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侯爵邸自慢の花園にある、ドーム型の屋根が付いたガゼボ。私のお気に入りスポットに紅茶とお菓子を用意して、ふふふ、とアリスが楽しそうに肩を揺らした。
「お父様、発狂されたのではない?」
「ふふ、まさか。公爵様相手にそんな態度とれないわよ。顔は青ざめていたけれど。」
「そりゃ驚くわよね。娘の結婚相手が自分より年上なんだもの。」
1つ上なだけで大袈裟な気もするけれど、やりにくそうに言葉を選んでいた公爵様の様子を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。
午前中のことだった。約束通りの時間に公爵様がアルヴィエ家に到着し、私の両親と顔を合わせたのだ。
公爵様はさすが国王陛下から信頼されているだけあって、真実と作り話とを上手く織り交ぜ、歳の差の懸念もあってなかなか挨拶できずにいたが決心を固め、お互いに良い関係を築こうと約束をした、というようなことを打ち合わせもしていないのにすらすらと述べていた。
私が公爵様のできる男感に痺れているあっという間に婚約の承諾を得た。
進捗状況を随時手紙で知らせていたアリスは、その速報を訊きにわざわざやって来たのだ。
「それで、閣下はお帰りになったの?」
私は肩を竦めた。
「いいえ。ランチを皆で食べた後、男同士で話がしたいってお父様に捉まっているわ。」
「あらあら、婿いびり?」
「お父様にそんな度胸は無いと思うわよ。」
2人分の笑い声がそよそよと風に流れた。
アリスは綺麗に結った黒い髪を靡かせて、本当におめでとうと目を細めた。
目的はマーセル王子殿下を避ける為だったけれど、公爵様は私にとってドストライクな殿方で、そのことをアリスも知っていた。私と同じくらい喜んでくれているのだとその表情を見れば分かる。
ありがとう、と私も満面の笑顔を返した。
「婚約式はどうするの?」
この国では結婚式の前に先だって、婚約式が必要になる。なかには婚約式をしただけで結婚したものとみなし、結婚式を行わない者もいたが、私と、特に公爵様は由緒正しい高位貴族。当然、伝統に倣ってどちらも行われる。
「まだ詳しく話はしていないけれど、結婚式をなるべく早くしたいから、婚約式は身内だけですることにしたの。」
「あら、そうなの。それではわたくしは参列できないのね。」
残念そうに眉を下げるアリスは、わたくしが急かしたようなものだものね、と肩を落とした。
私が口を開く前に、この花やかなガゼボに似合わない、重々しい低い声が飛び込んできた。
「いえ、レディ・アリスにはぜひ一緒に参列して頂くようにと、すでに王子に伝えてあります。」
花達が一斉に震え上がったような気がしたが、実際に驚いて竦みあがったのはアリスだった。すぐに立ち上がって美しいカーテシーを披露したが、私の目は誤魔化せない。僅かに表情を引きつらせている。
珍しいアリスの姿に笑いそうになったが、それよりも気になったのは公爵様の発言についてだった。
「婚約式をすると、殿下にお伝えしたのですか?」
「ええ。先日、陛下に婚姻の許可を頂きに登城した時、ちょうど王子とも顔を合わせたのでその際に。」
「相手は私、フローラ・アルヴィエだということも?」
「はい。なので親友である婚約者どのと、ぜひ御一緒にと。そういう目的での婚姻なのでそのようにしたのですが、まずかったでしょうか?」
「い、いえ、問題ありません。」
できるお方とは思っていたが、予想以上に仕事が早い。アリスまで目をぱちくりさせている。
「なので、ささやかな婚約式になるとは思いますがぜひご参列ください、レディ・アリス。」
ふわりと優雅な薔薇を咲かせるように微笑むアリスに目を奪われて、はっとした。アリスは、老若男女、誰もが見惚れる超絶美女なのだ。
私は咄嗟に公爵様の手を掴んだ。注意をこちらに向けるように、ぐいと引っ張る。
「公爵様、どうぞ隣にお座りください。」
「では、失礼します。」
隣に、など無礼かと思ったが、婚約者という肩書きのおかげか公爵様は特に気にした様子もなく腰を下ろした。
