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8最終話(1)
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公爵様と仲直り、というのは違う気がするけれど、元鞘に、というか関係自体が進展したわけだから、もはや新鞘に収まったというべきか、ともかく、再び公爵邸に入った私は、使用人の方々から泣いて大歓迎をされた。
大げさな、と思ったけれど、みんなが公爵様の心配をしていたのだと分かると、心が温かくなった。
結婚式前夜にはまた実家の侯爵邸に戻り、お父様やマヤの泣き言を聞いた。
マヤには自分も公爵邸に連れて行って欲しいと頼まれたが、うっかり私のことをぽろぽろ話してしまいそうなので断った。
公爵邸では強気なお転婆娘ではなく、公爵様に相応しい淑女として振る舞っているのだ。変なことを言われては困る。
朝はまだ日も登らない内に目を覚まし、あれやこれやと準備が行われる。
髪や肌の手入れから始まり、マッサージに手先足先の手入れ、ドレスやお化粧、ヘアセットをして仕上げに白いヴェールを被る。身仕度を全て終える頃には、既に公爵様が馬車で到着し、サロンで優雅に待っていた。
私のドレスと合わせたダークグリーンのコートとブリーチズ、オフホワイトのウエストコート。そこに刺繍された模様から、ボタン、ジャボやカフスのレースまで、全て私が選んだデザインだった。
普段、黒ばかり来ている公爵様は頑なに嫌がっていたが、どうやらちゃんと着てきてくれたようだ。
とても似合っている。それは良い。ただ、悠々とソファに座っている姿を見たら、少しばかり憎たらしくなってきた。
「公爵様。」
その横顔を振り向かせる。
僅かに瞼を持ち上げた公爵様の、「綺麗です。」を待っていたが、ヴェールに透ける私の表情がいけなかったのか、公爵様からは別の言葉が放たれた。
「大丈夫ですか?どこか、具合の悪いところが?」
「…美しく着飾った花嫁を見て、一言目がそれですか?」
公爵様が私の手を取る。
「すみません。それは、言うまでもなく綺麗でしたので。世界の果てまで行ったとしても、こんなに美しい光景を見る事は叶わないでしょう。」
それを聴いて、少しだけ口元が弛んだ。
しかし、と公爵様は続ける。
「なんだか疲れたような顔をしています。体調が優れないのなら、正直に言ってください。」
優しい。うるっと目が湿気を帯びると、身仕度を率先して進めてくれた乳母の人差し指が横から飛んできた。
「泣かない!」
私も公爵様もびくっと肩が竦んだ。
縋るように公爵様を見つめる。
「お腹が空きました。疲れました。」
「お嬢様、人生で1番の晴れ舞台なのですから!」
また横から諫言が飛んでくる。私の背はだんだん萎れるように丸くなっていった。
不意に、公爵様が握っていた私の手を持ち上げて、キスを落とした。
「フローラ、朝から支度を頑張ってくれたのですね。ありがとうございます。」
そう言って私に手を伸ばそうとすると、「触らない!」と公爵様にまで諫言が飛ぶ。当然、公爵様の手はぴたりと止まった。
「頭には触らないでください、髪型が崩れます。お顔に触れてもいけません、お化粧がとれてしまいます。なるべく汗をかかないように、訳も無く身を寄せ合うこともお控えください。」
乳母の諫言で汗をかきそうだけれど。
「…はい。」
公爵様は気押されている。おずおずと手が引っ込んだ。
乳母、恐るべし。
いろいろ言いたいことはあったが、これ以上乳母を刺激しないように口を閉じた。
「そろそろ出ましょうか。」
「そうですね。」
結婚式に向かうとは思えないようなもやもやした気分で、公爵様の曲げた肘に右手を絡めた。
邸を出て馬車に乗ろうとすると、その手前にお父様が立っていた。身なりを見るに、教会へ向かう準備はできているようだ。
お父様は神妙な顔つきで、私たちを視認するなり両手を大きく広げた。心なしか体が小刻みに震えている。
何をしているのかしら?
凝視していると、目に涙を浮かべて、力強くも震えた声を出した。
「この先へ進みたかったら、私を倒して行きなさい!」
自分の顔が歪むのが分かる。戯言を。
ふざけているのかしら。1度やってみたかったとか?
