11 / 19
十一話
しおりを挟む
「しまった……あの女狐、シャイナ=ノービスめ。そういうことであったか。このガリウス、一生の不覚……おのれ、おのれっ!!」
ガリウスは地団駄を踏み悔しがりました。
頭が良いため、なにか敵の策略を察知したのかもしれません。
私は皆に理解できるよう説明をお願いします。
「お嬢様。お許しを……っ。簡単に街を脱出できたのは、策略です! 辺境の街ザールのアンデッド騒動。これらを解決したことにより、シャイナ=ノービスは聖女としてスティーヴに取り立てられました。ですが、それはおかしなことです。辺境の街ザールは、先代の聖女様の聖遺物が安置されている神聖な土地。アンデッドなど湧くはずのない場所なのです」
「ええ。存じていますよガリウス」
「申し訳ございませぬ。王家の者か、儂のような偏屈な学者くずれしか知り得ぬことではありました。じゃが、気づくべきだった。シャイナはアンデッドを駆逐したのではない……ザールの街にわざと化け物どもを、おびき寄せ、民草を犠牲にし、そして恩着せがましく王子にすり寄ったのです」
「そうだったのですね……犠牲になった民を思うと悔しいですが、その可能性は高そうですね」
私の言葉に、皆は押し黙ります。
悲しんでいるのです。
悔しいのです。
シャイナは国民を裏切り、アンデッドを使い街を襲わせていたのです。
どうして、自分の国民をそんな目に合わせてまで聖女の名が欲しいのでしょうか?
欲しいならばスティーヴも、聖女も差し上げます。
どうかこれ以上は誰も苦しめないで欲しいのです。
両親はあまりの衝撃にその場に崩れ落ち。
アーサーは握る弓にギチギチと力を込めます。
ガリウスは声を張り上げ、家臣の皆に伝えました。
「皆も聞いてくれ。おそらくこの先街道を封鎖されておる。一直線にヴァンハイアーの領土に帰るならば、ザールの街を突っ切るほかない。だが、きっとノービス公爵の手のものが街やその周囲に兵を構えておる。背後からは王子の近衛兵の軍団……我々は、完全に袋の鼠。計略にまんまとしてやられたわけだ。王子とシャイナの手のひらで転がされたわけだ」
神妙な面持ちで、家臣の皆はガリウスの声に耳を傾けます。
研ぎ澄まされていく刃のような、不思議な連帯感がありました。
「じゃが、それがどうした!!」
ガリウスは目を見開き、拳を振り上げます。
「ワシらにはカテリーナ様がいる。それがなによりの正義であり、勝利の方程式じゃ。このままカテリーナお嬢様を守護し堂々とザールの街を突っ切る。異論があるものは前に出よ」
「一人としておりません」
「アーサー。お前には1000人分働いてもらう。お嬢様をお守りして死ぬ覚悟は?」
「馬鹿にしているのか御老人? 言葉は要らず」
「というわけですじゃお嬢様。突っ切りますぞ?」
いやいや、どういうわけなんでしょうか。
ガリウスもアーサーも、家臣の皆さんもギラギラした目で私を守る覚悟を決めたそうです。
何が待ち受けるかわからない、敵の手に落ちたザールの街。
ですが……。
皆を守りたいという気持ちは、私も負けないほど強く祈っています。
さあ、進軍しましょう。
あなたたちは、私が必ず守ります。
ガリウスは地団駄を踏み悔しがりました。
頭が良いため、なにか敵の策略を察知したのかもしれません。
私は皆に理解できるよう説明をお願いします。
「お嬢様。お許しを……っ。簡単に街を脱出できたのは、策略です! 辺境の街ザールのアンデッド騒動。これらを解決したことにより、シャイナ=ノービスは聖女としてスティーヴに取り立てられました。ですが、それはおかしなことです。辺境の街ザールは、先代の聖女様の聖遺物が安置されている神聖な土地。アンデッドなど湧くはずのない場所なのです」
「ええ。存じていますよガリウス」
「申し訳ございませぬ。王家の者か、儂のような偏屈な学者くずれしか知り得ぬことではありました。じゃが、気づくべきだった。シャイナはアンデッドを駆逐したのではない……ザールの街にわざと化け物どもを、おびき寄せ、民草を犠牲にし、そして恩着せがましく王子にすり寄ったのです」
「そうだったのですね……犠牲になった民を思うと悔しいですが、その可能性は高そうですね」
私の言葉に、皆は押し黙ります。
悲しんでいるのです。
悔しいのです。
シャイナは国民を裏切り、アンデッドを使い街を襲わせていたのです。
どうして、自分の国民をそんな目に合わせてまで聖女の名が欲しいのでしょうか?
