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34.狙われた姫君
しおりを挟む剣地:王家の車の中
俺たちはリーナ姫の騎士団の人と合流し、王家の車に乗ってセントラー王国へ向かった。
「ナルセ殿、ティーア殿、昨晩はお世話になりました」
騎士団の人が、成瀬とティーアに深々と頭を下げていた。
昨日のことは大体把握している。姫を狙う裏ギルドのアサシンが姫騎士団を襲い、殺害。しかも、姫騎士団が宿泊していた部屋を燃やして証拠の隠滅をしようとしていた。
しかし、成瀬とティーアにばれ、結局捕まった。しかし、口をふさぐためなのか、そのアサシンは何者かに殺されてしまった。
おそらく、今回の仕事で俺たちはその裏ギルド……確かクァレバって言っていたな。そいつらと戦う可能性が大きい。
ベロラーダの事件の時に戦った裏ギルドに比べると、クァレバの規模が大きいようだ。まぁ一国の姫を狙うわけだから、弱小ギルドに仕事を頼まないな。
「皆様、セントラー城が見えてきました」
運転手がこう言った。俺は前を見ると、そこには白くて大きな城がそびえ立っていた。
「ほえー、でかい城」
「キレイ」
「真っ白だねー」
「中央の国だけあってすごいな」
「うわ、地元の城よりかなり豪華」
「我もこんな城に住みたいのー」
城を見た俺たちは、ぽつりと感想を呟いていた。その後、俺たちは騎士団の人に連れられ、リーナ姫の所へ案内された。
「こちらが姫の間です」
騎士団の人が扉を開いた。部屋の中はとんでもなく広く、天井もかなり高かった。
しかも、あちらこちらに大理石で作られた柱があった。
その他にも部屋の中央には噴水があり、周囲には姫を守るための武装した騎士団が立っていた。
「こちらです」
「あ、ああはい」
騎士団の人に案内された先には、一人の少女がいた。年齢は俺と成瀬と同い年位。玉座に座っていて、隣にはメイドらしき女性が二人いた。
「あなたたちが今有名なギルドの戦士ですね」
その少女はゆっくりとした口調で、はっきりとこう言った。見た目は俺と同じ歳だけど、かなりの威圧感を感じた。
「は……はい。俺が剣地と言います」
「ケンジですね。話は耳にしております」
少女は玉座から立ち上がり、俺に近付いた。
「私はセントラー王国の姫、リーナです」
雰囲気に負けたのか、成瀬たちはボーっとしていた。俺は急いで成瀬たちに自己紹介するよう促し、成瀬たちは慌てて自己紹介を始めた。
「皆様のギルドの活躍を耳にし、ぜひ私の依頼を受けてもらいたいと思いました……話は聞きましたか?」
「はい。裏ギルドから守ってほしいですよね」
「ええ。私が父上の跡を継ぐのを快く思っていない人がいるようです。私を守るのはもちろんですけど……できれば黒幕の存在も明かしてほしいのです」
「黒幕……失礼ですが、黒幕を明かした時、あなたはどうしますか?」
ティーアがこう聞くと、リーナ姫はしばらく考えてこう言った。
「こちらで処罰します」
この時の姫の目を見て、俺は悪寒を感じた。最初と違って冷ややかな目をしていたからだ。
「私は父上の跡を継ぐことを覚悟しています。しかし、一部の人間はまだ私を子ども扱いしているようです。そのためにも、そういう人に私の覚悟を見せつけたいのです」
「分かりました」
覚悟を見せつける、か。大人しそうな姫かと思ったけど、結構度胸もある。そして、話は仕事の話となった。
今日から俺たちは姫の護衛にすることになる。成瀬たち女性陣がメイドとなり、リーナ姫の身辺の世話をする。
俺は騎士団となって、姫を守る他、暗殺計画を企てた奴を暴くこと。以上だ。
「最後にもう一つだけ話があります」
リーナ姫が、俺に近付いてこう言った。
「本来なら、私の部屋は女性だけしか入れませんが、もし奥方と一緒に寝たければ特別に許可しますよ」
「え? じゃああんなことやこんなこともやりたい放題こと?」
「ルハラ! 姫がいる前でなんてこと言うの!」
ヴァリエーレさんも、このルハラの発言に驚いたようだ。だが、姫は小さく笑いながらこう言った。
