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20.勇者の戦い
しおりを挟む剣地:ギルドの依頼所
ティーアが居候を始めた翌日。俺たちはギルドの依頼所へきていた。
「皆様が受けられる依頼は以下のものです」
受付の姉ちゃんから渡された依頼表を見て、俺達はどの依頼を受けるか相談をしていた。その時、ティーアが何かを見つけて指を指した。
「この依頼を受けようか? 契約金はいるが、報酬がすごい額だよ!」
その依頼の詳細を見て、俺は驚いた。内容はあるモンスターの討伐。そのモンスターというのがバルティードラゴンなのだ。モンスターにもいろんな種類がいるのだが、中でもドラゴン族という厄介な奴らがいる。
名前の通りドラゴンのような奴らで、でかいし皮膚と爪は固いし凶暴だしなんか変な息を吐くという話を聞いている。その息というのが火炎であるのだが、それ以外にも吹雪のような風を出し、雷を口から発射するような奴もいるという。
バルティードラゴンはドラゴンの中でも弱い。だけど俺たちはドラゴンと戦ったことはないので、本当に大丈夫かなと俺は思っていた。
「ねぇ、ドラゴン相手に戦うって大丈夫なの?」
「いざとなったら私が前線に出る。バルティードラゴンはもう千体は討伐した」
この話を聞き、俺は勇者ってスゲーと思った。ティーアもいるし、この依頼でいいかと思った俺はこの依頼を受けた。
討伐対象であるバルティードラゴンがいるのは、ロイボの町から離れた所にある草原。見た所ヤバジカがいるだけで、目立つモンスターは他にはいない。
「こんな所にドラゴンがくるの?」
「ええ。あいつらは餌があればどんな所でも降りてくるわ」
ヴァリエーレさんの質問に対し、ティーアはこう答えていた。いつ襲ってくるか分からない。俺はいざという時にアサルトライフルを構えていた。
「いつ襲ってくるか分からないから、準備をしておいてね」
ティーアは自分の周りに武器を発生し、俺たちにこう言った。それから数分後、俺の耳に何かの鳴き声が響いた。
その声を聞き、ティーアは槍を装備し、成瀬とルハラも戦えるように魔力を開放していて、ヴァリエーレさんも剣を構えている。
「敵が最初に攻撃を仕掛けてきたわね」
何かを察したティーアがこう言った。その直後、俺たちに向かって火炎弾が飛んできた。成瀬が水を使って火炎弾の威力を落とし、俺が残った火炎弾をハンドガンで撃ち落とした。
「ナイスコンビネーション」
ティーアは俺と成瀬にこう言うと、空を睨んだ。すると、上空から灰色のドラゴンが急襲してきた。どうやら、こいつが討伐対象のバルティードラゴンか!
「いっくぞー!」
ティーアは槍を振り回し、バルティードラゴンの足元に近付いて攻撃した。攻撃を察したバルティードラゴンは、足元のティーアを蹴り飛ばそうとしたが、その前にティーアは高く飛んでいた。
「ケンジ、ヴァリエーレ! 援護を!」
俺とヴァリエーレさんはバルティードラゴンに近付き、斬りかかった。だが、俺たちの攻撃はダメージが通らなかったのか、バルティードラゴンは大きく尻尾を振り回して攻撃した。
「危ない!」
「ケンジ!」
俺はヴァリエーレさんをかばい、あいつの尻尾に命中した。とにかく痛いし、攻撃の反動が大きいせいで俺の体は大きく吹き飛んだ。
「うがぁっ!」
地面に倒れた俺を見てか、バルティードラゴンは俺に向かって突進してきた。その後を追うように、ティーアとヴァリエーレさんが走り始めた。
「私の夫に……これ以上傷を与えるわけにはいかない!」
ヴァリエーレさんは猛スピードで走った後、バルティードラゴンに向かって大きくジャンプした。
そして、上に乗っかってあいつの首部分に向けて剣を刺した。この攻撃が意外と効いたようで、バルティードラゴンは悲鳴を上げた。
「そいつは首が弱点だよ、何度も攻撃して!」
ティーアの声が聞こえた。それに聞いて、ヴァリエーレさんは何度も首を指し始めた。だが、あいつは大きく体を振り回し、上に乗っかっているヴァリエーレさんを振り落とした。
「あぶねっ!」
俺は何とかヴァリエーレさんを受け止めた。その時、俺の顔はヴァリエーレさんの胸の中に沈んだ。
「うぶっ」
「ケンジ……ありがとう」
うれしかったような苦しかったような。とにかく今はそんなことどうでもいい。
バルティードラゴンの次の攻撃目標はどうやら俺らしい。近くにヴァリエーレさんがいるから、二人まとめて攻撃するつもりだろう。
