・・・
  中々・・・ここから・・・出られなくなって・・・」
遥「大丈夫だよ!レスキュー隊員が幹の事を助けてくれるからね。」
幹「うん・・・ありがとう・・・ハルちゃん・・・ずっと・・・友達だから・・・」

ツーツーツー

幹との連絡は途切れた。

広場に戻った遥は仲間にこう伝えた。

遥「友達から電話があったみたいだよ。」
掛「え?ようやく着信が繋がったのか?」
遥「うん、幹が崩れかけたビルの中にいるって・・・」
遼真「幹お姉ちゃんがビルの中に閉じ込められたの⁉」
木村「これは救出するのも大変そうだな!」

すると、ラジオから新しい情報が入ってきた。

キャスター「たった今、入ってきた情報です!」
遥「何?」
キャスター「原宿のビルに複数の人が救出されました!」
遼真「お姉ちゃんが言ってたのこのビルじゃない!?」
キャスター「今救出されたのは、30代くらいの男性です!
      包帯が巻かれていますが、意識はあるようです!」
木村「なんだよ!あの子じゃないのかよ!」
掛「いや、あのビルは崩れかけた瓦礫とかがあって、
  奴を救出することはかなり難しいんだ。」
遥「え、そんな!」

ポイント㉒ 崩れかけた建物は救出が困難な場所もある。

すると、再び物凄く強い揺れを感じた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

そして、揺れがされに増し、その余震は病院の広場でも発生した。
遥達はそれに気づいて・・・

ドカーン‼

遥「キャッ!」

そして、机等が倒れ、備蓄品も崩れ落ち、最大の余震が発生した。

ゴオオオオオ‼
ガシャーン‼バタン‼

キャスター「今、東京都内が激しく大きく揺れています‼」

多くの避難民が身を寄せている、

キャスター「震度6強です‼震度6強です‼」

遥は幹の事を心配した。

遥「幹・・・!」

崩れていくビルを思い浮かべながら
幹の言葉を思い出した。

幹「ずっと・・・友達だから・・・」

遥「幹ィィィィィィィィィィ————ッ‼」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

徒然話

冬目マコト
SF
短編のお話しです。

予知と解析

こる
SF
ツイッターにそのアカウントを見つけたのは、偶然だった。 地震の前に体に傷ができるという不思議な現象に戸惑うそのアカウントに入れ込み、傷のできる場所が日本地図に該当していることを知ると、傷の位置がどの地域に該当するのかを調べる『解析班』として自分でシステムまで作ってしまった。 そしてある日、アカウント主からの悲痛なツイートが流れてきた―― ※「小説家になろう」様でも掲載しております。 ※某雑誌の賞に応募した作品を改稿したものです。(※箸にも棒にも引っかからなかったよ! だけど自分は大好きな作品です)

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

処理中です...