「お構いなく」
いいのか? こんな所であんなことやっていいのかよ? というか、どうして許可を出す? 別の不安が、俺の中に生まれた。
成瀬:リーナ姫の部屋
その後、私たち女性陣と剣地は別行動をすることになった。最初に言われた通り、私たちはリーナ姫の身の回りの世話を、剣地は騎士団に入って黒幕の調査をすることになった。
「ねー、ケンジ一人で大丈夫?」
私の横にいたルハラがこう聞いてきた。
「今回の仕事、結構きつそうだよー」
「そうね……ナルセ、今日の夜にケンジと合流したら今後のことについてしっかりと話をした方がいいと思うわ」
「はい。私もヴァリエーレさんと同じことを考えていました」
「もしケンジの所に裏ギルドの連中がきたら大変だよ」
「ケンジは多分大丈夫だろう」
と、ヴィルソルが一人だけ冷静にこう言った。
「我が心配なのはナルセと勇者じゃ」
「どうして?」
「お主ら、ロイボの町の宿屋に向かったじゃろ」
「そうだけど」
「その時、アサシンを殺した奴に顔を見られた可能性があるぞ」
「もしかして口封じのために殺される可能性が……」
「そう。もしナルセと勇者がリーナ姫の所にいたら確実に奴らに狙われるだろう」
「向こうは口も防げてターゲットも始末できるからねー」
話を聞き、私の中に緊張感が生まれた。相手は自分の仲間を口封じのために殺す連中。
前に戦ったシリヨク王国の独裁者や、ベロラーダが雇った裏ギルドの連中よりも凶悪で、冷徹なのかもしれない。
そんな奴らを相手に私は戦えるだろうか。
剣地:騎士団の訓練場
俺はあくびをしながら騎士団の訓練を見ていた。見た限り、この人たちの剣の腕前は俺より下だろう。何故かそんな気がする。ソードマスターのスキルを持っているから、相手の腕前も見ただけで判断できるのだろうか。
「貴様、暇そうだな」
隊長らしき人物が、俺に話しかけてきた。
「まぁ……そうですけど」
「私と剣を交えよ。私は貴様がギルドの腕利きの剣士には思えぬ」
「いや、そんなことより姫の暗殺を企てそうな奴を教えてくれませんか?」
「さぁ立て!」
「いや、俺の話を聞けよ! そっちの方が重要だろうが!」
俺の話をスルーし、騎士団の人が俺を無理やり立たせ、木刀を持たせた。
「あーもう、これが終わったら話聞いてくださいよー。姫の命がかかっているので」
「よかろう。この勝負が終わったらいくらでも話してやるわ」
しょうがない。さっさと終わらせて話を聞こう。
俺がこう思っていると、試合が始まった。隊長は勢いよく俺に向かって突っ込んで来た。木刀は両手でしっかりと握り、腕を上げて振り下ろす構えを撮っていた。
隙だらけだな。俺はそう思い、相手の銅を狙って木刀を横に振った。だが、俺の行動に合わせて隊長が木刀を振り下ろした。
「まんまと引っかかったな!」
「わざと弱点をさらしたってわけか」
意外と考えるおっさんだ。俺は後ろに下がり、木刀を両手で構えた。
「ふん、構えを直したところで流れは変わらぬ」
隊長は再び木刀を構え、俺に向かって突っ込んで来た。
「きえええええい!」
俺に接近した隊長は、俺にめがけて木刀を振り下ろした。だが、俺はその動きをすでに読んでいた。俺は隊長の攻撃を防御し、木刀同士がぶつかっている中で木刀を振り払った。
「何!」
振り払った際に隊長の体のバランスがずれた。隊長は転倒しまいと片膝をついたのだ。俺はその隙を狙い、隊長の頭を軽く叩いた。
「一本だ。話聞かせてくれ」
俺は悔しがる隊長の顔を見ながら、こう言った。
試合後、隊長はいろいろと話してくれた。どうやら姫が跡を継ぐのを強く反対している奴がいるらしい。
大臣であるピレプ。このピレプって奴が強く反対していると話を聞いた。
俺はこのピレプって奴に会いたいと隊長に行ったが、隊長曰く、一週間ほど留守にすると言ってどこかへ行ったというのだ。
こいつは少し怪しいな、とにかくこのことを成瀬たちに話さないと。
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