欲しいならばスティーヴも、聖女も差し上げます。
どうかこれ以上は誰も苦しめないで欲しいのです。
両親はあまりの衝撃にその場に崩れ落ち。
アーサーは握る弓にギチギチと力を込めます。
ガリウスは声を張り上げ、家臣の皆に伝えました。
「皆も聞いてくれ。おそらくこの先街道を封鎖されておる。一直線にヴァンハイアーの領土に帰るならば、ザールの街を突っ切るほかない。だが、きっとノービス公爵の手のものが街やその周囲に兵を構えておる。背後からは王子の近衛兵の軍団……我々は、完全に袋の鼠。計略にまんまとしてやられたわけだ。王子とシャイナの手のひらで転がされたわけだ」
神妙な面持ちで、家臣の皆はガリウスの声に耳を傾けます。
研ぎ澄まされていく刃のような、不思議な連帯感がありました。
「じゃが、それがどうした!!」
ガリウスは目を見開き、拳を振り上げます。
「ワシらにはカテリーナ様がいる。それがなによりの正義であり、勝利の方程式じゃ。このままカテリーナお嬢様を守護し堂々とザールの街を突っ切る。異論があるものは前に出よ」
「一人としておりません」
「アーサー。お前には1000人分働いてもらう。お嬢様をお守りして死ぬ覚悟は?」
「馬鹿にしているのか御老人? 言葉は要らず」
「というわけですじゃお嬢様。突っ切りますぞ?」
いやいや、どういうわけなんでしょうか。
ガリウスもアーサーも、家臣の皆さんもギラギラした目で私を守る覚悟を決めたそうです。
何が待ち受けるかわからない、敵の手に落ちたザールの街。
ですが……。
皆を守りたいという気持ちは、私も負けないほど強く祈っています。
さあ、進軍しましょう。
あなたたちは、私が必ず守ります。
11
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
私が聖女ではない?嘘吐き?婚約者の思い込みが残念なので正してあげます。
逢瀬あいりす
恋愛
私を嘘吐きの聖女と非難する婚約者。えーと、薄々気づいていましたが,貴方は思い込みが激しいようですね。わかりました。この機会に,しっかりきっちり話し合いましょう?
婚約破棄なら,そのあとでお願いしますね?
私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語
追放された令嬢は英雄となって帰還する
影茸
恋愛
代々聖女を輩出して来た家系、リースブルク家。
だがその1人娘であるラストは聖女と認められるだけの才能が無く、彼女は冤罪を被せられ、婚約者である王子にも婚約破棄されて国を追放されることになる。
ーーー そしてその時彼女はその国で唯一自分を助けようとしてくれた青年に恋をした。
そしてそれから数年後、最強と呼ばれる魔女に弟子入りして英雄と呼ばれるようになったラストは、恋心を胸に国へと帰還する……
※この作品は最初のプロローグだけを現段階だけで短編として投稿する予定です!
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
婚約破棄から聖女~今さら戻れと言われても後の祭りです
青の雀
恋愛
第1話
婚約破棄された伯爵令嬢は、領地に帰り聖女の力を発揮する。聖女を嫁に欲しい破棄した侯爵、王家が縁談を申し込むも拒否される。地団太を踏むも後の祭りです。
聖女「王太子殿下と結婚したいです!」王太子「愛する婚約者と結婚出来ないくらいなら死ぬ!」話が進みません。
下菊みこと
恋愛
異世界から来た金目当ての聖女様。婚約者を愛する王太子。そして、王太子の婚約者のお話。
異世界からきた聖女様は金目当てで王太子と結婚したいと駄々を捏ねる。王太子は劇薬まで手に入れて断固拒否。しかし周りは二人の結婚に賛成のようで、王太子の婚約者は精神的に疲れ果てていた。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる