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「…レディ・フローラ、私の勘違いでしたら大変申し訳ないのですが、もしかすると、私に好意を持ってくれているのですか?」
火に油を注ぐというのは正にこのことだ。私の頭は今、本当に燃え上がっているのではないか。そう疑ってしまうほど顔が熱く、汗がだくだくと流れ出た。
脳が消火を呼びかける。警鐘が鳴り響き、てんやわんやしている脳内にぽつりと冷静に現れたのは、やはりアリスだった。
”好きだなんだという色感情は無視なさい。これはビジネスよ、ビジネス。”
そうだ、感情に流されてはいけないわ。すっと火が弱まるのを感じた。
伝えなければならないのは、想いではなく誠意。そして後継者問題においての利。ゆでだこになっている場合ではない。
「申し訳ありません。このような話に慣れていない為、取り乱してしまいました。」
落ち着いて息を整える。
「好意、というと大袈裟な気が致しますが、この身を委ねてもいいと思えるくらいには、好ましい方と存じております。閣下はいかがですか?私のような女では…その気にもなりませんか?」
「まさか…貴女は申し分のない女性です。その為、危ない罠のようにも感じられましたが、好意ではないと聞いて少し安心しました。」
「なぜです?」
「私に好意があると言って近づいてくる女性は、財産か公爵夫人という権力の座を狙う者ですから。」
やはり、閣下に言い寄る女はたくさんいるのね。ちくりと胸が痛んだ。ただ、閣下の言葉は解せない。
お言葉ですが、と勝手に口が動く。
「閣下に対する好意が、全て財産や権力目当てというわけではないと思います。」
「残念ながら、そうなのです。」
「いいえ、違います。閣下のその窪んだ目も、目の下の濃い隈も、目尻のしわも、痩け出た頬骨も、ひび割れた薄い唇も、重苦しい漆黒の髪も、少し弛んだ首の皮も、骨骨しい白い指も、時折咳き込むお姿も、咳き込んだ後の虚ろな瞳も!全部全部好ましいです!」
自覚なさってください!と言った私の言葉に、閣下は唖然としていた。
「…自覚しているから、死神と呼ばれても納得しているのです。」
「女が放っておくわけありません!」
「いえ、こんななりですので大して寄っても来ません。ただ、寄ってくる方は肝が据わった方が多いので、相手をするのに少々労力を使わされますが。」
「その都度ご苦労なさるのは煩わしいのではありませんか?それこそどうぞ私を虫除けにお使いください。その代りに私の虫除けにもご助力ください。そうすれば、必ず閣下のお役に立って見せます!」
「…私の話には貴女も含まれているのですが。」
う、胸を強く打たれた気分だ。
確かにぺらぺらと図々しい発言をしてしまった。閣下相手に。閣下があまりにへりくだるから悔しくて、つい。
「も、申し訳ありません。しかし、私だっていつも肝が据わっているわけではありません。後が無いので、砕けるまで当たってみようと…。」
閣下は僅かに首を傾けた。
「後が無い、というのは?」
「…もしこの提案を断られたら、私はお父様の領地へ籠り、もう首都には戻って来ないつもりでした。アリスの邪魔者にはなりたくありませんから。」
「そうですか、訊いておいて良かったです。」
どういうことかと視線を上げると、おなじみの澄まし顔の閣下と目が合った。
「危うく返答を先延ばしにしてしまうところでした。」
「返答、というのは?」
どきどきと心臓が高鳴る。
「正直に言いますと、貴女の提案はとても魅力的でした。貴女の言う通り、私は後継者がいない事でずいぶんと頭を悩ませていました。妻が亡くなり、落ち着いた頃に再婚しなければと思ってはいましたが、先に言った通り上手く行かず、養子を取ろうかとも考えましたが、それもそれで私を恐れずに近寄って来る者は、やはり財産目当ての者ばかり。私からの打診を断ろうとする者を無理に養子にするのも可哀相なので、なかなか理想的な者には出会えず、かなり難航していました。」
「そうでしたか。」
「ですが人気高いアルヴィエ家の御令嬢がバルバストル家の女主人ともなれば、候補に挙げていた者たちにも、もう少し良い印象を持ってもらえるでしょう。」
候補?養子の話だろうか。
