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29.革命の時!

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剣地:外の待機場所


 翌日。俺と成瀬はフィロスさんに言われた場所で待機していた。俺と成瀬の役目は、先陣で戦うこと。

 だが、俺は自分でもう一つの役目を作っていた。それは成瀬の暴走を止めること。今の成瀬は完全にブチ切れている。もう止めるのは俺しかいないだろう。


「成瀬、落ち着けよ。まだ暴れる時じゃないからな」

「ええ。分かっているわ」


 成瀬は冷静に返事を返したが、成瀬の周りから怒りのオーラが出ている。俺……成瀬を止める自信がない。




ヴィルソル:西の酒場


 我らはイーファの店で待機をしている。横には勇者とヴァリエーレ、ルハラがいる。

 レットから言われた我らの役目は、傷ついた人たちに代わって戦うこと。

 だが、顔が知られている勇者はなるべく裏方でサポートするように言われている。


「そろそろパレードが始まるわね」


 時計を見た勇者がこう言った。我はケンジとナルセの無事を心の中で祈っていた。すると、エイトシターが念で我に会話をしてきた。


「ヴィルソル様。準備できました」

「うむ。我の号令に合わせて行動せよ。それまで待機じゃ」

「はっ」


 我は立ち上がり、皆にこう伝えた。


「エイトシターたちの援軍の用意はできた。後はケンジとナルセの動きでどうなるかじゃ」


 その直後、いきなり外から大きなラッパの音が聞こえた。もう、うるさいのう。迷惑じゃのう。


「パレードが始まったみたいだねー」


 ルハラはこう言って外を覗いた。我も気になって外を見ると、王家の紋章が描かれた旗が、いくつも上下に動いていた。


「多分あそこにいるのかな? 魔力でやっちゃう?」

「やらなくていい。我らの役目は代理だ。戦う時ではない」


 我はそう言ってその場に座った。カウンターにいるイーファが、我たちに水を持ってきてくれた。


「一杯飲む? 喉乾いたでしょ」

「ええ」


 我たちはコップを取り、水を飲み干した。


「ラウドたちも動き出しただろうな……無事に帰ってくるといいけど」


 心配そうにイーファがこう言った。昨日イーファから聞いた話じゃが、イーファとラウドは幼馴染。小さいころからこの国で育ち、王の独裁政治に耐えてきた。幼いころに両親を亡くしたためか、ずっと二人で生きてきた。

 そんな苦しい状況を救ってくれたのがツクス。この前処刑されたという男じゃ。その男が処刑された後、ラウドは復讐に燃えているとも聞いた。

 復讐か。そんなものを果たしても、意味はないというのに。まぁ、今の彼らにとっては次のことを考えているから、意味はあるのだろう。

 ま、この国の今後がどうなろうか我にとっては関係ない。我は今まで囚われたモンスターの子供たちを助け出してケンジと結婚する。それでよいのだから。

 我がそう思っていると、近くで爆音が聞こえた。その直後、薄い魔力を感じた。まさかこれは、ナルセの魔力? いや違う。

 あの薄い魔力は別の属性だ。じゃああの爆発は火薬で発生したのか。あいつら、もう動き出したのか?




剣地:待機場所


 戦いは始まった。レットが投げた爆弾がパレード中の兵士の足元へ転がり、大爆発が起きた。

 それをきっかけに大剣を構えたラウドが魔力を纏って宙を飛びながら兵士を攻撃し始めた。その背後では、ラウドの援護をするためフィロスが魔力を使って攻撃をしていた。

 俺は何をしているかというと、後ろで援護射撃をしていた。スナイパーライフルを使い、武器を構えている兵士を撃ち続けていた。

 しばらくしていると、兵士の一部が俺の存在に気付き、剣や槍などをもって襲い掛かってきた。俺はその行動を素早く察知し、剣を装備して襲ってくる奴らを切り始めた。


「ぐあっ!」

「うわ!」

「くそっ……」


 俺に斬られた兵士は、短い悲鳴を上げながらその場へ倒れた。


「急所は外した。命だけは助けてやる」


 俺は奴らにそう言い残し、場所を変えることにした。後ろを振り向き、壁の後ろに隠れている成瀬に合図をし、二人で移動を始めた。

 次に移動した場所は二階建ての家の屋根の上。そこには煙突があるし、ベランダへの出入り口が近いため、隠れることも逃げることもできる。

 俺は成瀬に煙突の後ろに隠れろと言い、スナイパーライフルのスコープで下の状況を調べた。レットは兵士相手に銃を乱射しており、ラウドとフィロスは剣で兵隊を斬りまくっている。