軽く肩がぶつかり、心臓が跳ねた。が、なんともなさそうな公爵様を見て、私も落ち着かなければと左手で胸を押さえる。
くすり。笑いをこぼしたのはアリスだった。
「あらあら、とても仲がよろしいのですねぇ。」
何を見てにやけているのかとアリスの視線を追うと、その先にあったのは私と公爵様の繋がれたままの手。
「もっ!ももも申し訳ありません!」
公爵様があまりに自然で掴んでいたことを忘れていた。
咄嗟に手を引き、ばくばく暴れる心臓を抑えたが、アリスのくすくすと笑う声でますます顔が熱くなる。
「いえ。…私などにそのように赤面なさるとは、フローラは本当に男性に免疫が無いのですね。」
いいえ、あなただからどきどきするのです、公爵様。
「嬉しいですか?」
アリスが尋ねた。にこにこ笑顔の中に、いたずら心がちらついて見える。
公爵様を困らせないで、と尖った視線を向けてみたが、効果は無かった。
しかし公爵様はさすが、困る素振りも見せずにさらりと答えた。
「親友の婚約者として、どう答えたら合格でしょうか?」
「嬉しい、と。」
「では素直に喜ばせていただきましょう。」
あぁ、もう。どうしてさらっとそういうことが言えるのですか。私に対してそういう感情を持ち合わせていないからですか。思わせぶりなことばかり言ってずるいです。
私はまだ冷めない顔の口を尖らせた。
アリスは満足な返答だったようで、目を輝かせながら、公爵様に見えない位置で握った拳の親指をぐっと立てて見せた。
いや、ぐっ、じゃない。私はじとりと睨む。
「ところで、素敵な庭ですね。このガゼボも含め、まるで貴女をイメージしたように華やかです。」
「ありがとうございます。」
公爵様が感心した様子であちこちに目を配らせるので、私は誇らしくなった。
「私が産まれた時に、お父様が手配してくださった花園です。子供の頃からアリスと過ごしてきた場所で、1番のお気に入りスポットなので、そう仰って頂けると嬉しいです。」
そう言って笑顔を向けると、公爵様は表情を変えずに「1番…。」とぽつりと呟いた。
失言だっただろうか。お邸としては公爵様の大豪邸の方が壮大なわけだし、そちらを褒めるべきだったかもしれない。
不意に公爵様が立ち上がった。
「本当は場所を移そうと思っていたのですが。」
公爵様の立派な上着のポケットから小箱を取り出す。
もしかしてだけどあの大きさは、リングケースじゃないだろうか。リングケースな気がする。リングケースであれ!
はやる期待にどきどきと胸が高鳴った。
「せっかくなのでレディ・アリスには証人になって頂きましょう。」
「え、ええ、もちろん。光栄ですわ。」
どうやら胸が高鳴っているのは私だけではないらしい。落ち着き払った公爵様のゆっくりとした動作と物言いに、アリスが早く早くと目を輝かせている。私も同じ目をしているかもしれないが。
公爵様は片膝を付き、私の前で箱を開いて見せた。やはりリングケースだった。顔を出した指輪が、待ってましたと言わんばかりに輝き、公爵様が婚約指輪ですと明々白々たる解説を添えた。
「フローラ、今すぐ指にお付けしてもよろしいでしょうか。」
「…はい。」
公爵様は箱を置き、指輪を手にすると私に骨っぽいこつこつとした白い手を差し出した。私も自身のそれを重ねる。
薬指にすっと指輪が納まる。
金のリングに、点々と填められたピンクダイヤモンドが花の形になっている。決して派手ではなく、シンプルなデザインに公爵様らしい気品を感じた。
気づけば、わぁ、と声に出ていた。
「素敵です。」
「ラナンキュラスという花をモチーフにしてもらいました。ふんわりと優しい形をしていて、貴女によく似合う花なのです。私と貴女の約束がこのダイヤモンドのように固く、金のように錆びないことを願っています。フローラ・アルヴィエ、私と結婚してもらえますか?」
いくらビジネスと唱えたところで、どうして蕩けずにいられるだろうか。無理に決まっている。
輝く指輪も、指輪に込められた意味も、上目遣いの公爵様も、今この瞬間の全てが素敵過ぎて言葉にならない。
「はい。…嬉しいです。」
公爵様はほっとしたように軽く息を吐き出し、再び私の横に座った。
ぱちぱちとアリスの拍手が鳴りやまない。意外とロマンチックなのですね、と美しい満面の笑みを見せるものだから私も蕩けている場合ではなくなり、注意深く公爵様の表情を観察するはめになった。いつも通り、大して動くことは無かったが。