「もし閣下が私の申し出を受けてくださるのであれば、私は閣下の子を産むつもりでおりますが。」
ほんの僅かに瞼が持ち上がっている。最初からそう申し出ていたはずだが。
「無理をする必要はありません。取引をするのであれば対等に行いましょう。マーセル殿下の目をしっかり婚約者に向けさせる、ということであれば、何も貴女が体まで差し出す必要はありません。」
「ですが、私はそれを条件に…。」
「強要したくないのです。名前の通り、花の女神のように華やかな貴女が私と婚姻してくださるだけで、死神と呼ばれて養子も見つからないような陰鬱な私には利があります。それで充分です。」
気が付けばハートは期待で膨らみ、ひびなど無かったかのようにつやつやと輝いていた。今にも飛び出しそうな心臓を手で押さえる。
「私と…結婚、してくださるのですか?」
「プロポーズは後日、改めさせてください。」
「プロポーズしてくださるのですか?!」
パチン。両手を両頬に充てた。
声が大きかったのかもしれない。リアクションも大きかったかもしれない。
呆然とする閣下にじっと見つめられた。
でも、ずっと憧れだったプルトン・バルバストル様が私にプロポーズをしてくださると言うのだから、舞い上がるのは当然だろう。小躍りでもしてしまいそうになる。
「…プロポーズや婚姻に思入れがあるのなら、やはり私ではない方がいいのではありませんか?人が寄りつかないとはいえ、私も公爵です。それなりに伝手もありますよ。」
私は整えた髪が崩れるほど首を横に振った。
「いいえ!いいえ閣下、私は閣下にプロポーズして頂けることが嬉しいのです。とても光栄です。一緒に殿下を撃退しましょう。」
ビジネスという言葉はもう効果が無かった。私の表情はきっと熱せられたチーズのように蕩けているに違いない。
「撃退というのは違うと思いますが、とりあえず協力させて頂きます。」
もうなんでもいい。私はこくこくと頷いた。
「私のことはぜひフローラとお呼びください。」
「分かりましたフローラ。では私のこともプルトンと、名でお呼びください。」
「…はい。」
プルトン様。面と向かって呼べるだろうか。名前を呼ばれただけで地を踏む感覚が無くなっているというのに。無理だ。呼べる気がしない。
「呼びにくいですか?」
「…いえ…でも…また今度…。」
口に出したら顔に血が集まりすぎて破裂してしまいそうだ。
「…そうですか。強要はしませんので、お好きにお呼びください。」
プルトン様、はハードルが高いが、お好きにと言われているのに閣下と呼ぶのは壁を作っているようで気が引ける。公爵様、あたりが無難だろうか。
「1つだけ、約束して欲しいことがあります。」
1つでいいのかしらと思いつつ、なんでしょうかと答えた。
「自ら命を絶つことだけはしないでください。」
そんなことしませんよ、と笑い飛ばせなかったのは、そう話す公爵様の表情がいつになく弱々しく見えたからだ。重々しい威厳が萎れていくように感じた。
「私に対して不満を感じることがあれば、どんなことでも私にお話しください。善処するよう努めます。1人で悩み、思い詰めることのないようにだけ、よろしくお願いします。」
これは亡くなられた前妻の話なのだろうか。再びちくりと胸を刺された。
前妻と何があったのかは知らないし、無粋に訊くつもりもないけれど、公爵様が傷ついているのは見て取れる。異様に自虐的なのもここに起因するのかもしれない。
支えて差し上げたいと思った。私なんかが思い上がりも甚だしいけれど、せめてこれ以上傷がつくことのないように、自分を死神などと言うことのないように、私が本当に名前通りの女性だと言うのなら、公爵様に暖かい春を届けて差し上げたい。
「はい、お約束致します。私にも不満はどんどんぶつけてくださいね。私だけ甘やかされるわけにはいきませんので。」
すると、ほんの僅かに公爵様の口の端が上がったような気がして、私は目を見張った。
「ありがとうございます。お互いに良い関係を築きましょう。」
「はい。」
話がまとまり、それでは今日はこの辺でとお暇させて頂こうとしたところ、公爵様が私よりも先に立ち上がり、私の横で手を差し伸べてくれた。どきどきしながらその手を取る。
どうやら馬車に乗るまでエスコートしてもらえるらしい。優しい!紳士!素敵!