公爵様をちらりと覗くと、酷く困惑した様子だった。なんと声を掛ければいいか分からない、そう思っているような痛々しい表情を浮かべている。
「どうしましょう?」
そんなことを訊いてくるので、私も少し悪戯心が芽生えた。
「どうって、倒してください。」
公爵様は、え、と見るからに困った顔をした。
「私と結婚したいのですよね?では、倒してください。」
「…いいのですね?」
「はい、いいです。」
お父様は自業自得。
「…侯爵、そこをどかなければ侯爵領の民の関料を引き上げることになりますよ。」
お父様はぐっと息を呑んだ。
「私の領地で行われる大市の出店料も、交易内容も見直されたくなければ、どいてください。」
お父様は泣きながら膝をついた。
「フローラ、本当に嫁に行ってしまうのか?こんなお父様を置いて、権力を振りかざしてくる公爵様に嫁ぐのか?」
「いいから早く教会に向かってください。」
私が公爵様とお父様の横を通って馬車の前に行くと、うおおんと泣きじゃくるお父様に、すごい形相で歩み寄るお母様が見えた。
あとはお母様にお任せしよう。
公爵様のエスコートで馬車に乗り、馬車はゆっくりと走り出した。
公爵様は心配そうにお父様を目で追っていたが、見えなくなると、はぁとため息を吐いた。
「意外と汚い手を使うのですね。」
単なる率直な感想だったのだが、公爵様はバツの悪そうな顔をした。
「これが私の戦い方です。武には精通していませんので。」
「もしかして、私がプロポーズを断っていたらこれをされたのですか?」
「…貴女は家の益を考える方でしょう。確実に承諾を得るなら最善の方法です。」
笑いが込み上げた。公爵様にくっついて寄りかかりたくなったが、乳母の言葉を思い出し、ぐっと堪える。
私もため息がこぼれた。
「早くドレスを脱いで公爵様に触れたいです。」
公爵様はくすりと笑う。
「今日だけ、我慢しましょう。一生の記憶に残る、特別な日ですから。」
程無くして馬車が止まった。まだ目的地には着いていない。
外を見るとまだ年若い、と言っても私と同じか下くらいの青年たちが馬車を取り囲んでいた。護衛の騎士たちがその青年たちと押し合いへし合いしていた。
ちらほらと見知った顔が見える。
あぁ、と公爵様が頭を抱えた。
「私のせいですね。」
歳の差のある再婚が取り行われると、自分たちの婚姻の機会を奪われたという理由で、しばしばこのように青年たちが集まって暴動を起こすことがあった。
これもそういうことなのだろう。
私はにこりと笑って、俯く公爵様の肩をぽんと叩いた。
「次は私が参ります。」
公爵様の手を借りながらゆっくりと馬車を降りて行くと、おぉ、とどよめきが湧き、一瞬、時が止まったように静かになった。
最初に声を上げたのは、青年たちのリーダーと思しき男だ。
「フローラ嬢!こんな婚姻は不当だ!家の繁栄、貴族の繁栄の為にも、婚姻は年齢の見合った者同士で行われるべきだ!」
そうだそうだ、と周りも続く。
短い黒髪にくっきりとした目鼻立ち。見覚えのある顔だ。いつかの夜会でダンスに誘われて、断ったことがある。
「お久しぶりですね、ギャストン卿。相変わらず情熱的ですね。」
私へのアプローチも、鮮明に覚えているほどしつこかった。
「一応言っておきますが、私たちに害を及ぼそうとしたわけですから、あなた方みんな、騎士たちに捕えさせますよ。名前も家門もしっかり記録させて頂きます。知り合いのご令嬢たちに目いっぱい自慢できますわ。ギャストン卿も、そこのアドルフ卿も、そちらにいらっしゃる伯爵令息も子爵も、ここにいるみなさんが結婚式を邪魔しにくる程私を熱烈に愛し、追いかけてくれるのですもの。」
可笑しくて笑みがこぼれる。そんな自慢を言いふらされては、
「あなた方の婚期もずいぶんと遅れそうですわね、ふふ。」
そう言うと、はっとした表情を浮かべた小物たちから散り散りに逃げ始めた。
私は、ふんと鼻を鳴らした。
私と公爵様の結婚式、そして披露宴は、街を挙げての一大イベント。平民も貴族もあちこちに集まりお祭り騒ぎが始まるという時に、本当に良縁を探しているのなら、こんなところで騒ぎなど起こしている場合ではないはずだ。
私が馬車に戻り道が開くと、馬車はまた動き始めた。
「まったく、本当に全員の名前を令嬢たちに知らせてやろうかしら。」
朝から疲れているというのに余計なロスタイムを取られて腹立たしい。
しかし公爵様は苦い表情で首を横に振った。
