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第二部 学園入学編

第10話 シナリオ通りに原作主人公とバトル

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 俺ライルと原作主人公のアースがこの場面で現れたということに俺は遂に物語が始まるのだと思っていた。

 だが、そんなチュートリアルで起きるような出会いではなく主人公がもはや別モノへと変わり果てていて

 俺自身が困惑していた。

(あんな言動するような主人公ではなかったよな?それに攻略できる女共なんて言っている当たり、この主人公も俺と同じなのではないか?)

 そんな考えを、最近頻繁に使用しているスキル〈答えを出す者アンサートーカー〉で瞬時に導き出す。

 そのおかげで冷静でいられていることに嬉しさが込み上げてくる。

 奴には何処まで知っているのかを試せるという絶対的なアドバンテージを獲得したのだからニヤケも浮かぶ。

 そして俺たちに気づいたのか、俺と隣を歩いているフィオナを見て邪悪な笑みを浮かべながら近づいてきた。


「何故お前とフィオナが一緒にいるんだぁ~?お前ライルだろ?チュートリアルかませ犬がしゃしゃり出てんじゃねーよ。」
「―――――」
「おい!なんとか言ったらどうなんだ?ああ?」
「貴方こそ名乗りもしないで無礼ですよ?それにちゅーとりある?かませ犬?と言った訳の分からない事を言ってライル様を困らせないで下さい!!」
「なぁ!?フィオナなんでこんな奴に様付けしてんだ!それにお前原作と違うだろう!!お前さては俺と同じ転生者だな!!」


 そう言って慌てふためくアースを見て俺は


「すまないが全く君のことを知らないしてんせいしゃ?なる者とはなんのこと変わらないよ?それにこんな騒ぎを起こしていたら、周りにも迷惑じゃないか?失礼な態度を取ったことには不問にするが、自分の言動をちゃんと確認するべきだよ。」
「黙れ!かませ犬が!俺に指図するな!!俺はこの世界の主人公様なんだぞ!!世界に選ばれた勇者なんだ!!」


 そういって声を荒らげるアースは、何を言っているのかよく分からない言葉垂れ流していた。その事を恐らく誰かが見ていた者が、教師達を連れてきたのだろう。

 俺の知る人物が3人ほど来てアースと俺たちを見て状況を確認してすぐさま対処しようと俺に問いかける。


「すまない、とうしてくれ。君たちが騒動の原因かね?何があったか説明してはくれないか?」
「はい、ひとまず私はライル・トリスタです。レーベル先生」
「なぜ私の名前をしっているのかね?私は名乗った覚えは無いのだがね?」
「父上から聞いております。それに知らない人は居ないでしょう。あなたが研究していた魔力回路を補助するという新たな魔道具を開発したというのは、王国の民ならわかって当然です。」
「そうか君が、あの堅物の息子か……神童なんて呼ばれていたけどあながち間違ってないね。」
「ありがとうございます。まぁでも先に話すべき事がありましたね。あそこのよく分からないことを言っていた者なのですが、私たちに近寄ってきてちゅーたりあるだのかませ犬だの言われて困っていたんです。誰かが呼んできてくれたことには感謝していますがね。」

そう言って落ち着いた様子で俺はレーベル先生に話しかける。その隣でフィオナも「そうなのです!」と講義をしていた。

前の方でな教師2人がアースを宥めているがまだ落ち着きがないようで話になっていない様子。

声を荒げて俺の方に視線を移すアースは憎悪に満ちた瞳で俺を見て教師2人を振り切って俺の前に立ってきて宣言するように俺に指を指す。


「ライル!!お前は俺にやられるべきなんだ!!皆の前で恥を晒してやる!!俺と決闘しろ!!」
「君は何を言っているんだね?それに君は決闘の意味わかって申し込んでいるのか?」
「当たり前だ!!俺は選ばれた存在の勇者でお前を踏み台として成敗すると言っているんだ!!この勇者の証で!!」


そう言って手の甲に魔力が満ちて紋章が浮き上がる。それは原作でも見た精霊紋で女神に与えられた勇者が持つ加護のようなモノ

そしてそれを見せつけるように周りに見せるアースは優越感からか笑みを浮かべていた。

それを聞いて見たレーベル先生や周りの人たちは「なんということだ」と呟いていた。そして俺の顔を全員が見る。

まぁこの状況で、見ないなんてことは無いよななんて思っていたら、俺の手を両手で握ってきた。フィオナが悲しそうな顔をしていた。

(ああ、こんな顔をさせたくなかったのにこいつのせいでいらない心配をさせてしまった。)

そう心の中で思いながら、俺は


「ああ、いいだろう。その決闘受けようじゃないか。だがこれは正式なものだということを君は―――」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!分かったならお前をボコボコにする会場に連れていけや!!」
「いやその前に、レーベル先生契約のスクロールはありますか?違《たが》えた時に、言い逃れできないようにしておいた方がいいだろう?そうは思わないか?」
「ふっ!分かってんじゃねぇか後に買って命乞い出来ないようにってことだろう?俺好みだぜ!!」
「―――っ!ダメですライル様!!そんな事をしたらあなた自身が!」
「大丈夫ですよ。フィオナ嬢これでも私は強いですから。」
「はっ!見え透いた嘘を並べて好感度アップか?お前のいる位置はもう俺専用なんだよ。」
「―――ライル様、よろしいのですか?もしも負けて――」
「―――――」


俺はレーベル先生の言葉がかかる前に感情が表に出てしまっていたのかレーベル先生が「覚悟がおありなのですね」と言ってもう何も聞かずに契約のスクロールを渡してくれた。


「私は、この決闘に勝利したら一切俺たちに一切合切近づかないと約束してもらう。」
「へっ!そんな願いでいいのかよ?なら俺は俺が勝ったらフィオナを俺に渡すことそしてお前はこの学園から出ていけ。」
「―――なっ!?そんなの不利な契約呑める訳ないじゃない!!ライル様ダメです!!これはあんまりです。」


そう言って、止めてくれるフィオナを見て、ああほんとに俺のことを心配してくれているのだと思うとなぜだかこの条件を呑んでもいいとさえ思えた。だから俺は


「ふっそんなので後悔はないのか?俺を殺す方が確実だと思えるか?」
「はは、問題ないね。お前のようなかませ犬に、負けるはずがないからなせいぜい足掻いてくれることを祈っておくよ。ガハハハハ!!」


そう言って笑うこいつを見て俺は


「分かった。それで契約成立だ。」


俺は契約のスクロールに了承した瞬間にスクロールは燃えて契約の証であるスクロールの魔力が俺たち2人に譲渡されるのだった。
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