はしゃぐ心を悟られないように、淑やかに廊下を歩いた。
「近々ご両親にも挨拶に伺います。」
「はい、楽しみです。」
「そこでなのですが、ええと…侯爵夫妻はおいくつでいらっしゃいますか?」
「お父様が42で、お母様が38です。」
「…そうですか。」
「公爵様と同世代ですね。」
「…そうですね。」
公爵様は歳のことを気にしているみたいだが、心配は無用だった。お父様もお母様もそれなりに予感はしていたはずだ。私の好みを知っていたのだから。
なによりも、侯爵である父が公爵様からの申し出を断れるはずがない。
自然と頬が緩んだ。アリスに最高の報告ができそうだ。
火に油を注ぐというのは正にこのことだ。私の頭は今、本当に燃え上がっているのではないか。そう疑ってしまうほど顔が熱く、汗がだくだくと流れ出た。
脳が消火を呼びかける。警鐘が鳴り響き、てんやわんやしている脳内にぽつりと冷静に現れたのは、やはりアリスだった。
”好きだなんだという色感情は無視なさい。これはビジネスよ、ビジネス。”
そうだ、感情に流されてはいけないわ。すっと火が弱まるのを感じた。
伝えなければならないのは、想いではなく誠意。そして後継者問題においての利。ゆでだこになっている場合ではない。
「申し訳ありません。このような話に慣れていない為、取り乱してしまいました。」
落ち着いて息を整える。
「好意、というと大袈裟な気が致しますが、この身を委ねてもいいと思えるくらいには、好ましい方と存じております。閣下はいかがですか?私のような女では…その気にもなりませんか?」
「まさか…貴女は申し分のない女性です。その為、危ない罠のようにも感じられましたが、好意ではないと聞いて少し安心しました。」
「なぜです?」
「私に好意があると言って近づいてくる女性は、財産か公爵夫人という権力の座を狙う者ですから。」
やはり、閣下に言い寄る女はたくさんいるのね。ちくりと胸が痛んだ。ただ、閣下の言葉は解せない。
お言葉ですが、と勝手に口が動く。
「閣下に対する好意が、全て財産や権力目当てというわけではないと思います。」
「残念ながら、そうなのです。」
「いいえ、違います。閣下のその窪んだ目も、目の下の濃い隈も、目尻のしわも、痩け出た頬骨も、ひび割れた薄い唇も、重苦しい漆黒の髪も、少し弛んだ首の皮も、骨骨しい白い指も、時折咳き込むお姿も、咳き込んだ後の虚ろな瞳も!全部全部好ましいです!」
自覚なさってください!と言った私の言葉に、閣下は唖然としていた。
「…自覚しているから、死神と呼ばれても納得しているのです。」
「女が放っておくわけありません!」
「いえ、こんななりですので大して寄っても来ません。ただ、寄ってくる方は肝が据わった方が多いので、相手をするのに少々労力を使わされますが。」
「その都度ご苦労なさるのは煩わしいのではありませんか?それこそどうぞ私を虫除けにお使いください。その代りに私の虫除けにもご助力ください。そうすれば、必ず閣下のお役に立って見せます!」
「…私の話には貴女も含まれているのですが。」
う、胸を強く打たれた気分だ。
確かにぺらぺらと図々しい発言をしてしまった。閣下相手に。閣下があまりにへりくだるから悔しくて、つい。
「も、申し訳ありません。しかし、私だっていつも肝が据わっているわけではありません。後が無いので、砕けるまで当たってみようと…。」
閣下は僅かに首を傾けた。
「後が無い、というのは?」
「…もしこの提案を断られたら、私はお父様の領地へ籠り、もう首都には戻って来ないつもりでした。アリスの邪魔者にはなりたくありませんから。」
「そうですか、訊いておいて良かったです。」
どういうことかと視線を上げると、おなじみの澄まし顔の閣下と目が合った。
「危うく返答を先延ばしにしてしまうところでした。」
「返答、というのは?」
どきどきと心臓が高鳴る。
「正直に言いますと、貴女の提案はとても魅力的でした。貴女の言う通り、私は後継者がいない事でずいぶんと頭を悩ませていました。妻が亡くなり、落ち着いた頃に再婚しなければと思ってはいましたが、先に言った通り上手く行かず、養子を取ろうかとも考えましたが、それもそれで私を恐れずに近寄って来る者は、やはり財産目当ての者ばかり。私からの打診を断ろうとする者を無理に養子にするのも可哀相なので、なかなか理想的な者には出会えず、かなり難航していました。」
「そうでしたか。」
「ですが人気高いアルヴィエ家の御令嬢がバルバストル家の女主人ともなれば、候補に挙げていた者たちにも、もう少し良い印象を持ってもらえるでしょう。」
候補?養子の話だろうか。
「もし閣下が私の申し出を受けてくださるのであれば、私は閣下の子を産むつもりでおりますが。」
ほんの僅かに瞼が持ち上がっている。最初からそう申し出ていたはずだが。