「そう意地悪しないであげてください。彼らの言い分も理解できます。」
むっとして公爵様の頬をつねる。肉が無くて掴みにくいが、無理やりつまんだ。
「私の言い分は?」
「わ、分かっているつもりです。」
「それならいいです。」
頬を離した場所がほのかに赤くなり、公爵様は指先で撫でた。
誰がなんと言おうが私は公爵様のことが好きで、この結婚を反故にする気はさらさら無い。公爵様もそう思ってくれているといいなと思う。
それにしても前途多難だ。教会に行くまでにこんなにいろいろ起こるものだろうか。イライラする。
もしまた邪魔が入りでもしたら、今度は絶対に容赦しない。
大げさな、と思ったけれど、みんなが公爵様の心配をしていたのだと分かると、心が温かくなった。
結婚式前夜にはまた実家の侯爵邸に戻り、お父様やマヤの泣き言を聞いた。
マヤには自分も公爵邸に連れて行って欲しいと頼まれたが、うっかり私のことをぽろぽろ話してしまいそうなので断った。
公爵邸では強気なお転婆娘ではなく、公爵様に相応しい淑女として振る舞っているのだ。変なことを言われては困る。
朝はまだ日も登らない内に目を覚まし、あれやこれやと準備が行われる。
髪や肌の手入れから始まり、マッサージに手先足先の手入れ、ドレスやお化粧、ヘアセットをして仕上げに白いヴェールを被る。身仕度を全て終える頃には、既に公爵様が馬車で到着し、サロンで優雅に待っていた。
私のドレスと合わせたダークグリーンのコートとブリーチズ、オフホワイトのウエストコート。そこに刺繍された模様から、ボタン、ジャボやカフスのレースまで、全て私が選んだデザインだった。
普段、黒ばかり来ている公爵様は頑なに嫌がっていたが、どうやらちゃんと着てきてくれたようだ。
とても似合っている。それは良い。ただ、悠々とソファに座っている姿を見たら、少しばかり憎たらしくなってきた。
「公爵様。」
その横顔を振り向かせる。
僅かに瞼を持ち上げた公爵様の、「綺麗です。」を待っていたが、ヴェールに透ける私の表情がいけなかったのか、公爵様からは別の言葉が放たれた。
「大丈夫ですか?どこか、具合の悪いところが?」
「…美しく着飾った花嫁を見て、一言目がそれですか?」
公爵様が私の手を取る。
「すみません。それは、言うまでもなく綺麗でしたので。世界の果てまで行ったとしても、こんなに美しい光景を見る事は叶わないでしょう。」
それを聴いて、少しだけ口元が弛んだ。
しかし、と公爵様は続ける。
「なんだか疲れたような顔をしています。体調が優れないのなら、正直に言ってください。」
優しい。うるっと目が湿気を帯びると、身仕度を率先して進めてくれた乳母の人差し指が横から飛んできた。
「泣かない!」
私も公爵様もびくっと肩が竦んだ。
縋るように公爵様を見つめる。
「お腹が空きました。疲れました。」
「お嬢様、人生で1番の晴れ舞台なのですから!」
また横から諫言が飛んでくる。私の背はだんだん萎れるように丸くなっていった。
不意に、公爵様が握っていた私の手を持ち上げて、キスを落とした。
「フローラ、朝から支度を頑張ってくれたのですね。ありがとうございます。」
そう言って私に手を伸ばそうとすると、「触らない!」と公爵様にまで諫言が飛ぶ。当然、公爵様の手はぴたりと止まった。
「頭には触らないでください、髪型が崩れます。お顔に触れてもいけません、お化粧がとれてしまいます。なるべく汗をかかないように、訳も無く身を寄せ合うこともお控えください。」
乳母の諫言で汗をかきそうだけれど。
「…はい。」
公爵様は気押されている。おずおずと手が引っ込んだ。
乳母、恐るべし。
いろいろ言いたいことはあったが、これ以上乳母を刺激しないように口を閉じた。
「そろそろ出ましょうか。」
「そうですね。」
結婚式に向かうとは思えないようなもやもやした気分で、公爵様の曲げた肘に右手を絡めた。
邸を出て馬車に乗ろうとすると、その手前にお父様が立っていた。身なりを見るに、教会へ向かう準備はできているようだ。
お父様は神妙な顔つきで、私たちを視認するなり両手を大きく広げた。心なしか体が小刻みに震えている。
何をしているのかしら?
凝視していると、目に涙を浮かべて、力強くも震えた声を出した。
「この先へ進みたかったら、私を倒して行きなさい!」
自分の顔が歪むのが分かる。戯言を。
ふざけているのかしら。1度やってみたかったとか?