そんなことさせるか! 俺はアサルトライフルを構え、あいつの顔面に向けて乱射を始めた。弾丸はあいつの顔面に命中しているのだが、皮膚が固いせいで弾丸は弾かれていく。
徐々にあいつとの距離が縮む一方、ティーアが上空へ飛んでバルティードラゴンに向けて急降下した。その時に槍を構えていて、急降下した勢いで槍は固い皮膚を貫いて刺さった。
「これで効いたはず……あとは……」
「準備オッケー」
「一気に終わらせる!」
成瀬とルハラの合体魔法で終わるだろう。ティーアは二人の攻撃に巻き込まれないよう、後ろへ下がった。
そして、巨大な火炎の渦巻きがバルティードラゴンを包み、大きく動いた。
攻撃が止むと、空から丸焦げになったバルティードラゴンが落ちてきた。ティーアが様子を調べたが、武器を構えて後ろに下がった。
「まだ生きている」
「しぶといな……」
あの攻撃を受けても、バルティードラゴンは息をしていた。こいつの生命力、恐ろしいな。
「いやー、これはちょっときついね……」
ルハラは疲れ果てたのか、その場に座った。その時、成瀬が俺の方を見た。俺は成瀬に近付き、ハンドガンを成瀬に渡した。
「何をするつもりなの?」
「ナルセの魔力をありったけあの銃に込めるのでしょう。そうすれば、あいつを倒せるほどの威力の弾丸ができるはず」
ティーアとヴァリエーレさんはこんな会話をしていた。そう。成瀬の無限大の魔力で作られた弾丸があれば、あいつに強烈な一撃を与えられる。
「私たちであいつの動きを止めるわよ」
「その隙に、ケンジはあいつに攻撃を」
「分かりました」
ヴァリエーレさんとティーアがバルティードラゴンに近付き、足止めを始めた。俺はあいつの動きを読みつつ、成瀬から渡されたハンドガンの銃口をあいつに向けていた。
そして、チャンスが生まれ、俺は引き金を引いた。大きな発砲音の後、成瀬の魔力で作られた弾丸はとんでもないスピードでバルティードラゴンに命中した。
この弾丸を受けた後、バルティードラゴンの体はゆっくりと倒れた。依頼達成。俺たちはバルティードラゴンの討伐に成功した。
剣地:ロイボの町のギルド
俺たちがドラゴンを討伐したと話を聞いてか、ギルドの連中は騒いでいた。
ロイボの町のギルドの中に、龍族を倒すほどの実力がある冒険者はいないからだ。まぁ、今回は勇者であるティーアがいたから何とかなった。
その後、報酬を得た俺たちは一旦部屋に戻っていた。
「あー……腹減ったー」
魔力を使い果たしたルハラは、豪快に腹の音を鳴らしていた。夕飯を食べたばかりなのに、かなり魔力を使ったってことか。
「今日はさすがに疲れたわね……もう寝よ」
ヴァリエーレさんはそう言って、風呂に向かった。すでに入っている成瀬と入るのか。
「今日はお疲れ様、ケンジ!」
で、ティーアは俺の膝の上に座り、甘えてくる。本当に勇者なのかと思っていたが、バルティードラゴンと戦っていた時のティーアを見て、俺は察した。
まだ本当の実力を出していないと。俺たちはかなりへとへとだったが、ティーアはまだぴんぴんしているのだ。
「どうしたの? 私の顔に何かついているの?」
「いや、勇者ってスゲーなーって思った」
俺がこう言うと、ティーアはさらに甘えてきた。こんな場面、成瀬に見せたくねーな。
成瀬:部屋の風呂場
私がお風呂に入っていると、ヴァリエーレさんが入ってきた。私はヴァリエーレさんの背中を洗っていると、ヴァリエーレさんはこう言った。
「私たち、強くならなくてはいけないのかしら」
「強くなりたい……ですか」
確かにそう。バルティードラゴンに勝てたのはティーアがいたから。もし、何の知識もなしにあれと戦っていたら負けていたかもしれない。
「魔王はバルティードラゴンより強い。そう思うと、少し不安になります」
「私も不安です。魔王を相手にどれだけやれるか、不安です」
その後、私たちは湯船に入った。湯船が狭いせいで、ヴァリエーレさんの胸が私の腕に当たる。私より大きい胸、いいなぁ。
「どうしたの、ナルセ?」
私はヴァリエーレさんの胸を見て、こう言った。
「これだけ大きければ、剣地の奴も見てくれるかな」
「そんなことしなくても、ケンジはあなたのことを見ているわよ。今日もナルセとケンジの合わせ技で倒せることができたんじゃない。気にしなくていいわ」
ヴァリエーレさんは私を抱き、こう言った。
「ありがとうございます。ヴァリエーレさん」
ヴァリエーレさんから溢れ出る母性のせいか、かなりリラックスすることができた。
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