「無理をする必要はありません。取引をするのであれば対等に行いましょう。マーセル殿下の目をしっかり婚約者に向けさせる、ということであれば、何も貴女が体まで差し出す必要はありません。」
「ですが、私はそれを条件に…。」
「強要したくないのです。名前の通り、花の女神のように華やかな貴女が私と婚姻してくださるだけで、死神と呼ばれて養子も見つからないような陰鬱な私には利があります。それで充分です。」
気が付けばハートは期待で膨らみ、ひびなど無かったかのようにつやつやと輝いていた。今にも飛び出しそうな心臓を手で押さえる。
「私と…結婚、してくださるのですか?」
「プロポーズは後日、改めさせてください。」
「プロポーズしてくださるのですか?!」
パチン。両手を両頬に充てた。
声が大きかったのかもしれない。リアクションも大きかったかもしれない。
呆然とする閣下にじっと見つめられた。
でも、ずっと憧れだったプルトン・バルバストル様が私にプロポーズをしてくださると言うのだから、舞い上がるのは当然だろう。小躍りでもしてしまいそうになる。
「…プロポーズや婚姻に思入れがあるのなら、やはり私ではない方がいいのではありませんか?人が寄りつかないとはいえ、私も公爵です。それなりに伝手もありますよ。」
私は整えた髪が崩れるほど首を横に振った。
「いいえ!いいえ閣下、私は閣下にプロポーズして頂けることが嬉しいのです。とても光栄です。一緒に殿下を撃退しましょう。」
ビジネスという言葉はもう効果が無かった。私の表情はきっと熱せられたチーズのように蕩けているに違いない。
「撃退というのは違うと思いますが、とりあえず協力させて頂きます。」
もうなんでもいい。私はこくこくと頷いた。
「私のことはぜひフローラとお呼びください。」
「分かりましたフローラ。では私のこともプルトンと、名でお呼びください。」
「…はい。」
プルトン様。面と向かって呼べるだろうか。名前を呼ばれただけで地を踏む感覚が無くなっているというのに。無理だ。呼べる気がしない。
「呼びにくいですか?」
「…いえ…でも…また今度…。」
口に出したら顔に血が集まりすぎて破裂してしまいそうだ。
「…そうですか。強要はしませんので、お好きにお呼びください。」
プルトン様、はハードルが高いが、お好きにと言われているのに閣下と呼ぶのは壁を作っているようで気が引ける。公爵様、あたりが無難だろうか。
「1つだけ、約束して欲しいことがあります。」
1つでいいのかしらと思いつつ、なんでしょうかと答えた。
「自ら命を絶つことだけはしないでください。」
そんなことしませんよ、と笑い飛ばせなかったのは、そう話す公爵様の表情がいつになく弱々しく見えたからだ。重々しい威厳が萎れていくように感じた。
「私に対して不満を感じることがあれば、どんなことでも私にお話しください。善処するよう努めます。1人で悩み、思い詰めることのないようにだけ、よろしくお願いします。」
これは亡くなられた前妻の話なのだろうか。再びちくりと胸を刺された。
前妻と何があったのかは知らないし、無粋に訊くつもりもないけれど、公爵様が傷ついているのは見て取れる。異様に自虐的なのもここに起因するのかもしれない。
支えて差し上げたいと思った。私なんかが思い上がりも甚だしいけれど、せめてこれ以上傷がつくことのないように、自分を死神などと言うことのないように、私が本当に名前通りの女性だと言うのなら、公爵様に暖かい春を届けて差し上げたい。
「はい、お約束致します。私にも不満はどんどんぶつけてくださいね。私だけ甘やかされるわけにはいきませんので。」
すると、ほんの僅かに公爵様の口の端が上がったような気がして、私は目を見張った。
「ありがとうございます。お互いに良い関係を築きましょう。」
「はい。」
話がまとまり、それでは今日はこの辺でとお暇させて頂こうとしたところ、公爵様が私よりも先に立ち上がり、私の横で手を差し伸べてくれた。どきどきしながらその手を取る。
どうやら馬車に乗るまでエスコートしてもらえるらしい。優しい!紳士!素敵!
はしゃぐ心を悟られないように、淑やかに廊下を歩いた。
「近々ご両親にも挨拶に伺います。」
「はい、楽しみです。」
「そこでなのですが、ええと…侯爵夫妻はおいくつでいらっしゃいますか?」
「お父様が42で、お母様が38です。」
「…そうですか。」
「公爵様と同世代ですね。」
「…そうですね。」
公爵様は歳のことを気にしているみたいだが、心配は無用だった。お父様もお母様もそれなりに予感はしていたはずだ。私の好みを知っていたのだから。
なによりも、侯爵である父が公爵様からの申し出を断れるはずがない。
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