公爵様をちらりと覗くと、酷く困惑した様子だった。なんと声を掛ければいいか分からない、そう思っているような痛々しい表情を浮かべている。
「どうしましょう?」
そんなことを訊いてくるので、私も少し悪戯心が芽生えた。
「どうって、倒してください。」
公爵様は、え、と見るからに困った顔をした。
「私と結婚したいのですよね?では、倒してください。」
「…いいのですね?」
「はい、いいです。」
お父様は自業自得。
「…侯爵、そこをどかなければ侯爵領の民の関料を引き上げることになりますよ。」
お父様はぐっと息を呑んだ。
「私の領地で行われる大市の出店料も、交易内容も見直されたくなければ、どいてください。」
お父様は泣きながら膝をついた。
「フローラ、本当に嫁に行ってしまうのか?こんなお父様を置いて、権力を振りかざしてくる公爵様に嫁ぐのか?」
「いいから早く教会に向かってください。」
私が公爵様とお父様の横を通って馬車の前に行くと、うおおんと泣きじゃくるお父様に、すごい形相で歩み寄るお母様が見えた。
あとはお母様にお任せしよう。
公爵様のエスコートで馬車に乗り、馬車はゆっくりと走り出した。
公爵様は心配そうにお父様を目で追っていたが、見えなくなると、はぁとため息を吐いた。
「意外と汚い手を使うのですね。」
単なる率直な感想だったのだが、公爵様はバツの悪そうな顔をした。
「これが私の戦い方です。武には精通していませんので。」
「もしかして、私がプロポーズを断っていたらこれをされたのですか?」
「…貴女は家の益を考える方でしょう。確実に承諾を得るなら最善の方法です。」
笑いが込み上げた。公爵様にくっついて寄りかかりたくなったが、乳母の言葉を思い出し、ぐっと堪える。
私もため息がこぼれた。
「早くドレスを脱いで公爵様に触れたいです。」
公爵様はくすりと笑う。
「今日だけ、我慢しましょう。一生の記憶に残る、特別な日ですから。」
程無くして馬車が止まった。まだ目的地には着いていない。
外を見るとまだ年若い、と言っても私と同じか下くらいの青年たちが馬車を取り囲んでいた。護衛の騎士たちがその青年たちと押し合いへし合いしていた。
ちらほらと見知った顔が見える。
あぁ、と公爵様が頭を抱えた。
「私のせいですね。」
歳の差のある再婚が取り行われると、自分たちの婚姻の機会を奪われたという理由で、しばしばこのように青年たちが集まって暴動を起こすことがあった。
これもそういうことなのだろう。
私はにこりと笑って、俯く公爵様の肩をぽんと叩いた。
「次は私が参ります。」
公爵様の手を借りながらゆっくりと馬車を降りて行くと、おぉ、とどよめきが湧き、一瞬、時が止まったように静かになった。
最初に声を上げたのは、青年たちのリーダーと思しき男だ。
「フローラ嬢!こんな婚姻は不当だ!家の繁栄、貴族の繁栄の為にも、婚姻は年齢の見合った者同士で行われるべきだ!」
そうだそうだ、と周りも続く。
短い黒髪にくっきりとした目鼻立ち。見覚えのある顔だ。いつかの夜会でダンスに誘われて、断ったことがある。
「お久しぶりですね、ギャストン卿。相変わらず情熱的ですね。」
私へのアプローチも、鮮明に覚えているほどしつこかった。
「一応言っておきますが、私たちに害を及ぼそうとしたわけですから、あなた方みんな、騎士たちに捕えさせますよ。名前も家門もしっかり記録させて頂きます。知り合いのご令嬢たちに目いっぱい自慢できますわ。ギャストン卿も、そこのアドルフ卿も、そちらにいらっしゃる伯爵令息も子爵も、ここにいるみなさんが結婚式を邪魔しにくる程私を熱烈に愛し、追いかけてくれるのですもの。」
可笑しくて笑みがこぼれる。そんな自慢を言いふらされては、
「あなた方の婚期もずいぶんと遅れそうですわね、ふふ。」
そう言うと、はっとした表情を浮かべた小物たちから散り散りに逃げ始めた。
私は、ふんと鼻を鳴らした。
私と公爵様の結婚式、そして披露宴は、街を挙げての一大イベント。平民も貴族もあちこちに集まりお祭り騒ぎが始まるという時に、本当に良縁を探しているのなら、こんなところで騒ぎなど起こしている場合ではないはずだ。
私が馬車に戻り道が開くと、馬車はまた動き始めた。
「まったく、本当に全員の名前を令嬢たちに知らせてやろうかしら。」
朝から疲れているというのに余計なロスタイムを取られて腹立たしい。
しかし公爵様は苦い表情で首を横に振った。
「そう意地悪しないであげてください。彼らの言い分も理解できます。」
むっとして公爵様の頬をつねる。肉が無くて掴みにくいが、無理やりつまんだ。
「私の言い分は?」
「わ、分かっているつもりです。」
「それならいいです。」
頬を離した場所がほのかに赤くなり、公爵様は指先で撫でた。
誰がなんと言おうが私は公爵様のことが好きで、この結婚を反故にする気はさらさら無い。公爵様もそう思ってくれているといいなと思う。
それにしても前途多難だ。教会に行くまでにこんなにいろいろ起こるものだろうか。イライラする。
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