「お父様、発狂されたのではない?」
「ふふ、まさか。公爵様相手にそんな態度とれないわよ。顔は青ざめていたけれど。」
「そりゃ驚くわよね。娘の結婚相手が自分より年上なんだもの。」
1つ上なだけで大袈裟な気もするけれど、やりにくそうに言葉を選んでいた公爵様の様子を思い出すと、自然と笑みがこぼれた。
午前中のことだった。約束通りの時間に公爵様がアルヴィエ家に到着し、私の両親と顔を合わせたのだ。
公爵様はさすが国王陛下から信頼されているだけあって、真実と作り話とを上手く織り交ぜ、歳の差の懸念もあってなかなか挨拶できずにいたが決心を固め、お互いに良い関係を築こうと約束をした、というようなことを打ち合わせもしていないのにすらすらと述べていた。
私が公爵様のできる男感に痺れているあっという間に婚約の承諾を得た。
進捗状況を随時手紙で知らせていたアリスは、その速報を訊きにわざわざやって来たのだ。
「それで、閣下はお帰りになったの?」
私は肩を竦めた。
「いいえ。ランチを皆で食べた後、男同士で話がしたいってお父様に捉まっているわ。」
「あらあら、婿いびり?」
「お父様にそんな度胸は無いと思うわよ。」
2人分の笑い声がそよそよと風に流れた。
アリスは綺麗に結った黒い髪を靡かせて、本当におめでとうと目を細めた。
目的はマーセル王子殿下を避ける為だったけれど、公爵様は私にとってドストライクな殿方で、そのことをアリスも知っていた。私と同じくらい喜んでくれているのだとその表情を見れば分かる。
ありがとう、と私も満面の笑顔を返した。
「婚約式はどうするの?」
この国では結婚式の前に先だって、婚約式が必要になる。なかには婚約式をしただけで結婚したものとみなし、結婚式を行わない者もいたが、私と、特に公爵様は由緒正しい高位貴族。当然、伝統に倣ってどちらも行われる。
「まだ詳しく話はしていないけれど、結婚式をなるべく早くしたいから、婚約式は身内だけですることにしたの。」
「あら、そうなの。それではわたくしは参列できないのね。」
残念そうに眉を下げるアリスは、わたくしが急かしたようなものだものね、と肩を落とした。
私が口を開く前に、この花やかなガゼボに似合わない、重々しい低い声が飛び込んできた。
「いえ、レディ・アリスにはぜひ一緒に参列して頂くようにと、すでに王子に伝えてあります。」
花達が一斉に震え上がったような気がしたが、実際に驚いて竦みあがったのはアリスだった。すぐに立ち上がって美しいカーテシーを披露したが、私の目は誤魔化せない。僅かに表情を引きつらせている。
珍しいアリスの姿に笑いそうになったが、それよりも気になったのは公爵様の発言についてだった。
「婚約式をすると、殿下にお伝えしたのですか?」
「ええ。先日、陛下に婚姻の許可を頂きに登城した時、ちょうど王子とも顔を合わせたのでその際に。」
「相手は私、フローラ・アルヴィエだということも?」
「はい。なので親友である婚約者どのと、ぜひ御一緒にと。そういう目的での婚姻なのでそのようにしたのですが、まずかったでしょうか?」
「い、いえ、問題ありません。」
できるお方とは思っていたが、予想以上に仕事が早い。アリスまで目をぱちくりさせている。
「なので、ささやかな婚約式になるとは思いますがぜひご参列ください、レディ・アリス。」
ふわりと優雅な薔薇を咲かせるように微笑むアリスに目を奪われて、はっとした。アリスは、老若男女、誰もが見惚れる超絶美女なのだ。
私は咄嗟に公爵様の手を掴んだ。注意をこちらに向けるように、ぐいと引っ張る。
「公爵様、どうぞ隣にお座りください。」
「では、失礼します。」
隣に、など無礼かと思ったが、婚約者という肩書きのおかげか公爵様は特に気にした様子もなく腰を下ろした。
軽く肩がぶつかり、心臓が跳ねた。が、なんともなさそうな公爵様を見て、私も落ち着かなければと左手で胸を押さえる。
くすり。笑いをこぼしたのはアリスだった。
「あらあら、とても仲がよろしいのですねぇ。」
何を見てにやけているのかとアリスの視線を追うと、その先にあったのは私と公爵様の繋がれたままの手。