 あの三人、意外と強いもんだなぁと感心していたが、戦況はこちらが不利だった。こっちが俺と成瀬を含めた五人に対し、相手の数は百以上。

 兵士の一人一人の力が弱いとはいえ、戦いが長引けば三人の疲労がたまり、隙を狙われるだろう。俺は急いで変な動きをしようとしている兵士を探し、ライフルで打ち始めた。

 戦いが始まって数時間は経過しただろう。辺りはレットに撃たれた兵士や、ラウドとフィロスに斬られた兵士が倒れていた。他の兵士は返り血を浴びた三人を見て、恐ろしくなったのか逃げ始めた。


「ひぃっ……こいつら……化け物か?」

「逃げよう! こんな連中相手していたら、こっちが死んじまう!」

「うわあああああ!」


 恐れをなした兵士の一部が、悲鳴を上げながら逃げて行った。


「あ! おいコラ待て! 敵前逃亡は死罪に値するぞ!」

「偉そうな態度だな」

「戦える人がいなければ、あんたが戦えばいいじゃないか」


 ラウドとフィロスが、部隊長らしきおっさんに詰め寄った。二人を見て、部隊長のおっさんは悲鳴を上げて逃げて行った。


「ふぅ……何とかなったかな」


 俺は後ろにいる成瀬の方を向き、こう言った。


「この戦いは終わったみたいだな」

「何だ、私たちの出番なかったね」

「なかった方がいいだろ。人なんて殺したくないし」


 俺と成瀬が会話をしている時だった。急に大きな音が聞こえたのだ。成瀬は俺よりいち早くそれに気付き、俺の手を引っ張った。


「な……何だ?」


 直後、巨大なビーム砲のようなものが飛んできた。俺は成瀬に引っ張られたから無事だったが、レットたち三人の安否は分からない。


「ヒャーッハッハ! 格下のクーデター軍共! よくも私の兵士たちをやってくれたな!」


 少し離れた所から、巨大な大砲のようなものが現れた。それは徐々にこっちへ近づいてきていた。


「使えないクズとまとめて、塵にしてくれるわ!」


 俺は急いでスコープで大砲を調べた。大砲の下あたりにコクピットのようなものがあり、そこに王冠を被ったおっさんが玉座のようなものに座っていた。どうやら、あいつがこの国の独裁者なのだろう。


「死ね! カス共がァァァァァ!」


 王様の叫びの直後、大砲の先端に魔力のような塊が発生し、そこからまたビーム砲が放たれた。

 この攻撃で、町の一部がぶっ飛んでしまった。

 俺と成瀬がいる二階建ての家も被害を受け、ビームが近くを通ったせいで発生した風圧で、俺と成瀬は吹き飛んだ。


「きゃあっ!」

「成瀬!」


 俺はすぐにスカイウイングを発動し、成瀬を受け止めた。だが、そのせいで俺たちの存在がばれてしまった。


「おい、あいつらも消せ! 多分クーデター軍の一員だ」


 王様の声が聞こえた。いちいち声が聞こえてくるけど、あのおっさんスピーカーの音量がでかいってこと気付いてないのか? そんなことより、早く逃げねーと塵にされちまう!

 俺は急いで物陰に着地し、その場から離れようとした。すると、誰かが俺と成瀬の腕を引っ張ったのだ。


「二人とも、こっちだ!」


 引っ張ったのはラウドだった。よかった。無事だったのか。

 その後、俺と成瀬は近くの空き家の地下室にいた。そこには怪我をしたレットと、レットと一緒にここまで逃げてきた兵隊がいた。


「あの野郎……俺たちも殺そうとしやがって……」

「嫌だ……あんな野郎の下で働くなんて……」

「生きて帰ってきたらあいつをぶっ殺してやる」


 兵士たちが王様に対し、文句を言っていた。それを聞いていた成瀬が、魔力を発生して兵士たちやレットに触った。触った瞬間、彼らの怪我が一瞬で治った。


「おお……」

「楽になった」

「嬢ちゃん、高度な魔力使いだったのか」


 レットが感心して成瀬の方を見た。だが、次に成瀬はこう言った。


「あいつらは私が片付けます。皆さんはここで待機していてください」


 その言葉を聞き、皆は唖然としていた。そんな空気の中、成瀬は一人で上へ行ってしまった。




成瀬:隠し部屋入り口近く


「やーっと姿を出したか、汚いネズミが! この最新型魔道砲で塵にしてくれるわ」


 あの汚い声が聞こえる。もう我慢できない。私の怒りは限界を超えている。もう……あいつらが生きようが死のうが関係ない。人の命をゴミ扱いするような連中は、ぶっ潰す!

 私は無我夢中で両手に強い魔力を発生し、地面に叩きつけた。私は巨大で丈夫な木を地属性の魔力で作り上げ、操り始めた。木はあいつらの兵器を巻き込み、上へ伸びて行った。


「うわあああああ! 脱出せよ!」

「何じゃこりゃ!」


 あいつらの慌てふためく声が聞こえる。だが、攻撃はまだ終わっていない。これから始まるのだから……。
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