「もっ!ももも申し訳ありません!」
公爵様があまりに自然で掴んでいたことを忘れていた。
咄嗟に手を引き、ばくばく暴れる心臓を抑えたが、アリスのくすくすと笑う声でますます顔が熱くなる。
「いえ。…私などにそのように赤面なさるとは、フローラは本当に男性に免疫が無いのですね。」
いいえ、あなただからどきどきするのです、公爵様。
「嬉しいですか?」
アリスが尋ねた。にこにこ笑顔の中に、いたずら心がちらついて見える。
公爵様を困らせないで、と尖った視線を向けてみたが、効果は無かった。
しかし公爵様はさすが、困る素振りも見せずにさらりと答えた。
「親友の婚約者として、どう答えたら合格でしょうか?」
「嬉しい、と。」
「では素直に喜ばせていただきましょう。」
あぁ、もう。どうしてさらっとそういうことが言えるのですか。私に対してそういう感情を持ち合わせていないからですか。思わせぶりなことばかり言ってずるいです。
私はまだ冷めない顔の口を尖らせた。
アリスは満足な返答だったようで、目を輝かせながら、公爵様に見えない位置で握った拳の親指をぐっと立てて見せた。
いや、ぐっ、じゃない。私はじとりと睨む。
「ところで、素敵な庭ですね。このガゼボも含め、まるで貴女をイメージしたように華やかです。」
「ありがとうございます。」
公爵様が感心した様子であちこちに目を配らせるので、私は誇らしくなった。
「私が産まれた時に、お父様が手配してくださった花園です。子供の頃からアリスと過ごしてきた場所で、1番のお気に入りスポットなので、そう仰って頂けると嬉しいです。」
そう言って笑顔を向けると、公爵様は表情を変えずに「1番…。」とぽつりと呟いた。
失言だっただろうか。お邸としては公爵様の大豪邸の方が壮大なわけだし、そちらを褒めるべきだったかもしれない。
不意に公爵様が立ち上がった。
「本当は場所を移そうと思っていたのですが。」
公爵様の立派な上着のポケットから小箱を取り出す。
もしかしてだけどあの大きさは、リングケースじゃないだろうか。リングケースな気がする。リングケースであれ!
はやる期待にどきどきと胸が高鳴った。
「せっかくなのでレディ・アリスには証人になって頂きましょう。」
「え、ええ、もちろん。光栄ですわ。」
どうやら胸が高鳴っているのは私だけではないらしい。落ち着き払った公爵様のゆっくりとした動作と物言いに、アリスが早く早くと目を輝かせている。私も同じ目をしているかもしれないが。
公爵様は片膝を付き、私の前で箱を開いて見せた。やはりリングケースだった。顔を出した指輪が、待ってましたと言わんばかりに輝き、公爵様が婚約指輪ですと明々白々たる解説を添えた。
「フローラ、今すぐ指にお付けしてもよろしいでしょうか。」
「…はい。」
公爵様は箱を置き、指輪を手にすると私に骨っぽいこつこつとした白い手を差し出した。私も自身のそれを重ねる。
薬指にすっと指輪が納まる。
金のリングに、点々と填められたピンクダイヤモンドが花の形になっている。決して派手ではなく、シンプルなデザインに公爵様らしい気品を感じた。
気づけば、わぁ、と声に出ていた。
「素敵です。」
「ラナンキュラスという花をモチーフにしてもらいました。ふんわりと優しい形をしていて、貴女によく似合う花なのです。私と貴女の約束がこのダイヤモンドのように固く、金のように錆びないことを願っています。フローラ・アルヴィエ、私と結婚してもらえますか?」
いくらビジネスと唱えたところで、どうして蕩けずにいられるだろうか。無理に決まっている。
輝く指輪も、指輪に込められた意味も、上目遣いの公爵様も、今この瞬間の全てが素敵過ぎて言葉にならない。
「はい。…嬉しいです。」
公爵様はほっとしたように軽く息を吐き出し、再び私の横に座った。
ぱちぱちとアリスの拍手が鳴りやまない。意外とロマンチックなのですね、と美しい満面の笑みを見せるものだから私も蕩けている場合ではなくなり、注意深く公爵様の表情を観察するはめになった。いつも通り、大して動くことは無かったが。
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